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走行安定性や快適な乗り心地 セダン的な運転感覚も好印象

エルグランドはトヨタのアルファード/ヴェルファイアに相当する日産の最上級ミニバンだ。全長は4965㎜、全幅も1850㎜に達する。それでも過剰な威圧感を生じないのは、フロントグリルの形状が控えめで、全高もアルファード/ヴェルファイアに比べて120㎜低いからだ。販売面では不利だが、周囲の人やクルマに対して気を遣いたいドライバーに適する。
エクステリア




運転席に座ると、インパネの上端やサイドウインドウの位置が高くじる。囲まれ感が伴ってセダンに近い。良好な視界によって開放感のあるセレナとは異なり、エルグランドの世界観を表現している。注意したいのは2列目シートだ。売れ筋の7人乗りは2列目がセパレートタイプで、長いスライド機能を使って足元空間を広げたり、後方へリクライニングさせてリラックスできる。姿勢の自由度は大きいが、2列目のシートベルトは、セレナなどと違って背もたれから引き出す方式ではない。1列目と同様にピラー(柱)から引き出すため、2列目のスライド位置や着座姿勢によっては、セレナなどよりもシートベルトによる乗員のホールド性が低下する。エルグランドの発売は2010年だから、設計の古さが散見される。
乗降性



3列目は床と座面の間隔が足りず、座ると膝がもち上がる。それでも足元空間は相応に広い。身長170㎝の大人6名が乗車したとき、2/3列目の膝先空間をそれぞれ握りコブシふたつ少々に調節できる。3列目は格納方法もほかのミニバンとは異なるなり、背もたれを前側に倒す方式だ。格納操作は簡単だが、左右に跳ね上げたり、床下に収納する方式に比べると、荷室に段差ができる。格納された3列目によって荷室の床も高くなるから、2列目に乗員が座った状態では自転車などを積みにくい。
インストルメントパネル

パワーユニットは2.5ℓ直列4気筒と3.5ℓV型6気筒エンジンを用意する。ミニバンで人気の高いハイブリッドは選べない。売れ筋の2.5ℓは、発進してから3000rpm付近までの実用回転域で駆動力が物足りない。CVT(無段変速AT)の少し甲高いノイズも耳障りに感じる。峠道を走ったり車線変更を行なうと、ボディの重さを意識させるが、ミニバンでは全高が少し低く安定性に不満はない。乗り心地も突き上げ感が抑えられ、重厚とは言えないが、Lサイズミニバンとしての快適性を備える。
居住性



以上のようにエルグランドは、2列目のシートベルト、3列目の居住性と格納方法、2.5ℓエンジンの動力性能、ハイブリッドのe-POWERを選べないグレード構成などに不満がある。しかし威圧感を抑えたフロントマスクやボディスタイル、運転席に座ったときに感じるセダン的な世界観には、アルファードやヴェルファイアとは異なる魅力が伴う。販売店ではセレナに最上級の「e-POWER ルキシオン」を設定して、(設計の古くなった)エルグランドらの乗り替えを狙ったが、思いどおりにならなかった。
うれしい装備





月間販売台数 133台(24年5月~10月平均値)
現行型発表 10年8月(一部仕様変更 24年3月)
WLTCモード燃費 10.0 km/l ※「250」系のFF車

ラゲッジルーム



「エルグランドは日産の最上級ミニバンで、お客さまは一種のプライドをもって使われている」と言う。現行型の世界観とプライドを受け継いで、フルモデルチェンジを行なって欲しい。

