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初売りで販売される工具福袋はお買い得?
正月の楽しみのひとつと言えば、年明けの初売りで販売される福袋だ。中身がわからない袋にさまざまな商品を詰めて販売する福袋は日本の伝統的な商習慣であり、その起源は江戸時代まで遡るとされる。当時の呉服商が顧客に日頃の感謝を伝えつつ、新年も変わらぬご愛顧を願ってお得な商品を詰め合わせた袋を販売したというのだ。
そんな福袋はデパートや家電量販店をはじめ、コーヒーチェーンやハンバーガーチェーン、ファミレス、コンビニのような利用機会の多いメジャーな店からプラモデルやラジコン、鉄道模型、釣具、パソコンなどのマニア向けの専門店、果ては貴金属や高級家具、自動車、不動産といった高額商品まで、さまざまな業種で販売される。
ときどき透明な袋に商品を入れ中身が見えるものや、あらかじめ袋の中身を公表しているものもあるがそんなものは邪道だ。福袋は中身が見えず、何が入っているかわからないから楽しいのだ。
店にとって福袋は不良在庫の処分という意味合いもなくはないから、基本は人気の商品+売れ残りの品の組み合わせになることが多いようだが、仮に高額商品やベストセラーの商品ばかりが詰まっていたとしても、求めているアイテムが入ってなければ客にとってはハズレとなる。すなわち、福袋は新年の運試し。中身が気にいるかどうかはすべて運任せ。ギャンブル的な要素が強いからこそ魅力のある商品とも言える。
もちろん、そのような福袋は工具店でも販売される。大手工具チェーンの「ファクトリーギア」をはじめ、横浜にある老舗工具店の「WORLD IMPORT TOOLS」(以下、W.I.T)などの工具専門店では初売りのタイミングでお得な福袋を用意する店が多いし、毎年1月の第2週の週末に開催される『東京オートサロン』の会場では、工具メーカーのTONEや工具チェーンの「アストロプロダクツ」で福袋を販売するのが恒例となっている。

住所:〒224-0007 横浜市都筑区荏田南1-17-4
電話:045-949-2451
営業時間:10:00~19:00 定休日
定休日:年中無休(年末年始を除く)
神奈川県横浜市にある老舗工具店。「間違いのない工具でメンテライフを支える」というコンセプトのもと、目利きのあるバイヤーが経験を活かしてセレクトした国内外の一流ブランド工具を豊富に揃えている。かゆいところに手が届くアイテムや、なかなか手に入らないレアな商品など、面白い商品も随時入荷しており、とくにドイツのプライヤーメーカー「KNIPEX (クニペックス)」の品揃えは国内でもトップクラスにある。

さて、気になるのはその中身だ。果たして工具の福袋はお買い得なのか? それともそうではないのか? ネット上には開封結果を紹介した動画やブログがいくつか挙がっているが、百聞は一見にしかずというヤツで、ここは実際に購入して判断を下すしかない。とは言うものの、筆者の財力には限りがあるのですべての工具店の服袋を買うことはできない。そこで今回はハズレなしと評判の「W.I.T」とオートサロン会場でTONEの福袋のふたつを購入することにした。

どちらも店頭販売される福袋の中からひとつを選んで自腹で購入した。だから『モーターファン.jp』で紹介するからと言って特別な便宜は図ってもらってはいないし、こちらも身銭を切っているので忖度なしでリポートできるというわけだ。果たしてその結果やいかに?
老舗「W.I.T」の1万5000円の工具福袋の中身は?
「W.I.T」を訪れたのは年明けの営業開始となる1月4日のことだった。同店が用意する福袋は1万5000円(税込1万6500円)、3万円(税込3万3000円)、5万円(税込5万5000円)、10万円(税込11万円)の4種類だ。朝10時のオープンと同時に店内に入った筆者のお目当ては3万円の福袋だ。ところが、店に並んでいる福袋は1万5000円のものだけ。それも10個くらいしか用意がない。どう言うことかとスタッフに尋ねると「発売は昨年12月25日の12時からですよ。ネット販売もしていたので他のコースは瞬殺で売り切れちゃいました」とのこと。おお、これは迂闊だった。ライターにあるまじき何というリサーチ不足。「福袋=初売り」との思い込みからお目当てのコースを買い逃してしまうとは……。

