世界三大レースのひとつに数えられるル・マン24時間。耐久レースの代名詞でもあるこのレースで歴代最多の19勝を誇るのがポルシェだ。
“耐久王”の称号を持つドイツメーカーは2023年、ル・マンがカレンダーに含まれるFIA世界耐久選手権(WEC)の最高峰クラスに復帰。ハイパーカークラスでは同年にLMH車両だけでなくLMDh車両でも参戦できるようになり、ポルシェはLMDhマシンであるポルシェ963を投入した。
LMDhマシンは、オレカやダラーラなど4つの認定コンストラクターが製造する次世代LMP2シャシーをベースに、自動車メーカーが独自のボディワークとエンジンを搭載するカテゴリー。メーカーがシャシーから設計するLMHよりも自由度が低い分、費用も低く抑えられ“コスパのいい”カテゴリーだと言える。
ポルシェ963のシャシーはマルチマチック製。ポルシェはマルチマチックの独占的パートナーで、自社のエンジニアを送り込むことでシャシーを“ほぼ専用設計化”したと伝えられている。
エンジンは4.6L V8ツインターボを搭載。このエンジンはかつて918スパイダーに搭載された4.6L V8自然吸気が基とされる。組み合わされるハイブリッドシステムは全LMDh車共通のもので、パワーユニットの総出力は680PS(500kW)に制限される。
ポルシェ963は参戦2年目である2024年、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車(ケビン・エストレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントール)が開幕戦カタール1812kmと第7戦富士6時間で優勝するなど、合計152ポイントを稼いでドライバーズチャンピオンを獲得した。
また、第3戦スパ6時間ではハーツ・チームJOTAの12号車(ウィル・スティーブンス/カラム・アイロット)がポルシェのカスタマーチームとして初めて優勝。ポルシェ963はシーズンを通して安定した速さと強さを見せ、マニュファクチャラーズランキングにおいてもポルシェはトヨタに次ぐ2位となった。