うっかりバックであわや雪壁に激突!? アイサイトのおかげで助かりました!【スバル・レヴォーグ レイバック試乗】

スバル・レヴォーグ レイバックで、青森は八甲田にある酸ヶ湯(すかゆ)を走った。豪雪地帯で知られる地域だが、試乗当日は快晴。道路の両側は雪壁がそびえていたものの、ほとんどの路面に雪はなし。それで安心していたのか、雪壁の存在に気付かないままバックで駐車しようとしたら、「ギュッ」とアイサイトが緊急ブレーキ! レイバックはすんでのところで衝突を回避して、アイサイト、そしてスバルの「安心」を期せずして体感することができたのだった。

「ぶつからない」をサポートするアイサイトのありがたみを青森でも実感!

スバル初のストロングハイブリッド、その強みは燃費だけではなかった! 【スバル・クロストレック試乗】

冬といえば雪、雪といえばスバル。日本のみならず、北米でも積雪地域におけるスバル車への信頼度はすごぶる高い。というわけで、今回、スバル・クロストレックのストロングハイブリッド車で走ったのは、積雪で全国1位の記録を誇る青森県の酸ヶ湯(すかゆ)。スノードライビングの印象を…と意気込んだものの、試乗当日は生憎(!?)の晴天で、路面に雪の姿はほぼなし。それでも、S:HEVの頼もしさは存分に味わうことができた。

クロストレックと同じ200mmの最低地上高を持つスバル・レヴォーグ レイバック(以下レイバック)に雪深い酸ヶ湯温泉(青森県)周辺で乗った。もっとも、「雪深い」の形容は道路脇に限られる。道路上のアスファルトは完全に露出しており、軽く湿った状態だった。道路は除雪が行き届いており、アスファルト上の雪は温浴施設の駐車場や退避路に限られていた。

レヴォーグをベースに、都市型SUVをコンセプトとして開発されたレヴォーグ レイバック(以下レイバック)。最低地上高はレヴォーグが145mm(一部140mm)なのに対して、レイバックは200mmまで引き上げられている。

運転支援システムのアイサイトは基本的にクロストレックと同等で、ハードウェアでは従来のステレオカメラに、低速走行時の二輪車/歩行者を認識できる広角単眼カメラを追加したのが特徴。これによりプリクラッシュブレーキの作動領域が拡大し、自車直進時に交差点を横断する自転車や、右左折時の対歩行者に対してプリクラッシュ(衝突回避)ブレーキで対応できるようになった。

ステレオカメラに広角単眼カメラを加えた最新のアイサイトを搭載。高度運転支援システム「アイサイトX」も標準採用される。

酸ヶ湯温泉周辺はところによって除雪した雪が本線側に侵食しており、実質的な道幅が狭くなっていた。そのため必然的にセンターライン寄りを走ることになる。状況によっては致し方なく、センターラインを踏んでしまうことも。すると、システムは車線を逸脱しそうになったと判断し、警報音と表示で「危険な状況ですよ」と知らせてくれる。

レイバックのスリーサイズは全長4770mm、全幅1820mm、全高1570mm。扱いやすいサイズでありながら、十分な積載性能を誇り、優れた悪路走破性も備える。まさに「これ1台で何でもできる」を体現したクルマだ。

「左側に雪が迫っているので仕方ないんですけど」と反論したい気持ちにもなるが、「システムがしっかり見守ってくれているんだな」と実感できるので、筆者は好意的に受け止めた。警報音が警報としての役割をしっかり果たしつつ、ヒステリックにすぎないのが、わずらわしさにつながらない理由かもしれない。

積雪で全国1位(5.66m)の記録をもつ酸ヶ湯。2025年1月17日にも4.36mの積雪があり、1月の観測史上1位を記録した。翌週に行われた試乗会の当日は快晴で、路面はしっかりと除雪済み。しかし、両側にそびえ立っていた雪壁が、豪雪地帯の片鱗を覗かせていた。

雪の壁が路肩側にあるので、ドライバーは意図的にセンターラインに寄っている。そう認知〜判断した場合は警報の出し方を変えるといったことは「技術的には可能」だと、開発にあたる技術者は話す。こうしたシチュエーションでの対応に課題があることは認識しているという。好意的に受け止めるか、ストレスに感じるかはドライバーの感覚(気持ち?)次第なので、制御の仕立ては難しいところ。「いろいろなお客さまが満足するよう最大公約数的にしなければならないところがある。より快適に使っていただけるような活動を継続していきたい」とのことだ。

