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今日は何の日?■ミニバン風の個性的なハッチバックのエリオ

2001(平成13)年1月29日、スズキは1.5Lのコンパクトハッチ「エリオ」をデビューさせた。エリオは、カルタスの事実上の後継モデルにあたり、ハッチバックだが広い室内と奥行きのある荷室を持つ、外観上はミニバン風のシルエットが特徴だった。
エリオの前身となったカルタスはGMとの共同開発で誕生

エリオは、カルタスの後継モデルだが、そのカルタスは1981年にスズキが資本提携していたGMとの共同開発で世界戦略車として1983年に誕生した。スズキにとっては、少量生産だった「フロンテ800」を除き、実質初めての小型乗用車だった。
初代カルタスは、GMの意見が色濃く反映され、廉価で燃費の良い小型車が目標とされた。オーソドックスな3ドア/5ドアハッチバックに、1.0L直3エンジンが搭載されたカルタス(米国名:シボレー・スプリント)は、米国では好調な販売を記録したが、日本での販売は伸び悩んだ。
日本で不評だった初代の反省を踏まえて、日本市場を優先してスズキ主導で開発したのが、1988年に登場した2代目カルタスである。プラットフォームを一新して、上級志向に舵を切ったのが特徴で、エンジンは1.0L直3と1.3L直4エンジンが搭載された。

その後、3代目となる上級グレードの「カルタスクレセント」を投入して、安価なカルタスと上級小型車カルタスクレセントに棲み分けられ、結局2000年まで生産が続けられた。カルタスは、当時まだ実績のないスズキの小型車ということもあり、認知度は低く市場の反応は芳しくなかった。
カルタスの後継として誕生したエリオ
カルタスとカルタスクレセントの後継として、世界戦略車特に欧州を意識して開発されたのが、2001年1月のこの日にデビューしたエリオである。


新開発のプラットフォームを採用し、コンパクトなボディサイズながら、広々した車室スペースが特徴。スズキは、ミニバンのゆとりある居住性とセダンの走行性能、そしてステーションワゴンの使い勝手を融合させたクルマと謳っていた。インテリアについても、欧州向けらしく大きめのシートが設定され、さらにデジタルスピードメーターなど先進的な装備も目を引いた。

また足回りについては、欧州走行で徹底的に磨きをかけたというだけあって、乗り心地はやや硬めでドライブポジションなどまさに欧州マーケットを重視していることが伺えた。パワートレインは、最高出力110ps/最大トルク14.6kgmを発揮する新開発の1.5L直4 VVT付DOHCエンジンと5速MTおよび4速ATの組み合わせ、駆動方式はFFと4WDが用意された。
車両価格は、標準グレードで125.0万円(5速MT)/134.8万円(4速AT)。当時の大卒初任給は、19.7万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で146万円/157万円に相当する。
2001年11月には、4ドアセダンを追加し、2003年には1.8Lエンジンを搭載したスポーティなスズキ初の3ナンバーモデルも登場したが、トヨタ「ヴィッツ」とホンダ「フィット」の大ヒットの陰に隠れて、存在感をアピールすることはできなかった。
スイフトもカルタスの後継車だった

エリオのデビュー1年前の2000年2月、やはりカルタスの後継と位置付けられる初代「スイフト」が登場していた。スイフトは、軽自動車「Kei」のプラットフォームを流用し、ホイールベースは同じでトレッドを広げ、5ドアハッチバックのコンパクトカーに仕上げられた。パワートレインは、88ps/11.6kgmの1.3L直4 VVT付DOHCエンジンと、3速および4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFと4WDが用意された。

Keiベースで、さらにKeiの部品を流用した低価格が売りだったが、逆に軽自動車のイメージから脱却できず、現在のスイフトのような人気を獲得することはできなかった。現在のスイフト人気の礎を築いたのは、2004年にモデルチェンジでデビューした2代目スイフトになってからである。
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スズキ初の小型車として登場したカルタスとエリオは、軽のスズキが作った小型車と言われるような地味な存在だった。しかし、欧州車に負けない現在のスイフトに代表されるようなスタイリングや走り、乗り心地などのスズキの小型車づくりの礎なったのは、このエリオだったかもしれない。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
