20代が10年前のFFホットハッチを200万円で買ってみた!ホンダ・シビックタイプRユーロとルノー・メガーヌR.S. 【モーターファンおすすめ中古車】

左がホンダ・シビックタイプRユーロ、右がルノー・メガーヌR.S.

中古価格はほぼ同じ! ただメガーヌの方が年式は新しい

両車の中古市場での価格を見ていこう。

まずはシビック。平均中古価格は約180万円だ。
たとえば「ホンダ・シビック タイプR ユーロ 2011年式、走行4万7000kmで車両本体価格188万円」というような中古車がある。
中古市場を見ると、スポーツモデルのため走行距離が過多なものが多い。100万円前後のものもあるが、長く乗ることを考えるなら200万円前後の走行距離の少ないものを検討すると良いだろう。
また2009年モデルと2010年モデルが選べるが、2010年モデルにはブラック塗装フロントメッシュグリルおよび、ダーククロームメッキで加飾したフロントグリルフレーム/アウタードアハンドル/フューエルリッドが装着されている点と、専用のシリアルプレートが付くくらいで、走りに大きな違いはない。ボディカラーは、チャンピオンシップホワイトとミラノレッドは共通で、2009年モデルにのみアラバスターシルバー・メタリック、2010年モデルにのみクリスタルブラック・パールが設定された。

3代目メガーヌR.S.の平均中古価格は約182万円。
200万円以内となると2011年から2014年まで販売されていた前期型と中期型が狙える。
たとえば「メガーヌ ルノー・スポール 2012年式 (中期型)、走行4万5000kmで車両本体価格188万円」というような中古車がある。
中古市場を見ると、ホンダ・シビック タイプR ユーロと比べるとタマ数は少ないが、状態の良いものが多い印象を受ける。またグレードや限定車も多く、前期・中期・後期モデルによってエンジンパワーなどの仕様も異なる。検討する際には気をつけよう。また、前期型や一部の限定車は左ハンドルのみの設定となっているので注意が必要だ。

このように両車の中古価格は拮抗している。ただし、シビックは2009年モデルと2010年モデルしか選べないのに対して、メガーヌは2011年から2017年まで販売されていたのでメガーヌの方が比較的年式の浅いものが選択できる。(年式の新しさでどちらか選ぶ人は少ないと思うが、、)

リヤハッチを開ければわかる? 似てるようで違うパッケージング

パッと見た感じは、大きさも形も似ている2台だがパッケージングは大きく異なる。まずシビック タイプRユーロはベースが初代フィットで、ホンダ独自のセンタータンクレイアウトを採用している。そのため室内は驚くほど広い。特に2列目は、筆者が乗車したこれまでの3ドア車のなかでも一番広く感じた。タンクが前席の座面下部にあるため後席の足元空間がすっきりしていて、あわせて頭上空間も広く、1時間以上大人が座っても苦ではない。しっかりタイプRにもホンダのM・M(マン・​マキシマム/メカ・ミニマム)思想が行き届いてるのが感じられた。 

全長×全幅×全高:4270×1785×1445mm ホイールベース:2635mm
全長×全幅×全高:4320×1850×1435mm ホイールベース:2640mm

メガーヌR.S.も実用車ベースがのため、外観の印象とは裏腹に室内は広々している。後席の空間も狭くはなく、大人二人が乗っても問題もない。ただシビックと比べてしまうと、室内高が低く後席の窓が小さいため閉塞感を感じた。室内の広さと快適性で勝負するならシビックの完全勝利となる。

また荷室は若干シビックの方が広かったが、とくに広さ自体に大きな差はなかった。しかし、リヤハッチの開口部を見ればその違いに驚く。写真にあるようにメガーヌのリヤハッチは女性の腰くらいの高さから開き、開口部の左右の幅も狭い。また荷室に段差が生じるため、荷物を出し入れしにくい。それに対し、シビックはミニバンのように目一杯に開く。開口部と荷室の段差も少なく、非常に使いやすい。ベース車両の違いもあるとは思うが、シビックはあくまで実用性は損なわない、メガーヌは実用性よりもボディ剛性重視という考え方の違いを見て取れる。らしさ全開のパッケージングだ。

左がメガーヌR.S.、右がシビック タイプR ユーロ。荷物の出し入れなど荷室の使い勝手もシビックの方が良い

高回転のNAか、大トルクのターボか

8000rpmまで駆け上がる歓びは忘れられない

それでは走りの方はどうちがうか。

シビック タイプRユーロのエンジンは2.0ℓNAエンジンを搭載。セダン(FD2)と同じのK20Aエンジンだが、セダンの最高出力が225psに対してこちらは201ps。さらにセダンより60kg車体が重いため、セダンと比べてしまうと「過激さ」は薄れてしまう。ただあちらは「サーキット・ベスト」。シビック タイプRユーロはしっかり街乗りからワインディング、サーキットまで楽しめるオールラウンダーだ。

