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技術基盤ははどちらも最新モジュラープラットフォーム
プジョー208とルノー・ルーテシア(欧州名:クリオ)は、ともに2019年のジュネーブ・モーターショーでワールドプレミアされた。5ドアハッチバックからSUV/クロスオーバーへとベーシックカーの主役が変わりつつある現代だが、それでも欧州でベストセリングモデルはBセグハッチバックである。その主役の2台が同時にモデルチェンジしたわけだ。
注目すべきは208もルーテシアも、プラットフォームから刷新されたこと。
ルーテシア:CMF-B
208:CMP
という名前のモジュラー・プラットフォームである。ともにEVを考えた最新のプラットフォームである。
ちなみに、2021年1~11月の欧州での販売台数は
ルノー・クリオ:17万5563台
プジョー208:17万2614台
とともに、大ヒット中だ。
さらに、参考に言うと、それぞれのSUVバリエーションであるモデルの販売台数は
ルノー・キャプチャー:14万4304台
プジョー2008:17万3890台
となっている。
この2台の最新フレンチBセグHBに続けて試乗することができた。その印象と交えて比較してみよう。
ボディサイズを比較してみる
ボディサイズは
ルノー・ルーテシア
全長×全幅×全高:4075mm×1725mm×1470mm
ホイールベース:2585mm
プジョー208
全長×全幅×全高:4095mm×1745mm×1465mm
ホイールベース:2540mm
と208の方が少し大きい。が、ホイールベースはルーテシアの方が45mmも長い。
サイドビューを見ると、この2台の方向性の違いが見てとれる。ルーテシアは、かつてのCセグHBが担っていた1台ですべてをこなすベーシックカーの役割を果たすためのパッケージング。一方の208はよりスタイリッシュでパーソナルな、つまり前席重視のパッケージングに見える。その分、208のほうがわかりやすくカッコいいし個性的だ。前型からの変わり具合も208の方が大きい。
最小回転半径はルーテシアが5.2m、208が5.4mとルーテシアの方が小回りがきく。
エンジンはルーテシアが4気筒、208が3気筒
ルノー・ルーテシア 1.3ℓ直4DOHCターボ
プジョー208 1.2ℓ直3DOHCターボ
エンジンはルーテシアが1.3ℓ直4、208が1.2ℓ直3でともに直噴ターボエンジンだ。
ルーテシアが131ps/240Nm
208が100ps/205Nm
である。
パワーウェイトレシオ〔車重を最高出力で割ったもの)は
ルーテシアが9.16kg/ps
208が11.7kg/ps
トルクウェイトレシオ(車重を最大トルクで割ったもの)は
ルーテシアが5kg/Nm
208が5.7kg/Nm
で、ともにルーテシアの方が優秀な数値となる。
とはいえ、208の直3ターボは非常に気持ちのよいエンジンだ。3気筒のネガを感じさせない。いやな振動も一切ない。
ルーテシアの1.3ℓ直4エンジンはダイムラー(メルセデス・ベンツ)との共同開発で生まれたもの。メルセデス・ベンツAクラスにも同型(メルセデスはM282型と呼ぶ)が載っている。最新技術が詰まったエンジンである。
トランスミッションはATとDCT
トランスミッションも両モデルで大きく違う。
ルーテシアはDCT、208は通常のトルコンATを使う。
ルノーが使うDCTはゲトラグ製がベースだろう。DCTには乾式デュアルクラッチと湿式デュアルクラッチがある。伝達効率では乾式に、ドライバビリティでは湿式に分がある。新型ルーテシアは湿式を採用している。
プジョー(PSA)は、アイシン・エィ・ダブリュのATを使う。エンジンの出力から考えれば6速で充分だがPSAは積極的に8速ATを採用する。208も8速だ。
100km/h巡航時のエンジン回転数はメーター読みで
ルーテシア:7速で1950rpm
208:7速で2200rpm
だった。208は100km/hではなかなか8速に入らない。8速に入るのは110km/hくらいだ。
モード燃費は
ルーテシア インテンステックパック
WLTCモード 17.0km/ℓ
市街地モード12.7km/ℓ
郊外モード:17.2km/ℓ
高速道路:19.8km/ℓ
208 GT-Line