レイバックのパワーユニットは1.8L直噴ターボで、最高出力177PS、最大トルク300Nmを発生。モーターによるアシスト機構は備わらない。

見守ってくれている感を感じつつ、ありがたみを感じこそすれ迷惑に感じない機能にドライバーモニタリングシステムがある。室内に設置された専用カメラがドライバーの顔を認識し、走行中、ドライバーに不注意があるとシステムが判断した場合は、警告音や警告表示で注意を喚起する。今回の試乗中、交差点で完全停止する寸前に前方から目をそらし、センターディスプレイを操作しようとしたことがあった。その瞬間、「前方注意」の警告を受けた。悪いのは100%筆者であり、「いかんいかん、気をつけなきゃ」と思った次第。

2024年12月にレイバックは一部改良を実施。「ドライバーモニタリングシステム」と「ドライバー異常時対応システム」の連携を強化し、ドライバーが脇見をしたり居眠りをしたりすると、「ドライバー異常時対応システム」が作動するようになった。
一部改良では、アイサイトの「車両中央維持制御」と「先行車追従操舵制御」にも変更が加えられた。直線で車線センター付近を走行している際は介入操舵がしやすいよう軽めの操舵感とする一方、急なカーブや白線付近の走行時は安全性を考慮して重めの操舵感にセッティング。

アイサイトに助けられたシーンがもうひとつあった(注意されたり、助けられたりしてばかりである)。高い雪壁に囲まれた退避スペースのような場所で、レイバックをバックで雪壁ぎりぎりに寄せて止めようとした。筆者としては「まだ大丈夫」との認識だったので、アクセルペダルを踏みつづけていた(もちろん、状況が状況だったので、そっと踏んでいた)。

レイバックは後退時ブレーキアシスト(RAB)を搭載しており、後退時、車体後部に装着したソナーセンサーが障害物を検知すると、衝突の可能性がある場合は警報音と警告表示で段階的に注意を喚起。回避操作がない場合は自動的にブレーキをかけ、衝突回避または被害を軽減する。同乗者によると、「警報が鳴っていたのに(筆者は)アクセルを踏んでいた」とのことだが、センターディスプレイに映し出される画像を見ながら(といっても真っ白だったが。カメラのレンズも汚れていたし。と言い訳)雪壁に寄せることに意識が持って行かれたために、警報には気づいていなかった。

上質な雰囲気の室内もレイバックの魅力。シートはトリコットとファブリックを組み合わせたコンビシートが標準装備。また、車高が上がったのに合わせて、前席シート座面のサイドサポート部を低くして乗降性にも配慮されている。

結果、RABが作動。雪壁に対して寸止めの位置で停止した。筆者の意識としては「あれ? どうして?」という感じだった。実際にコツンとバンパーをぶつけてしまうような事故を起こした場合(いや、ガツンだったかもしれない)にも、同じように呆然としたことだろう。ぶつかるのとぶつからないのでは物理的にも、金銭的にも、心理的にも大違いだ。もしぶつかってバンパーに傷でも付けていたら、その日一日暗い気持ちで過ごすことになったはずだ。

ラゲッジルームの容量は、VDA方式で492Lとたっぷり。フロア下には69Lのサブトランクも備わる。

そう考えるとアイサイト様々である。フロントグリル、ドアミラー、リヤゲートに備えたカメラの画像をセンターディスプレイに表示するマルチビューモニターも、雪の壁で視界が遮られる状況では重宝する。交差点で直交する道路に鼻先を出すような状況では、フロントビューで左右の状況を確認することが可能。「VIEWスイッチ」はセレクターレバーの脇という押しやすい場所にあるのがいい。スイッチを押してAUTOモードを選択すると、車速が15km/h未満になった際に部分トップビュー+フロントビュー画面を自動的に表示するので便利だ。

メーターは12.3インチのフル液晶、センターディスプレイは11.6インチの縦型を標準採用。
デジタルマルチビューモニターはトップビューや、車両正面と前側方を表示するフロントビューが特に便利。

職業柄、筆者は多くのメーカー/ブランドのクルマに乗るが、スバルのクルマに乗るたび、「しっかり見守られている」感が強いのを感じる。見守りが押し付けがましくないのがいい。筆者の場合、それがスバル車に対する信頼に直結している。積雪期の酸ヶ湯温泉周辺でレイバックを久々にドライブし、安心なドライブに直結するスバルのフレンドリーな安全技術を再確認した。

馬力や燃費と違って、ユーザーが抱く「安心感」は数値で表しにくい。しかし、スバルは真摯に安全・安心を追求し続けており、それが信頼度の高さにつながっているのだ。
スバル・レヴォーグ レイバックLimited EX
全長×全幅×全高:4770×1820×1570mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1600kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.4m
燃料タンク容量:63ℓ
エンジン
型式:CB18
形式:水平対向4気筒DOHCターボ
排気量:1795cc
ボア×ストローク:80.6mm×88.0mm
圧縮比:10.4
最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
燃料供給方式:筒内直接噴射
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:63L
トランスミッション:チェーン式CVT(リニアトロニックCVT)
WLTCモード燃費:13.6km/L
価格:399万3000円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…