気持ちよく高回転まで回るエンジン

ここはさすが欧州向けといったところで、欧州の田舎の荒れた道路でも快適に走れるように開発されているため、セダンと比べると断然走りがマイルドだ。またシートの出来も良い。適度に体がホールドされ、クルマとの一体感を感じられる。表皮がアルカンターラなのも肌触りがなめらかで気持ちいい。ただし、前席の床下にガソリンタンクが埋め込まれているセンタータンクレイアウトを採用しているため、スポーツモデルとしては、アイポイントが高めだ。

またホンダ自慢のi-VTECエンジンは踏んだら踏んだだけ気持ちよく回る。また、NAエンジンのため、ターボ特有のラグが発生することなく、気持ちよく8000rpmのレッドゾーンまで突き抜ける歓びは一度味わったら、虜になること請け合いだ。タイプRとしてはいまのところ最後のNAエンジンとなってしまったが、電動化が進むといまこそ味わっていただきたい名機だ。

サーキットから一般道までこなせるシビック タイプRユーロ

速さを追求したメガーヌR.S.

3代目メガーヌR.S.は、2.0ℓの16バルブツインスクロールターボエンジンが搭載されている。このエンジンはアクセルを踏み込むと野太いエンジン音でトルクフルに加速する。シビックと違い約6500rpmまでしか回らないのだが、これはこれで気持ちいい。最高出力は初期型で250ps、最大トルクは340Nmで、自然吸気エンジンのシビックより最大トルクで約150Nmもトルキーだ。

ターボエンジンは非常にトルクフル

またシャシーの剛性感も非常に高い。ルノー・スポールには、日常の使い勝手とスポーツ性をバランスさせた「シャシースポール」と、スポーツドライビングに最適化された「シャシーカップ」の2種類のシャシーがラインアップされるが、日本仕様の3代目メガーヌR.S.は後者を採用している。ワインディング走行が特に気持ちよく、ドライバーの思うようにしっかり車体がついてくる感覚は、「シャシーカップ」を採用した恩恵だろう。

また、さすがはニュルでの元記録保持者。スポーツドライビングを支えるブレーキも、高性能なものが装備されている。フロントには冷却性に優れたブレンボ製ベンチレーティッドスリットディスクが、リヤにはブレンボ製スリットディスクが採用されており、これがよく効くのだ。

さらにレカロ製バケットフロントシートは、本格的なスポーツドライビングにも対応する高いサポート性とホールド性を持つ一方、安全で快適な乗り心地も実現している。さすがに乗り降りはしづらいが、一度座ってしまうとぴったり体が包まれ、座り心地がかなりいい。シャシーから装備まで速さを追求した真のスポーツカーだ。

シャシーの完成度が高い

こうして走りを比較すると、NAエンジンならではの気持ちよさを重視するならシビック、絶対的な速さと完成度の高さを求めるならメガーヌと両者の性格は異なる。ただ、ひとつ言えることはどちらを所有しても価値があるということだ。いまのクルマで当たり前になった運転支援や自動ブレーキなどの快適安全装備などはほとんど付いていないが、その分走りが楽しく、EVやHEVでは味わえないガソリン車ならではの加速の気持ちよさが味わえる。興味のある方はぜひこの2台を検討してみてはいかがだろうか。

ホンダ・シビック タイプR(2010年モデル)

ホンダ・シビック タイプR ユーロ
全長×全幅×全高:4270×1785×1445mm
ホイールベース:2635mm
車両重量:1320kg
エンジン形式:水冷直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量:1998cc
ボア×ストローク:86.0×86.0mm
最高出力:201ps(148kW)/7800rpm
最大トルク:19.7kgm(193Nm)/5600rpm
トランスミッション:6速MT
フロントサスペンション形式:マクファーソン式
リヤサスペンション形式:車軸式
乗車定員:4名
タイヤサイズ:225/40R18
ハンドル位置:右
新車価格:300万円
※2009年発売当時のスペック

ルノー・メガーヌR.S.(2011年モデル)

ルノー・メガーヌR.S.
全長×全幅×全高:4320×1850×1435mm
ホイールベース:2640mm
車両重量:1430kg
エンジン形式:直列4気筒DOHC16バルブターボ
総排気量:1998cc
ボア×ストローク:82.7×93.0mm
最高出力:250ps(184kW)/5500rpm
最大トルク:34.7kgm(340Nm)/3000rpm
トランスミッション:6速MT
フロントサスペンション形式:マクファーソン(ピボット独立式)/コイル
リヤサスペンション形式:トレーリングアーム/コイル
乗車定員:5名
タイヤサイズ:235/40ZR18
ハンドル位置:左
新車価格:385万円
※2011年発売当時のスペック

今回、10年前のFFホットハッチ、シビック タイプR ユーロと3代目メガーヌR.S.を紹介したが、現行型以上に両者の違いが感じられた。一見、3ドアハッチバックというシルエットは似ているものの、使い勝手やエンジン、デザインのテイストなどそれぞれの性格やメーカーの考え方が反映されており、非常に興味深かった。

電動化が進むいまこそ、一度味わっていただきたいおすすめの2台だ。 

福井県の熊川宿にて

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著者プロフィール

伏木幹太郎 近影

伏木幹太郎

福井県出身。自動車部品業を営んでいた祖父の影響で、幼い頃から自動車に囲まれて育つ。初めて憧れたクル…