「虎とイグアナ」隠れキャラも発見! VWで最も売れているクルマ、フォルクスワーゲン・ティグアンは新型もヒット確実

フォルクスワーゲンの中で今、最も売れているモデルがティグアンだ。それだけに、3代目となる新型にかかる期待も大きい。実際に試乗してみると、その期待を裏切らない仕上がりになっていることが実感できたのだった。

スタイルはより力強さを増したけど、扱いやすいサイズはそのまま

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ワールドワイドで見れば、フォルクスワーゲン(VW)のベストセラーモデルはゴルフではなくティグアンなのだそう。2007年の初代導入以来、全世界で760万台以上の販売を達成。2019年からはVWのベストセラーの座についた。日本ではTDI(ディーゼルエンジン)と4MOTION(4輪駆動)の組み合わせを導入した2019年に5400台の最高台数を記録している。

そのティグアンがフルモデルチェンジして3代目に移行した。2代目からの変化点は明白で、ぶ厚いフロントマスクが目を引く。市場のトレンドを取り入れた結果なのだろう。SUVらしい力強さに振った格好だ。リヤはセグメントに分割したライティンググラフィックが先進的な印象を与えるいっぽう、フェンダーの盛り上がりが目立ち、やはり力強さを強調している印象。新型ティグアンが先代に比べて力強さやたくましさを意識しているのは明らかだ。

先代よりもボンネット先端の位置が高くなり、SUVらしい力強さが増した印象。アンダーグリル部には状況に応じて開閉する電動シャッターを設けるなど空力にも配慮が行き届いており、Cd値は0.33から0.28に向上した。
後ろ姿の見どころは、グラマラスなリヤフェンダー。先代と全幅が同じとは思えないほど新型のスタイリングは躍動感が増している。

迫力は増しているが、ボディサイズは大きく変化していない。全長は4540-4545mm×1840-1860mm×1675mmで、前代より25-30mm長く、25mm背が高くはなっている。とはいえ、ほんの少しの変化と言ってよさそう。ちなみにマツダCX-5のスリーサイズは4575mm×1845mm×1690mm、レクサスNXは4660mm×1865mm×1660mm、BMX X2は4555mm×1845mm×1565mmである。

プラットフォームは、MQB アーキテクチャーからMQB evoに進化。ボディサイズは全長4545-4540mm(+25-30mm)×全幅1840-1860mm×全高1675mm(+25mm)。

インテリアの雰囲気も大きく変わった。なんといってもインパネのセンターに位置する大きなタッチスクリーンが目を引く。サイズは15インチだ。15インチのスクリーンを持つノートPCを思い浮かべれば、画面の大きさが実感できるだろうか。スクリーンの位置は先代より高くなり、先代ではスクリーンの上にあった空調吹き出し口がスクリーンの下に移動している。スクリーンの存在感は際立つが、運転中は邪魔にならず、大画面表示によるありがたみを感じるのみだ。

ステアリングの奥にあるメーターもフルデジタル。メルセデス・ベンツに比べればまだ控え目ではあるが、アンビエントライトも備わっている。ライトは後席ドアにも仕込まれており、前席は華やかだが後席は真っ暗ということはない。

新型になってガラリと印象が変わったインパネ。センター上部には15インチの大型タッチモニターが備わる。
10.25インチの液晶メーターは、ナビゲーションマップやアシストシステムの作動状況などの表示パターンを持つ。

センターコンソールに設置されたドライビングエクスペリエンスコントロールと呼ぶダイヤルは視覚面でも機能面でも新型ティグアンの特徴で、ドライビングプロファイルやオーディオの音量を調節できる。短い試乗時に触れた印象をお伝えしておくと、ありがたみは感じられなかった。ボリューム調整ならステアリングホイール上のボタンを押せば済むし、その他の機能はタッチスクリーンで操作すれば済むからである。助手席の乗員がオーディオの音量を調節するのに役立つだろうか。センターコンソールのダイヤルには感心しなかったが、スマホを2台並べて置いておけるスペースが確保されているのには感心した(しかもワイヤレス充電できる)。

シフトレバーはステアリングコラムの右側に移動。その代わりに、センターコンソールにはダイヤルと小型液晶画面を組み合わせた「ドライビング・エクスペリエンス・コントロール」を新採用。
最近、スマホのワイヤレス充電器を搭載するクルマは増えているが、新型ティグアンは2台のスマホを同時に充電可能なのがうれしい。

中間グレード以上の前席シートには空気圧式のリラクゼーション機能が備わっている。標準仕様でエアバッグは3つ。オプションでレザーシートを選択するとエアバッグは10個となり、より細かく体をほぐしてくれる。8種類のモードはタッチスクリーンで操作する。

片側1万9200個のマルチピクセルを採用して緻密な点灯・消灯制御を実現したLEDマトリクスヘッドライトIQ. LIGHT HDは中間グレード以上に標準装備。国内に導入されるVWのラインアップでは、現時点でティグアンのみの先進装備だ。

機能面での目玉はまだあり、ダンパーの減衰力を可変制御するアダプティブシャシーコントロールDCC Proである。VWには従来からDCCの設定があり、外付けのソレノイドバルブ1個で伸び側と縮み側の減衰力を制御する仕組み。DCC Proはソレノイドバルブを2個持ち、伸び側と縮み側で独立して減衰力を制御できるのが特徴(カヤバ製だ)。つまりDCCよりも制御自由度が高いということである。

