自動運転レベルの分類と実用化【シン自動車性能論】

日本の自動車研究の泰斗として数々の研究成果を挙げてこられた小口泰平先生が、21世紀の自動車性能論を書き下ろす。名付けて『シン自動車性能論』である。第6回のテーマは「自動運転レベルの分類と実用化」である。
TEXT:小口泰平(OGUCHI Yasuhei)

自動運転の定義およびその分類(レベル)は、アメリのSAE(Society of Automobile Engineering)が策定した基準が広く用いられ、日本もこの基準を用いています。自動運転技術は、欧米をはじめとして中国や韓国そして近年ではインドなど、さまざまな開発・取り組みが行なわれています。現段階では、レベル3が主体を占め、レベル4は特定の道路環境条件のもとでの限定されたチャレンジとなっています。2017~2023年、日本各地で小型バスや特定車両などによる実証実験が行なわれ、とりわけ高齢者からの「地域特性反映型自動運転」への期待が高まっています。

自動運転バス 茨城県境町 常時2台運行、スタンバイ1台
2024年度レベル4目指す
出雲市:大社周辺道路で「グリーンスローモビリティ」の実証走行を2023年9月より実施 車両:ゴルフカート (ヤマハ製)一部改良 EV 最高速度:19km/h

「クルマの未来、自動運転の現在」 小口泰平×清水和夫特別対談

自動運転の基準は、6段階方式。有り体に言いますと、レベル0は何もせず。レベル1は運転支援。レベル2は部分的に運転自動化。レベル3は条件付き運転自動化。レベル4は高度運転自動化。そしてレベル5は完全運転自動化です。自動車専用の高速道路などでは、レベル2の場合にハンドルから手を放すことは可能、ただし安全な走行を常時確認することが必要です。自動運転の先進はアメリカのグーグル、テスラ、アップル、GM、フォードなど。そしてウエイモによるサンフランシスコやロスアンジェルスでのドライバーレス自動タクシー運行も注目されています。ドイツでは「ベンツのDrive PILOT 」、そしてVWやBMW、ポルシェなども取組み、さらなる発展が期待されています。

中国では、北京や重慶などで自動運転タクシーがすでに実用化され、さらに個々の車両による自立方式にとどまることなく、交通センター制御方式の自動運転が検討されています。車両の最適ルートや走行制御、さらには駐車場へのガイドなど、モビリティ全てを一括コントロールする方式です。個々人の自由なモビリティを尊重する道を歩むのか、それとも一定の枠の中に収める効率重視の道を歩むのか、コトは重大な岐路に在ります。

 日本では、2013年に自動運転システム搭載の「日産リーフ」試作車を初公開、2019年には日産「プロパイロット」システムによる初の実用化を実現。その後「トヨタ・レクサス」、「スバル・アイサイト」など、かくして2023年7月頃までにほぼすべてのメーカーがレベル2を実現しています。レベル3は、「ホンダ・レジェンド」が達成。ヒトは元来、「動き回ること、移動を楽しむ生き物」。この時速3km/hの生き物がクルマによって高速の世界を手中に、この感動はこれからも維持したいものです

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著者プロフィール

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小口 泰平

小口泰平
1937年長野県生まれ。工学博士。芝浦工業大学名誉学長、日本自動車殿堂名誉会長。1959年芝浦工…