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■3.0L V6エンジン搭載のアヴァンシアに4WDモデル追加
2000(平成12)年2月3日、ホンダは前年にデビューした上級ワゴン「アヴァンシア」の3.0L V6エンジン搭載モデルにデュアルポンプ式リアルタイム4WDを装備した「V-4」を追加した(発売は2月4日)。デュアルポンプ式4WDは、通常はFFで必要に応じて4WDに切り替わるオンデマンド方式の4WDである。

ワンランク上の快適性を追求した上級ワゴンのアヴァンシア
ホンダは、1990年代のステーションワゴンブームの中で、他のモデルとは一味違うワンランク上の上級ワゴンとして、セダンのような高級感とワゴンの広い室内空間を融合したアヴェンシアを1999年に投入した。

米国生産のシビックのプラットフォームをベースに、4ドアにテールゲートを備えた高級感を意識させる流麗なフォルム。最大の特長は、ゆとりの車室空間であり、後席は大人がゆったりできるスペースを確保し、さらに前席の中央に空間を持たせることで前後席間のウォークスルーも可能としたこと。

パワートレインは、最高出力150ps/最大トルク21kgmの2.3L直4 VTECエンジンと4速AT、215ps/27.7kgmの3.0L V6 VTECエンジンと5速ATの組み合わせ。駆動方式はFFが基本で2.3Lのみリアルタイム4WDが設定され、前後ともダブルウィッシュボーンのサスペンションによって、高級セダン並みの乗り心地が実現された。
3.0L V6エンジンにリアルタイム4WDを装備したV-4モデル
アヴァンシア発売の翌2000年2月のこの日に追加されたV-4モデルは、力強い走りのV6エンジンを搭載し、大型化された前後バンパー&オーバーフェンダー、車高が上げられたサスペンション、大径タイヤ、ルーフレール等を装備してクロスオーバーSUVのような雰囲気となり、エンブレムも“Avancier4(数字のみ赤字)」として4WDをアピールした。

4WDシステムは、ホンダ独自のデュアルポンプ式4WDシステムである。また、ゲート式インパネシフト+5速ATに雪道でのスムーズな発進に効果的なスノーモードシステム、衝突時の人への傷害を低減させる衝突安全技術“Gコントロール”、積載荷重に応じて後輪の制動力をコントロールする“EBD(電子制御制動力配分システム)付ABS+ブレーキアシストなど、先進技術が満載された。

これにより、アヴァンシアは2.3LエンジンとV6 3.0LエンジンでそれぞれFFとリアルタイム4WD仕様を選ぶことが可能となった。
V6エンジン搭載V-4の車両価格は、295.5万円。当時の大卒初任給は、19.7万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約345万円に相当する。
デュアルポンプ式はホンダ独自のオンデマンド式4WD
デュアルポンプ式リアルタイム4WDは、ホンダが独自に開発したオンデマンド式4WDである。
通常はFFで走行し、発進や加速、雪道や悪路などで前輪が滑りやすい状態を感知すると、フロントポンプとリアポンプに油圧が発生し、湿式多版クラッチを繋いで後輪も駆動する4WDとなる。クラッチ圧着力を調整することで、路面状態や走行状況に応じて最適な駆動力を配分する。

デュアルポンプ式4WDは、湿式多版クラッチを油圧制御(機械的に制御)するので、切り替えレスポンスにやや遅れが発生し、“オンデマンド4WD”と呼ばれ、かつては“なんちゃって4WD”と揶揄されたこともあった。
最近は、カップリングや多板クラッチを電子制御する方式が一般的で、機械式よりもレスポンスに優れ“アクティブ・オンデマンド4WD”と呼ばれる。

当然ホンダの4WDシステムも、最近は「リアルタイムAWD」と呼ぶ電子制御方式に進化している。ひとつのポンプをモーターで作動させ、電子制御クラッチで後輪へ素早く駆動力を配分する方式である。
上級なワゴンとして完成度が高かったアヴァンシアだが、販売は伸びなかった。ステーションワゴンをけん引して大ヒットしていたスバル「レガシィ・ツーリングワゴン」とコンセプトが異なる、何よりも快適性を重視したワゴンだったが、その魅力はユーザーには浸透しなかったのだ。

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かつての4WDは、悪路や雪路向けの特別な駆動システムだったが、舗装路でもトラクション性能に優れることからハイパワーを誇る高性能モデルでは4WD化は不可避となっている。さらに発進や旋回加速などでも4WDが有利なことから、コストや重量の課題はあるが、今後着実に増えていくだろう。
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