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■先代に続き3代目フェアレディZにもTバールーフ・モデル
1984(昭和59)年2月8日、日産自動車は前年にデビューした3代目「フェアレディZ(Z31型)」に、国産車唯一のTバールーフを採用したモデルを新設定した。Tバールーフは、当時米国のスポーツカーやスペシャリティカーなどで採用されて人気を獲得していたことから、米国市場を重視していたフェアレディZでも採用したのだ。

日米で衝撃的なデビューを飾った初代フェアレディZ
初代フェアレディZ(S30型)は、「トヨタ2000GT」に対抗する低価格なスポーツカーとして、1969年10月にデビュー。米国を中心とする海外市場がメインターゲットで、ロングノーズ&ショートデッキの美しいフォルムが大きな注目を集めた。

エンジンは、最高出力130ps/最大トルク17.5kgmを発揮するL20型 2.0L直6 SOHCおよびハイグレードZ432には160ps/18.0kgmのS20型 2.0L直6 DOHCエンジンが用意され、Z432の最高速度は210km/hを記録した。また、インテリアの評価も高く、コクピットには眼前に2つ、センターコンソールに3つのメーターを配置するという凝りようだった。スポーツカーらしい流麗なスタイリングとパワフルな走り、さらに標準グレードが93万円というリーズナブルな価格設定により、日米で大ヒットして歴史を飾るスポーツカーとなった。

続いて初めてのモデルチェンジで1978年に登場した2代目フェアレディZ(S130型)は、キープコンセプトで速さだけでなく快適性も重視したGTカーに変貌。厳しさを増した排ガス規制の関係でやや大人しい印象があったが、1981年に国産車初のTバールーフ・モデルが設定されて注目を集めた。
高性能V6ターボエンジン搭載した3代目にもTバールーフ設定

1983年にデビューした3代目(Z31型)は、排ガス規制やオイルショックを乗り切ったという時代背景もあり、高性能化とハイテク化を追求。セリカを意識した“較べることの無意味さを教えてあげよう”という自信のキャッチコピーで登場した。

先代と同じく2シーターと2by2(4人乗り)が設定され、初代から続くロングノーズ・ショートデッキの基本スタイルは踏襲しつつも、パラレルライジング式リトラクタブルヘッドライトやバンパーとエアダムスカートの一体化など、空力を意識したフォルムを採用。エンジンは、当時国産車最強の230psを発揮するVG30型 3.0L V6 SOHCターボとVG20型 2.0L V6 SOHCターボの2種、ちなみにV6エンジンのターボ搭載は日本初である。その走りは、国内では敵なし、ポルシェ911に迫るほどだった。

さらに3代目フェアレディZは、ユーザーからの強い要望に応えて、1984年2月のこの日に先代で好評だったTバールーフ・モデルが追加された。当時、国産車でTバールーフを採用していたのはフェアレディZのみで、4代目(Z32型)まで設定された。

車両価格は、2シーターで252.5万円(2.0L)/339.0万円(3.0L)。当時の大卒初任給は、13.5万円(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約430万円/578万円に相当する。Tバールーフ・モデルは標準モデルに対して、約20万円高額だった。
他にもあったTバールーフ・モデル
最近は、国産車で採用されることがないTバールーフだが、2000年以前にはフェアレディZ以外でも数は少ないが採用されていた。
・トヨタ「MR2」
国産乗用車初のミッドシップスポーツとして1984年に登場したMR2は、初代(後期)と2代目にTバールーフが採用された。剛性強化やガラス製ルーフということもあり、ベースモデルよりも30kg程度重くなってしまった。
・日産「エクサ」
「パルサーエクサ」の後継で2代目にあたる1986年にデビューした小型クーペ「エクサ」は、Tバールーフが全車標準装備だった。この全車Tバールーフ標準装備というのは日本車初だった。
・スズキ「X-90」
「エスクード」をベースに、1995年にデビューした2シーターの小型クロスオーバーSUV「X-90」もTバールーフを標準装備していた。個性的過ぎるスタイリングで実用性面に難があったので生産期間2年余りの短命で終わった。

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Tバールーフは、端的に言えば剛性を確保しながらオープンカーの爽快な感覚が楽しめるということだが、2025年現在の国産車では採用しているクルマはない。ボディ剛性の技術が向上したので、それならすっきりしたオーップンカーの方がいいのでは、またそもそもオープンカー市場が萎んでいるので、残念ながら今後もTバールーフの復活はなさそうだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。