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Waymoとは
Waymo(ウェイモ)とは、シリコンバレーを本社に置き、Googleの親会社であるAlphabet Inc.傘下の、自動運転車のハードやソフトを開発する企業です。もともとは2009年にGoogle社内でプロジェクトが開始され、2016年に分社化しました。
これまで、既存車両を改造して自動運転化してGoogle本社周辺で走らせたり、2015年にはデザインから製造までオリジナルに開発したFireflyというモビリティもローンチしています。個人的にも当時、とてもセンセーショナルな見た目やインテリアに感銘を受け、居ても立っても居られずシリコンバレーまで飛び立って見に行った思い出があります。
ソフトやハードの開発のみならず、無人タクシーサービスの実用化に向けても莫大な投資を長年しており、アリゾナ州フェニックス、カリフォルニア州ロサンゼルス、テキサス州オースティンの地域で現在導入を進めています。そして今年の6月25日から、これまで限定ユーザーに留めていたサンフランシスコ市内でのサービスを一般開放すると発表しました。
Waymoに初めて乗ってみた!
現在は、サンフランシスコ市内の限られた対象エリアのみ、無人タクシーサービスが利用可能となります。とはいってもその対象エリアはサンフランシスコ市内のまさに中心街。入り組んだ道のみならず、歩行者、自転車、電動スクーター、路面電車、路肩駐車、ピーク時の慢性的な渋滞などなど、慣れた地元ドライバーでない限りあまり運転したくないエリアです。自動運転に適したゆとりのある街やエリアが広大なアメリカにたくさんあるなか、あえて難易度が高いサンフランシスコ市内を選んだあたりに、Waymoの本気を感じます。
予約、乗車、そして目的地到着まで、アプリを中心としたシームレスな体験
スマホのアプリを使って予約します。呼び出し方はいたって簡単で、Uberなどライドシェアのアプリを使い慣れていれば全く違和感なく操作できます。提供エリア内でアプリを開き、目的地を設定して配車をリクエストします。ピックアップから到着までの予想時間や乗車料金まで、とても分かりやすいシンプルなUIデザインで、安心感や親近感を感じます。
予約を完了し、ドキドキしながら自動運転タクシーを待ちました。この日は、よりによってサンフランシスコ市内が一番混雑している日曜日の乗車。指定されたピックアップ場所は、路駐もあるような道路状況で、果たしてちゃんと停まれるのかソワソワでした。ですがそんな心配もよそに、Waymoの自動運転タクシーが一般車両と違和感が全くなく並走しながらやってきて、スムーズに路肩に寄せて停車しました。
車内はいたって快適
個人的には、これまでご一緒したデザインプロジェクトで自動運転車両に乗ることは多々ありましたが、実際の一般向けサービスとしては初めての体験。しかも大混雑しているサンフランシスコ市内ということで少々緊張がありましたが、間もなくして消え去りました。
まず車内に入って気づくのは、センターに置かれた車内ディスプレイ。周辺の状況や車両の状態を正確に、3Dグラフィックを用いてわかりやすく表示してくれています。そして、乗車中にリラックス音楽がBGMとして流れていたこともとても印象的でした。また、その車内ディスプレイから自分の好みの音楽をセレクトすることも可能です。
プロレベルの心地よいドライブテクニック、本当にハイヤードライバーがいるかのような錯覚に
実際の運転が、今回の乗車で一番度肝を抜かれたところでした。信号待ち、車線変更、右折左折、自転車や歩行者のランダムな動きを予測したり瞬時に避けたり、全く問題なく街中をドライブしていきました。前方の車両のみならず、かなり広範囲にわたるあらゆる周辺状況を把握しているようです。そして、数十秒先まで予測しないと発生しえない自動運転の制御や挙動が多々あり、その知能の優秀さにびっくりしました。
一度、狭い十字路に差し掛かった際、少々無理やり右折進入してきた対向車と鉢合わせになり詰まってしまったのですが、相手の車幅や周辺状況を的確に察知しながら細かくハンドルを切り、相手が通れるようにその場で回避したときは本当に驚きました。
くわえて、アクセルやブレーキのペダル操作、ハンドルの舵角の切り方など、ドライブテクニックがプロのハイヤードライバー並に細かく洗練されていて、とても心地よかったです。
もはや、目の前に本当に人がいて運転しているかと錯覚をしてしまいそうで、自動運転の高い完成度に鳥肌が立ちました。
エクステリアデザインにもこだわり
ソフトウェアやアプリのデザインのみならず、車両のエクステリアデザインも、既存の車両を改造しつつオリジナルなこだわりが至るところに見られます。
Lidar、イメージカメラ、レーダーなど数十にも及ぶ各種センサー類、その莫大なデータを常時計算処理する高性能なコンピューターなど多数のハードウェアを、それぞれの耐久性やメンテナンス性も加味しながら構成する必要があります。
そしてそれ以上に、自動運転そのものに不安があるユーザーや社会に受け入れてもらえるようなデザインにしつつ、先進的なイメージや、Waymoという新しいブランドアイデンティティも確立しないといけません。
個人的にも同じ類のハードウェアデザインを経験したことがありますが、大変なデザインプロセスが容易に想像でき、その苦悩と工夫がいたるところに見受けられました。最終的には、難易度が高い様々なクライテリアを満たした美しいエクステリアデザインにまとまっていると感じます。
ちなみに個人的な興味で、様々な企業やブランドの意匠登録(Design Patent)をよく調べているのですが、Waymoの意匠登録はハードのみならずUIデザインまで、非常に強い戦略が見受けられ以前から感心して見ています。デザインを投資・資産として経営戦略的に重視していることが明確で、今後の記事でもぜひ解説したいと思います。
新しい移動の姿がもう日常に
ひととおり乗車を終えてみて、最初のドキドキや不安は気づいたら消え去り、その後も複数回利用することであっという間に慣れてしまいました。
思い出されるのは8年ほど前、Uberがまだ出たての頃に、初めて利用したときの記憶です。ライドシェアなんていう言葉もまだ無かった頃、なんという斬新なサービスが出たんだと、今回と同じようにドキドキしながらサンフランシスコで乗車したことを覚えています。そしてあっという間に普及し、もはや社会基盤の一部にまでいたりました。
もちろん、無人タクシーのサービスや技術はまだ発展途上で、超えるべきハードルはたくさんあることでしょう。でもそれらも時間を経ることで、近い将来、普通の光景になるのではないでしょうか。
日本ではライドシェアすらまだこれからではありますが、自動運転も早急に普及して欲しい(少子高齢化や過疎化といった社会状況を考えると日本が先駆けて欲しい…)と切望しつつ、Waymoはじめ今後の無人タクシーの進化に期待しています。