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■サイレントコアを採用した新タイヤ「ダンロップ・ルマンLM703」発売
2006(平成18)年1月1日、ダンロップはタイヤの内部に吸音スポンジを貼り付けて、タイヤノイズの空洞共鳴音を低減する新技術「サイレントコア」を採用した新しいタイヤ「ダンロップ・ルマンLM703」の発売を始めた。
タイヤが発生する3つのノイズ
車外騒音規制が強化される中、車外騒音の要因のひとつであるタイヤノイズは、電動化が進む中で目立ちやすくなっており、タイヤノイズの低減は主要なテーマとなっている。タイヤノイズには、大別して以下の3種類がある。
・ロードノイズ:路面の凹凸をタイヤが拾い、振動となって車体を震わせることで発生
・パターンノイズ:タイヤのトレッドパターンにより、溝の中の空気が圧縮・放射されて発生
・空洞共鳴音:タイヤの中の空気が振動することによって発生
ロードノイズやパターンノイズは、車体側の改良やタイヤの構造や素材、パターン配列の改良で対応するのが一般的である。
一方の空洞共鳴音は、路面の段差や突起を乗り越える際に、タイヤの変形によってタイヤ内の空気が振動し、共鳴が起こる現象で室内では「パカーン」というような音に聞こえる。太鼓の膜を叩けば、中の空気が振動してより大きな音になる現象に例えると、分かりやすい。
問題は、空洞共鳴音はロードノイズやパターンノイズで効果のあるような従来の対策だけでは、抑えるのが難しいこと。ダンロップは、この空洞共鳴音の低減に着目したのだ。
特殊吸音スポンジで空洞共鳴音を低減するサイレントコア
ダンロップは、空気圧変動のシミュレーションによって、タイヤ内部に特殊吸音スポンジを装着して内部に発生する空気振動を効果的に低減する「サイレントコア」を開発、この技術を採用した「ダンロップ・ルマンLM703」を2006年元旦から発売を始めた。
サイレントコアは、タイヤ内部に吸音材の特殊エーテル系ポリウレタンスポンジを貼り付け、空気の振動を吸収低減する手法である。スポンジには迷路のような空隙があるので、中を通過する空気の粘性によって摩擦が発生して音が減衰(吸音)する。また吸音材は、スポンジが受ける衝撃を効果的に分散させる2山構造の特殊な形状にしている。スポンジ状のポリウレタンは、吸音効果に優れているため、アンダーフロアの騒音対策など他の部位にも吸音材として一般的に使われている。
サイレントコアのようなタイヤ内部に吸音材を貼り付ける技術は、ダンロップが世界で初めて開発した技術であるが、その後横浜ゴムも「サイレントリング」という同様の技術を採用したタイヤを販売している。
一方、欧州タイヤメーカーのピレリやコンチネンタル、ミシュランは、それぞれ名称は違うが、同様の技術を高級車に採用している。
その他にもある空洞共鳴音を低減する手法
空洞共鳴音を低減する手法として、吸音材を使う以外にヘルムホルツ型レゾネーターで低減する手法も実用化されている。
代表的なのは、ホンダの「ノイズリデューシングホイール」で、トヨタも同様の技術「ノイズリダクションホイール」を採用している。ノイズリデューシングホイールでは、タイヤとホイールの間に中空構造の樹脂製のプレート(レゾネーター)を挟み込み、樹脂プレートにはホイールリムに沿って連通穴が開けられている。
レゾネーター容積と貫通穴を最適化してヘルムホルツの原理によって、プレート内部とタイヤの空気を共振させて、共鳴音を打ち消し低減しているのだ。
ヘルツホルツ型レゾネーターは、ホンダ「レジェンド」やトヨタ「レクサスES」などに採用されている。
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今後さらにEV化が進めば、低騒音タイヤだけでなく、航続距離延長のための低転がり抵抗タイヤが求められ、自動運転が進めばパンクしないタイヤ、エアレスタイヤが必要になってくるだろう。今後、ますますタイヤの進化の重要性は高まってくることが予想されるのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。