安全・安心・快適の制御技術とその頭脳【シン自動車性能論】

日本の自動車研究の泰斗として数々の研究成果を挙げてこられた小口泰平先生が、21世紀の自動車性能論を書き下ろす。名付けて『シン自動車性能論』である。第8回のテーマは「安全・安心・快適の制御技術とその頭脳」である。
TEXT:小口泰平(OGUCHI Yasuhei)

クルマの三大基本機能「走る・止まる・曲がる」、この性能向上を追求してほぼ二世紀。産業の旗手として一世紀。「安全性・低公害性などを求めて半世紀。それぞれの時代を支え、人々の夢に応え、モータースポーツの道を拓き、今や新たなる

「モビリティの世界」を拓こうとしています。

その横綱格の「自動運転システム」、片や環境保全の「EVシステム」。それぞれが競い、そして支え合いながらの新たな頭脳のモビリティ社会、その共創に向けて歩み始めています。期待したいです。

自動運転の制御技術には、システムに組み込まれた高質のアルゴリズム(算法)、高度な情報処理、移動環境情報の高速・高質センシング、その情報処理の適切さと正確さなどが求められます。すでに、メーカーをはじめ、情報企業や研究機関の先進かつ着実な取り組みによって、これ等の具体的成果が蓄積され、いよいよ実装の自動運転を迎えつつあります。

たとえば、車両の安定走行を支える「路車間制御」は、タイヤ路面間に働く力「コーナリングフォース」を維持するためにスピードセンサ、空気圧センサ、路面センサによって自動的に車速や車間距離を調整します。

「車車間制御」は、障害物センサ」や車間距離センサ、操舵角速度センサ、そして自動操縦システムなどにより行ないます。「人車間制御」も同様です。「自動操縦システム」は、路面センサ、スピードセンサ、障害物センサ、車間距離センサ、加速度センサにより最適な走行制御を行ないます。   

「照明制御システム」は、対向車への配慮もありますが、道路照明のない山道などでの右左折道路で、可動式ヘッドランプによる進路照明が期待されます。かつて、チェコスロバキアのタトラ(三つ目の高級乗用車)のロードテストをモーターファン誌(三栄書房・鈴木修己社長)主催により行なった際、輸入にあたり運輸省は「三灯式かつ可動式の規定」がないために中央の一灯を切除。何とも侘しい限りでしたが、致し方なくそのままテストを実施した次第です。

図に示す「ドライバーの状態センサ」は、高齢化社会に向かう折から、安全なモビリティ社会の維持・管理のためには重要な課題といえましょう。但し、自動運転のモビリティ社会の実現においては、二次的なものとなりましょうが、それまでは極めて重要なシステムといえましょう。

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著者プロフィール

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小口 泰平

小口泰平
1937年長野県生まれ。工学博士。芝浦工業大学名誉学長、日本自動車殿堂名誉会長。1959年芝浦工…