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■体感性能にこだわった3代目レジェンド
1996(平成8)年2月14日、ホンダの最高級車「レジェンド」の3代目が発表(発売は2月16日)された。3代目は、バブル崩壊の影響もあり大きな仕様変更をせず、3.5Lに排気量を拡大した V6エンジンを搭載し、さらに最新の安全技術を追加して走りと安全性のレベルアップが実現された。

ホンダ初の3ナンバーフラッグシップのレジェンド誕生

ホンダ初となる3ナンバーでフラッグシップのレジェンドが誕生したのは1985年。当時、ホンダは中型車以上の開発に実績のあるローバー社(旧、英国のブリティッシュ・レイランド社)と業務提携を結んでおり、レジェンドの開発は共同で行なわれ、国内だけでなく英国や北米のアキュラブランドのフラッグシップとしても販売された。

高級セダンとしては当時珍しいFFレイアウトで、Cd値0.32の優れた空力性能を発揮する低いフロントノーズと広い室内空間が特徴の4ドアセダン。パワートレインは、レジェンド用に開発された2.0L&2.5L V6 SOHCエンジンと5速MTおよび4速ATの組み合わせ。
また1987年のマイナーチェンジでは、国産車として初めて運転席にSRSエアバッグシステムを装備し、1989年には世界初のFF車のTCL(トラクションコントロール)システムを導入するなど、当時最先端の安全装備を採用したことで大きな注目を集めた。
レジェンドは、それまでの高級セダンとは一味違うスポーティなスタイリングと軽快な走りで人気を獲得したが、当時爆発的に売れていたトヨタの「マークII」や日産自動車「シーマ」に代表される“ハイソカー”に較べると、販売的にはやや見劣りした。
ドライバーの期待に応える走りと高い安全性能を実現した3代目レジェンド

1990年には初のフルモデルチェンジが行なわれ、2代目へと進化。2代目のエンジンは、縦置きの3.2L V6 DOHCに一本化され、先代の横置きから縦置きエンジンのFFミッドシップレイアウトに変更された。

そして、1996年2月のこの日、モデルチェンジで3代目へと移行。3代目は、バブル崩壊という厳しい状況下だったため、クーペが廃止されセダンのみとなった。こだわりは、ドライバーがクルマに期待する感覚と実際の体感にズレがない体感性能の追求であり、そのため様々なシーンで気持ちよさや高級感を感じられるようなチューニングが施された。

エクステリアでは洗練さと質感に満ちたデザインが採用され、室内スペースの拡大や振動吸収タイプの高性能シートが装備されて高級車らしい乗り心地が実現された。先代のフロントミッドシップレイアウトを踏襲しながら、エンジンは排気量を3.5Lに拡大した新開発のV6 SOHCに変更。これにリニアでスムーズな走りを引き出す4速ATを組み合わせて、力強さよりもドライバーに応える気持ち良いと感じるリニアリティのある加速感が演出された。

また安全性能の強化も図られ、TCS(トラクションコントロール)やリア中央3点式シートベルトの標準装備。その後も前2席用ホンダi-SRSエアバッグおよび助手席ホンダi-サイドエアバッグの装着やブレーキアシスト機能の追加などトップレベルの安全性が確保された。

車両価格は、標準グレードで348万円に設定。発売された1996年はバブル景気が崩壊した後で、セダン全般で人気が低迷したためレジェンドの日本における販売は振るわなかった。
その後も進化し続けたレジェンドだが2021年に終焉
その後4代目レジェンドに搭載された3.5Lエンジンは、当時の280ps自主規制解禁の第1号として最高出力300psをマークして注目された。

5代目は、3モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID SH-AWD」を搭載、世界初となる歩行者への衝突回避を支援する「歩行者事故低減ステアリング」などを採用。そして、2021年には自動運転レベル3に適合した“Honda SENSING Elite(ホンダ・センシングエリート)”を搭載した「Hybrid EX・Honda SENSING Elite」を100台限定の1100万円で販売し、大きな話題を集めた。

ホンダのフラッグシップらしく常に最先端技術を採用してきたレジェンドだったが、販売は苦しんだ。結局、2021年に狭山工場の閉鎖に合わせてレジェンドは36年の歴史の幕を下ろしたのだ。
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バブル崩壊が起こった1990年代は、日本のクルマづくりに大きな変化をもたらし、高性能で贅沢な仕様だった1980年代のクルマの多くが消え去り、コストダウンを強いられた。3代目レジェンドも、2ドアクーペが廃止され4ドアセダンに1本化されるなど、コストダウンを意識しているなということが随所にうかがえるクルマだった。
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