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■7代目をもってシルビアの歴史は終焉を迎えた

1999(平成11)年1月19日、日産自動車のFRスペシャリティクーペ「シルビア」の最終世代となった7代目(S15型)がデビューした。大ヒットした5代目(S13型)に続いた6代目は、3ナンバーボディとなってダイナミックさをアピールしたが人気は得られず、7代目はシャープな5ナンバーとなって人気回復を図った。

美しさと走りでファンを魅了したシルビア5代目


初代シルビア(CSP311型)は、1965年に高級スペシャリティカーとして誕生。その後、進化を続けて1988年についに名車5代目(S13型)シルビアがデビューした。

5代目シルビアは、FRならではのハンドリング性能やパワフルなDOHCエンジンなど性能的にも優れていたが、最大の魅力はエレガントストリームラインを名乗ったその美しいスタイリングだった。発売当初のパワートレーンは、最大出力135ps/最大トルク16.2kgmを発揮する1.8L直4 DOHCエンジン(CA18DE型)と175ps/23.0kgmのインタークーラーターボエンジン(CA18DET型)の2種と、5速MTおよび4速ATの組み合わせ。
また、新世代FRに相応しいリアサスペンションとしてマルチ・リンクシステムを採用。さらにオプションだが、コーナリング中にステアリングの切れ角に応じて後輪も操舵する4WS(ハイキャス機構)も設定。これらが、一段と高いレベルの走りとシャープなハンドリング性能を求めるスポーツ派に応えた。
5代目シルビアは、若い男女のデートをお洒落に演出するデートカーの代表的なモデルとして、ライバルのホンダ「プレリュード」やトヨタ「セリカ」を凌ぐ人気を獲得したのだ。
シャープなシルエットで走りを追求した最終7代目

1993年には、シルビア史上初めて3ナンバーボディとなった6代目(S14型)に切り替わり、先代よりも大人の落ち着いた雰囲気となったが、またRVブーム到来などの市場の変化によって先代のような人気は得られなかった。

そして1999年1月のこの日、7代目(S15型)にモデルチェンジ。6代目の反省を踏まえて、開発コンセプトは“軽快コンパクトなスポーティクーペ”、そのために再び5ナンバーボディに戻してスリム化し、先代よりも全長は75mm、全幅は35mm縮小され、全高は10mm低く仕立てられた。

低くスラントしたフードとシャープな薄型ヘッドランプを組み込んだフロントマスク、エアインテークを設けたエアロバンパーなどで精悍さを、リアも流れるようなリアピラーなどでシャープさをアピール。2つのグレードが設定され、スペックRは最高出力250psを発揮する2.0L直4 DOHCターボエンジン(SR20DET型)を搭載、スペックSは最高出力165psの2.0L直4 DOHC NAエンジン(SR20DE型)を搭載。トランスミッションは、5速&6速MTおよび4速ATが組み合わされた。
サスペンションは、前ストラット式/後マルチリンク式の4輪独立タイプをスポーツチューン。7代目シルビアはFRの楽しさを徹底的に追求し、エレガントさよりもスポーティであることを重視して本格派の走りのスポーツクーペを印象づけたのだ。

車両価格は、5速MT仕様でスペックR が239万円、スペックSが177万円。当時の大卒初任給は19.6万程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値でスペックRが約280万円、スペックSが約208万円に相当する。
シルビア終焉に向けてラインアップを強化
7代目シルビアは、ファンの要望に応えるようにラインアップ強化を積極的に進めた。

1999年10月には、“bパッケージ”と称するファッション性を重視したグレードが追加。これには、ライトブルーイッシュシルバーと呼ぶ専用外表色やブルーのスエード調クロス内装、クローム色アルミホイールなどが装備された。
同時に、オーテックジャパンが各部をチューンナップした“オーテックバージョン“も加わった。スペックSをベースに、圧縮比アップやステンレス等長エキマニ、カムプロファイルなどの変更などで最高出力/最大トルクは200ps/21.8kgm(SR20DE型)まで向上した。

極めつけは、2000年7月にオープンスポーツコンバーチブル・ヴァリエッタの登場である。注目は、国産車初となる電動メタルトップのオープン構造で、クローズド時はクーペと同等の静粛性と耐久性を持つ。こちらも、ベースはスペックSだ。ちなみに、ヴェリエッタの車両価格は5速MTで279.8万円、ベースよりも約100万円高額だった。

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7代目シルビアの走りは、歴代シルビアの中でも際立ち、走り好きにとっては憧れのクルマだったが、販売は振るわずシルビア最後のモデルとなった。2000年を迎える頃には、若者のクルマ離れが進み、スポーツモデルにとっては冬の時代となってしまったのだ。
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