ま、残り物には福があると言うし、仕方がないので残っている1万5000円の福袋からひとつ選んで購入することにした。自宅に戻ってから早速開封の儀とする。その結果は以下の通りだ。

・OCP TOOLS 超薄型ギアラチェットレンチ 10mm GT9VL-10 定価2530円/販売価格1980円(税込)
・OCP TOOLS 超薄型ギアラチェットレンチ 12mm GT9VL-12 定価3080円/販売価格2420円(税込)
・OCP TOOLS 超薄型ギアラチェットレンチ 14mm GT9VL-14 定価3080円/販売価格2420円(税込)
・OCP TOOLS 超薄型ギアラチェットレンチ 17mm GT9VL-17 定価3630円/販売価格2860円(税込)
・OCP TOOLS 超薄型ギアラチェットレンチ 19mm GT9VL-19 定価3630円/販売価格2860円(税込)










・グリーンベル ハンドブラシ 定価550円(税込)
※1)販売価格は「W.I.T」での店頭&通販価格
※2)筆者調べ実勢価格
以上16点。合計金額は「W.I.T」での店頭&通販価格ベースで4万4886円相当だ。
ただし「NEIKOスクリューエクストラクター&レフトハンドドリルビットセット」と「ミミキットスリム小さめブラシ」「グリーンベル ハンドブラシ」の3つの商品は同店のオンラインショップのリストにはなかったので、他社通販サイトなどから価格を割り出した。
じつに福袋の販売価格の3倍以上の価値ある商品が入っていた。しかも、安価な真鍮ブラシとは言え「Snap-on」が入っているのはさすがは「W.I.T」! わざわざ消耗品の真鍮ブラシをSnap-onで買おうとは思わないので、これはコレクションとして使わずにしまっておくことにしよう。
「OCP TOOLS」は聞いたことがなかったの調べてみたところ、クルマ系YouTuberの『おちょさん』(ちなみにアイドル並みにカワイイ女の子)が「W.I.T」とのコラボで生まれた工具ブランドらしい。おそらくは台湾か中国の工具メーカーのOEM品のようだが品質はなかなか良さげ。「超薄型ギアラチェットレンチ」はどことなく「PROXXON(プロクソン)」の工具に似ているように感じられた。ひょっとすると同じ工場で作られたOEM製品されたものなのかもしれない。
この福袋は感激するほどではないが、まずまず納得できる内容といった印象だ。超小型ヘッドの「3/8dr 72ギアラチェットハンドル」は「W.I.T」ブランドで同じ製品がリリースされており、いずれは買おうと思っていたので嬉しいし、超薄型ギアラチェットレンチも狭い場所での作業に重宝しそうだ。
ただし、「NEIKOスクリューエクストラクター&レフトハンドドリルビットセット」はちょっと使い道がなさそうな工具ではある。「NEIKO」は日本ではあまり馴染みのないブランドだが、アメリカでは高品質な工具を比較的リーズナブルな価格で販売する中堅ブランドとして有名だ。とは言え、筆者は左利きではなく右利きだし、ドリル本体を持っていないので壊れたボルトを外す「スクリューエクストラクター」も当然使いようがない。
「W.I.Tヘルプハンズ」はハンダづけで重宝する道具だが、いかんせん筆者はさほど頻繁に配線作業をしないので出番は多くはなさそうだ。「W.I.Tマグネットパネル」は品質は良いのだが、現在使っているソケットホルダーで間に合っているので、こちらもそのまま死蔵されそうな雰囲気である。
悪くはないが良くもない。筆者がこの福袋に点数をつけるとすれば65点くらいか。「W.I.T」で販売される福袋はより高価なものになると「Wera (ヴェラ)」や「STAHLWILLE (スタビレー )」「HAZET (ハゼット )」「Snap-on」などの一流ブランドの製品が多数入っているようなので、来年……というか今年の年末には3万円の工具福袋を買ってみようと思う。まあ、どの金額の福袋を買うかはそのときの懐事情と相談にはなるとは思うが……。
『東京オートサロン』のTONEブースで販売された5000円の福袋の中身は?
次は『東京オートサロン2025』の会場で購入した「TONE」の工具福袋だ。「TONE」では中身を明らかにしたセット販売品をすべて福袋と称しているが、ここで紹介するのは中身が見えない税込5000円(30コース)の福袋である。