「Elegance」はマイクロフリースシートが標準。写真の試乗車にはオプションのレザーシートパッケージ(24万2000円)が装着されていた。
新型になって荷室容量が少し減っているのだが、それは後席居住性改善のため、クッションの厚みを増やしたから。そのおかげもあり、座り心地は上々だ。
進化したLEDマトリックスヘッドライト「IQ.Light HD」。片側1万9200個のマルチピクセルLEDを搭載し、より細かい配光制御が可能となった。
アダプティブシャシーコントロールDCC Pro搭載車のリヤショックアブソーバー。2バルブを独立して制御する。サプライヤーの「KYB」のロゴも見える。

試乗車はラインアップ中最もスポーティな仕立てのR-Lineで、DCC Proは標準装備。タイヤ&ホイールはベースグレードのActiveが17インチ、中間グレードのEleganceが18インチなのに対し、R-Lineは20インチ(前後255/40R20)となる。DCC Proの制御性の高さもさることながらボディの剛性がしっかりしているからだろう。サイドウォールが薄くて幅の広いタイヤを履いていながら、ネガ要素は一切感じなかった。ドライビングプロファイルをスポーツに切り替わると引き締まった乗り味に変わるが、「硬い」とは感じない。パワートレーンの制御切り替わりとも相まって気分が高揚すること請け合いである。

フォルクスワーゲン・ティグアン グレード展開
eTSI Active 487万1000円
eTSI Elegance 547万円
eTSI R-Line 588万9000円
TDI 4MOTION Active 561万9000円
TDI 4MOTION Elegance 621万8000円
TDI 4MOTION R-Line 653万2000円

新型ティグアンはベーシックな「Active」、装備が充実した「Elegance」、スポーティな装いの「R-Line」で構成される。パワートレインは1.5Lガソリンターボ+マイルドハイブリッドと、2.0Lディーゼルターボの2種類。
今回の試乗車はR-Line。パーシモンレッドメタリックのボディカラーが鮮やかだ。
試乗車のR-Lineのタイヤサイズは255/40R20。DCC Proのおかげで、20インチとは思えないしなやかな乗り味を示す。

そのパワートレーンは2種類。エンジンはディーゼルとガソリンで、どちらも7速DSG(DCT)との組み合わせ。ディーゼルは4MOTION(4WD)となり、ガソリンは2WD(FF)だ。両エンジンともにアップデートされており、ディーゼルは2L TDIでツインドージングシステムを採用した最新世代。NOxを浄化する尿素水を排気系の上流と下流の2ヵ所で噴射するシステムを備えている。1ヵ所で噴射する従来のシステムに比べてNOxの浄化性能が高まるため、NOx後処理の都合で過渡のトルクを絞る必要がなくレスポンスに優れるのが特徴。残念ながら2024年12月のメディア向け試乗会には間に合っておらず、そのあたりの確認は2025年に持ち越しとなった。

ガソリンエンジンは1.5L eTSI mHEVだ。1.5L直列4気筒直噴エンジンに48Vマイルドハイブリッドシステムの組み合わせとなる。ゴルフ8で初めて採用したシステムだが、やはりアップデートを受けており最新世代を搭載。スターターモーターを廃止したのがポイントで、その日一発目も含め常にベルトスタータージェネレーター(BSG)でエンジンの始動を行なう。ゆえにスターターモーターでの始動に比べて静かなのが特徴だ。

1.5Lガソリンターボエンジンは最高出力110kW(150PS)、最大トルク250Nm。48Vマイルドハイブリッドシステムのおかげで、発進加速がスムーズなのが印象的。

1.5L eTSI mHEVの最高出力は110kW/5000-6000rpm、最大トルクは250Nm/1500-3500rpmである。試乗車のeTSI R-Lineの車両重量は1640kgだ。数値から想像できるようにバカッ速くはないが、イメージどおりに力がついてこなくてイライラすることもなかった。実用上は過不足なしといったところである。それよりも、剛性感が高く、しっかりした乗り味が印象に強く残った。

ラゲッジルームの容量は通常時652L、後席格納時1650L。
プレミアムサウンドシステム「Harman Kardon」もオプションで用意。総出力700W、16チャンネル・11 スピーカーで構成される。
新型ティグアンのリヤドアウインドウには、虎とイグアナのマークが描かれている。
その理由は、ティグアンの車名が「虎(タイガー)」の力強さと「イグアナ」の粘り強さを組み合わせた造語だから、なのだ。

フォルクスワーゲン・ティグアン eTSI R-Line
全長×全幅×全高:4545mm×1860mm×1655mm
ホイールベース:2680mm
車重:1610kg
駆動方式:FF
エンジン
形式:1.5L直列4気筒DOHCターボ
排気量:1497cc
最高出力:110kW(150PS)/5000-6000pm
最大トルク:250Nm/1500-3500rpm
燃料:無鉛プレミアム
トランスミッション
7速DCT
モーター
最高出力:13.5kW
最大トルク:56Nm
リチウムイオン電池
総電圧:44V
総電力量:0.7kWh
燃費:燃料消費率WLTCモード 15.6km/L
車両本体価格:553万円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…