WLTCモード 17.0km/ℓ
市街地モード13.0km/ℓ
郊外モード:17.3km/ℓ
高速道路:19.3km/ℓ
である。
試乗時の燃費は
ルーテシア:17.2km/ℓ
208が14.0km/ℓ
だった。
走行条件が違うが、燃費はルーテシアの方が若干良さそうだ。その代わりドライバビリティは208の方が優れる。
インテリア比較
ルーテシアのインテリアは「次世代スマートコックピット」を謳うが奇をてらったところはなく、明るく常識的。帯する208は、プジョーの最新作らしくメーターは3D i-Cockpitを採用する。正直に言ってi-Cockpitは合う人は合うし、合わない人は合わない。メーターをステアリングホイールの上から覗き込むスタイルは独特だ。
インテリアの質感はどちらも高級ではないが、かといって安っぽいわけでもない。ルーテシアはオーソドックス、208はスポーティである。
シートの出来は両モデルとも及第点を楽々クリアする。シートの好みはそれぞれだろうが、筆者はプジョーのシートが好み。208 GT-Lineのアルカンターラ/テップレザーシートは長距離ドライブでも腰に負担がかからないと感じた。
後席の居住性が高いのはルーテシアだ。ホイールベースが長い、そしてルールがボディ後端まで延びていることもあって、膝周りも頭上もルーテシアの方が余裕がある。
ここまで比較したうえで言うのもなんだが、新型ルーテシアも208も完成度は非常に高い。これもVWゴルフやアウディA3などからの以降でも「Cセグ→Bセグ」へ、ダウングレードした気持ちにはならないだろう。
使いやすいボディサイズ、質の高いインテリア、まぁまぁ広い居住性、高い性能のパワートレーン、そして(好みは分かれるが)デザイン性の高さはルーテシア、208ともに大きな武器になる。
両モデルに試乗した筆者としては
ルーテシアに208の8速ATがつく
208にルーテシアのエンジンとパッケージングが載る
のが理想的だと感じた。
とはいえ、宿命のライバル、ルーテシア vs 208なのだが、新型になって個性がよりくっきり分かれた気がする。
いろいろないものねだりを言ったが、都会暮らしには208、オールラウンダー(郊外・高速がより得意)ならルーテシアがお勧め、と結論づけたい。
とはいえ、宿命のライバル、ルーテシア vs 208なのだが、新型になって個性がよりくっきり分かれた気がする。
まずは、一度試乗してみてほしい。
ルノー・ルーテシア インテンステックパック
ルノー・ルーテシア インテンステックパック 全長×全幅×全高:4075mm×1725mm×1470mm ホイールベース:2585mm 車重:1200kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 駆動方式:FF エンジン 形式:直列4気筒DOHCターボ 型式:H5H 排気量:1333cc ボア×ストローク:72.2mm×81.4mm 圧縮比:9.6 最高出力:131ps(96kW)/5000pm 最大トルク:240Nm/1600rpm 燃料供給:DI 燃料:無鉛プレミアム 燃料タンク:42ℓ 燃費:WLTCモード 17.0km/ℓ 市街地モード12.7km/ℓ 郊外モード:17.2km/ℓ 高速道路:19.8km/ℓ トランスミッション:7速DCT 車両本体価格:276万9000円
プジョー208 GT Line
プジョー208 GT Line 全長×全幅×全高:4095mm×1745mm×1465mm ホイールベース:2540mm 車重:1170kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式 駆動方式:FF エンジン 形式:直列3気筒DOHCターボ 型式:EB2 PureTech 排気量:1199cc ボア×ストローク:75.0mm×90.5 mm 圧縮比:10.5 最高出力:100ps(74kW)/5500pm 最大トルク:205Nm/1750rpm 燃料供給:DI 燃料:無鉛プレミアム 燃料タンク:44ℓ 燃費:WLTCモード 17.0km/ℓ 市街地モード13.0km/ℓ 郊外モード:17.3km/ℓ 高速道路:19.3km/ℓ トランスミッション:8速AT 車両本体価格:293万円 (現行プジョー208GTは車両本体価格○316万1000円)