【VW・パサート ◯△✕判定】乗り心地は文句なし! ✕は運転に必要なアレの操作性…?

ワゴン(ヴァリアント)のみとなった新型パサート
エンジン縦置きのFFレイアウトで世に出た初代パサートは、1973年生まれで半世紀以上、ミドルサイズのセダン、ワゴンとして愛されてきた。販売台数はビートルを超え3400万台に達している。9代目となる新型は、世界的なセダン市場の縮小に伴い、ワゴンであるヴァリアントのみとなった。日本では、法人ニーズも狙いたいという新型の「○△×」を探ってみた。

TEXT&PHOTO:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)

ワゴン専用モデルになった新型パサートは3つのパワートレーンを設定

「R-Line」はシルバールーフレールがレスになり、スタイリッシュな外観になる

新型パサートも新型ティグアンやゴルフ8.5と同様に、「MQB evo」プラットフォームを使い、足まわりには、1秒間に1000回ダンパーの調整が可能だという電子制御可変ダンパーの「DCC Pro」を設定している。

設定されるパワートレーンは、1.5L直列4気筒ガソリンターボと48Vマイルドハイブリッドを積む「eTSI」、2.0L直列4気筒ディーゼルターボの「TDI」、1.5L直列4気筒ガソリンターボにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドの「eHybrid」が設定されている。トランスミッションは、「eTSI」と「TDI」が7速DSG、PHEVの「eHybrid」が6速DSG。「eTSI」と「eHybrid」がFFで、「TDI」は4WDの4MOTIONとなる。

【パサートの◯は?】新型ティグアンを上回る上質な乗り心地

主力になりそうな「TDI」は、もう少し後から日本に上陸するそうで、今回試乗したのは「eTSI R-Line」。オプションで「DCC Proパッケージ」が装着されている試乗車で、タイヤサイズは235/40R19。同じ日に試乗した「eTSI R-Line」のティグアンは21インチを履いていたこともあり、タイヤの当たりはソフトで、全体にしっとりした乗り味にすぐに気がつく。「DCC Pro」未装着車に乗る機会がなかったため、比較できないものの、伸び側と縮み側の両方の減衰力調整が可能な同ダンパーの威力は大きいのだろう。低速域から高速域、路面の状態を問わず不快な振動を伝えることがなく、とくに「コンフォート」モードにすると、硬い印象のある(?)フォルクスワーゲンらしからぬ、しなやかさを披露する。同時に、背の高いティグアンよりもさらにコーナーでの姿勢は当然ながら安定していて、高速域のレーンチェンジ、山道でのタイトコーナーでの振る舞いも安定している。リヤオーバーハングの長さを抱かせるものの、前を向いて運転している限りは、音・振動面も含めてセダンのように静かで、安心感と快適性はすこぶる高い。高速道路を使ったロングドライブも余裕でこなすのが、歴代パサート・ヴァリアントの美点のひとつだったが、さらにブラッシュアップされている。

「eTSI」は、気筒休止とコースティング時のアイドリングストップ時間の拡大も盛り込まれた

1.5Lガソリンターボと48Vマイルドハイブリッドの組み合わせは、1570kgの車両重量でもストレスなく走らせる。スポーツモードにしてターボの過給が始まれば、エンジンスペックの110kW(150PS)/250Nm、モーターアシストの13kW(17PS)/56Nmという数値を超えた加速フィールを享受できる。

前後席ともにシートサイズが大きく、後席は足元が広いためゆったり座れる

また、2840mmという超ロングホイールベースによる後席の足元空間の広さは圧倒的だ。身長171cmの筆者が足を組んでも足元にはまだまだ余裕が残る。185cmの人が前後に収まってもゆったり座れるはず。さらに、最大の美点は、690L〜1920Lの荷室容量で、十分に広かった先代から通常時40L、最大時140Lも増している。6対4分割可倒式の後席を前倒しすると、シート部分がスロープのように持ち上がるものの、長大な奥行きが広がる。開口部も大きく、地上高も低いため積載性ももちろん良好だ。

【パサートの△は?】諸手を挙げて歓迎とはいえないサイズアップ

全幅は1850mmになったことで、マンションなどの駐車場への入稿が可能かどうかもチェックポイントになりそう

新型は全長4915×全幅1850×全高1500mm、ホイールベースは2840mm。アッパーミドルサイズといえる大きさだが、最小回転半径は5.5mに収まっている。

先代(ヴァリアント)は全長4785×全幅1830×全高1510mmで、全長は130mm、ホイールベースは50mm延長され、幅に制限のある駐車場では入庫できないケースもあるだろう。1850mm以下という駐車場の場合でも実際に入るのは、先代の1830mmくらいまでという場合もあり、注意が必要。

【パサートの✕は?】タッチ式ディスプレイの操作性、音声操作に改善の余地あり

15インチのタッチ式センターディスプレイに操作系、設定系を集中配置する

操作性の面では、新型ティグアンに用意されている「ドライビング・エクスペリエンス・コントロール」が新型パサートには未設定なのが惜しかった。センターディスプレイのタッチ操作は、慣れれば必要な操作はできるが、「ドライビング・エクスペリエンス・コントロール」は、直感的に容易にコントロールできるため、パサートにも欲しいところだ。また、音声操作もAIを使うメルセデス・ベンツやBMW勢などと比べると、対応できる操作が限られ、音声操作時にコマンドが必要になるシーンもある。ナビの目的地検索などの操作性も含めて「×」とまではいえないものの、まだ改善の余地がありそうだ。最近は、ボルボやホンダ・アコードのようにGoogle標準搭載に舵を切るケースもあるだけに、インタフェースをどうしていくのかは気になるポイントだ。

スクエアかつ広大な荷室が広がる

現在は、廃止されたセダンだけでなく、ステーションワゴン市場もシュリンクしているが、多くの荷物を容易に積めて、セダンに引けを取らない走りの良さに魅力を覚える層は多いはずで、走りも積載性も磨きあげた新型の進化は想像以上に大きかった。個人的には、新型ティグアンよりも新型パサートの柔軟性のある乗り味に惹かれた。広大な荷室が必要で、快適なグランドツアラーを探しているのなら適任かもしれない。

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著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…