『東京オートサロン』の「TONE」ブースと言えば、販売するすべての商品が「狂っている」としか言いようがないほどの超特価激安プライスで販売される。となれば福袋も期待できると言うもの。実際、筆者は買わなかったが透明のビニール袋に入った1万3000円や7000円の福袋はかなりお得なものだったようだ。

スパナやメガネ、ソケットのセットを基本に、T字レンチやラチェット ハンドル、ドライバーなどをセットにしており、工具箱と足りない数点の工具を買えばフルセットが組めるほどだったと言う。

「オートサロン」の会場から戻った筆者は、さっそく袋を開けて中身を確認する。その結果は以下の通りである。








以上7点。メーカー希望小売価格は税別表記だったので税込にした合計金額は2万3125円。TONE製品の実売価格はメーカー希望小売価格の3~4割引となることが多いので、実質的には1万3875円~1万6187円相当となる。 すなわち、福袋の販売価格のおおよそ3倍の価値の商品が入っていたことになる。
ただし、筆者が購入した福袋はちょっとマニアックな構成のように思えた。「斜めニッパ」や「差替スタビードライバーセット」はともかくとして、「壊ネジプライヤー」はプラスネジなどの山が潰れてしまったときになめたネジを外すときに使用する特殊工具である。筆者はよく似た製品でエンジニアの「ネジザウルス」をすでに持っているが、いざという時に無いと困る工具ではあるが、さりとて日常的に使う工具ではない。同じような工具をいくつも持っていても仕方がないので、正直なところこれはあまり嬉しくはない。
「二輪車整備マルチツール」もこれまた常用工具ではなく、その名の通りバイクや自転車の車載向けだ。自宅で作業するならヘキサゴンレンチやドライバーを使った方が使い勝手が良く、機能を絞った専用の工具の方がマルチツールよりも作業性に優れるだろう。
「カラビナペットボトルホルダー」や「防水バッグ」が入っていたことを考えると、どうやらバイク愛好家を前提にしたセットなのかもしれない。携帯工具をコンパクトにまとめるツールバッグも、フルパニアのツアラーやアドベンチャーバイクで長期のツーリング旅行を楽しむライダーなら使いやすいアイテムだろう。
というわけで、バイクにも乗る筆者が点数をつけるとしたら70点だ。汎用性には欠けるきらいはあるものの刺さる人には刺さるセット内容だと言えるし、販売価格を考えれば十分お買い得といえるだろう。ただし、『東京オートサロン』のTONEブースは販売される商品のすべてが安い。その中でリスクをとってまで手を出すほどかと聞かれれば……。少なくとも筆者は来年は他の商品を選ぼうと思った。
2025年の結果は可もなく不可もなく……来年はより高額な福袋を買う!
以上の通り、今年は「W.I.T」の1万5000円の福袋とTONEの5000円の福袋を自腹で買って中身を検分してみた。福袋はひとつひとつ中身が異なっているわけで、今回紹介したものはあくまでも筆者が購入した福袋に入っていたものということはご留意いただきたい。ひょっとしたら、同じ金額の福袋を買った人の中には希望の商品ばかりが詰まった大アタリを引いて喜んでいる人がいるかもしれないし、反対に望まない品ばかりで落胆している人がいるかもしれない。ただ、あくまでも筆者の個人的な感想としては「ハズレでもないしアタリでもない。まあ、こんなものかな」といった感想だった。

一般に福袋は高額になればなるほどより良い商品が入っている可能性が高いとされる。現に同じ「W.I.T」の福袋でも3万円や5万円、10万円のコースを購入した人が、高価な一流ブランドの工具が多数入っていたことに歓喜の声を上げる様子がYouTube動画やブログなどで公開していた。次にチャンスがあれば、より高額な福袋を購入して中身のリポートすることを考えているので、どうか首を長くしてお待ちいただきたい。