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プロツールとして使い勝手◎ 4列8人乗りレイアウトも

本書を制作している真っただ中の2024年10月22日、トヨタは「24年の4月をもってグランエースの生産を終了」していたことを公表した。公表が実際の生産終了から半年ほど遅れたのは、ディーラーにある市中在庫などの状況を見てのことだろう。ちなみに、24年11月中旬にはトヨタの公式ウェブサイトにグランエースの車種情報が掲載されたままだったが、ついにそれも終了したようだ。
エクステリア




ご承知の向きも多いように、グランエースは、海外では「ハイエース」と呼ばれて、アジア、中国、豪州、中東、中南米などで販売される超グローバル商品である。日本向けのグランエースこそ生産終了したが、海外向けハイエースは現役バリバリだ。日本でいうハイエースはキャブオーバー型だが、グランエースは2.8ℓ4気筒ディーゼルを前席前に縦置きするFRレイアウトを採る。日本でのハイエース=200系は、世界的にはもはや日本専用に近い。トヨタが海外向けハイエースを名前を変えてまで日本で発売した理由は、メルセデスVクラスなどの海外銘柄に押されていた、送迎用ハイヤー需要に応えるためだった。開発責任者が発売当時、「日本という国の玄関口でもある東京・帝国ホテルのタクシー乗り場には、日本車が並んでいるべき」と語っていたのを思い出す。
乗降性



と言うわけで、全長5.3m、全幅と全高がほぼ2mというグランエースのボディサイズは、Vクラスよりさらに大きく、国内で手に入るミニバンでは最大。ただ、5.6mという最小回転半径はそのサイズを考えれば、望外の小回り性能であり、斜めに前傾したベルトラインのおかげで前輪の様子も手に取るようだし、サイドミラーで後輪もしっかり見えるので、取り回し性はバツグンだ。
インストルメントパネル

きるオートエアコン、8インチのコネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオなども標準装備。
巨大なサイズもあって、室内空間は広大というほかない。日本仕様はそこに豪華なエグゼクティブパワーシートを4脚並べた3列6人乗り「プレミアム」と、4列8人乗りの「G」が用意される。4列の「G」はセカンドがエグゼクティブパワーシート、サードがリラックスキャプテンシート、そして4列目がベンチシート……と前列ほど豪華になっているのが面白い。いずれにしても、4列というシートアレンジに、グランエースの商品意図が窺える。
居住性



リヤがリジッドとなる質実剛健なメカニズムもあり、静粛性や目地段差のような鋭い突き上げは、もはやミニバンというより高級サルーンと化した最新のアルファード/ヴェルファイアと比べるべくもない。ただ、全体にはゆったりした身のこなしで、さすがはプロフェッショナルユースを強く意識したクルマだけに、ステアリングやブレーキも正確なタッチだ。こうしてプロツールとして仕立てられたクルマは、我々のような好事家が乗っても心地良い。
うれしい装備





月間販売台数 8台(24年5月~10月平均値)
現行型発表 19年11月(一部改良 21年6月)
WLTCモード燃費 10.0 ㎞/ℓ

ラゲッジルーム



いずれにしても、19年11月の国内発売から約4年半でのグランエースの生産終了を「昨23年の販売台数が約700台にとどまっていたから」と、あたかも販売不振を理由とする論調もある。しかし、グランエースの販売計画はもともと月間600台で、数字を見れば販売不振と言いがたく、必要とするユーザーに行き渡り「役目を終えたから」というのが、本当の理由と思われる。

