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時間や場所に縛られずに旅ができるのがキャンピングカーの醍醐味
日本における車中泊ライフは、10年前と比べるとスタンダードになっている感がある。どこに車中泊をするかということで、社会問題化している部分もあるが、一時期よりもマナー向上と啓蒙が進んでいると肌で感じる。
一般的に「車中泊」と「オートキャンプ」は同意語のように思われているが、実は誤解だ。車中泊は単純に車内で寝食、もしくは寝るだけの行為。一方のオートキャンプは、クルマでキャンプ場などに行って、そこでタープやテントなどを広げて寝食を楽しむものだ。

クルマのカテゴリーに「キャンピングカー」というものがあるが、これはそのカテゴリーの通称のようなもので、実際にオートキャンプをする人の割合はキャンピングカー所有車の10%にも満たない(日本RV協会調べ)。40%強のユーザーが、所有の目的を「旅行」のためと答えているのである。つまり車中泊を目的に購入しているわけだ。
筆者も昨2024年、ついに念願のマイキャンピングカーを手に入れたが、実際に使ってみるとそのライフスタイルは一変する。もともと犬のためという目的があったが、犬連れに自由に旅ができるだけでなく、時間や場所に縛られることなく旅ができるのは、国内外問わずキャンピングカー、いわゆるRVの醍醐味だということに改めて気づかされた。

では、実際にはどんな場所で宿泊するのかと言えば、やはり安心できるのは「道の駅」だ。道の駅での車中泊の是非は議論になりがちだが、そういった世間の声もあってか、実際に利用している人々は謙虚だ。
日が落ちて暗くなり始めると、それまで利用していた観光目的のクルマと入れ替わるようにして車中泊派が三々五々集まってくる。車中泊をするドライバーは、できるだけ他の利用者に迷惑がかからないようにと気遣っている人が多いのである。ゆえに、暗くなってから来場し、早朝には多くが出発していく。
来場するクルマはキャンピングカーのみならず、ミニバンやワゴン、軽自動車など様々で、特別な車中泊の改造をしていないクルマも多い。そういったクルマは、窓をタオルやサンシェードなどで隠して、シートを倒して寝ていることが多い。
以前は一部のキャンピングカーユーザー、とくにレンタカー組が駐車場でサイドタープを出したり、チェア、テーブルを出してキャンプ…という光景もあったが、そういった不心得者を最近は見ない。どのカテゴリーのクルマの車中泊派も、周囲に迷惑がかからないようにひっそりと過ごしているのは、いかにも日本的だ。
ありがたいことに、そうとうな僻地にも道の駅はあり、とりあえずトイレと自販機を利用することができる。施設によっては風呂やシャワーがあり、それが車中泊派には何よりありがたいのである。

二番目に車中泊派が探すのが、24時間開放されている公園などの公共無料駐車場だ。これも地方にはかなり多く、探すのに手間がかからない(ただし、夜間の宿泊がNGの駐車場もあるので注意)。日本RV協会は車中泊専用施設である「RVパーク」等の利用を推進しているが、2025年1月8日現在で687カ所とまだそれほど多くはないのである。
しかもRVパークなどの車中泊施設は、既存の商業施設や民間の空き地、公共施設などの一部に併設というカタチで造ることが多いため、僻地にはほとんどない。そんな場所では道の駅や夜間宿泊OKの駐車場を探すしかないのである。なにせ道の駅は全国に1221カ所もあり、RVパークの約2倍にのぼる。
車中泊はルールとマナーを守って楽しもう
道の駅などでもマナーさえ守っていれば苦情を言われることはない。とはいえ、端からから「車中泊お断り」の道の駅もあるので、注意したい。
ちなみに巷で「車中泊」と「休憩」の違いが取り沙汰されることがあるが、道の駅を統括する国土交通省に聞いたところ、何時間以上駐めるのが車中泊だといった定義はないそうだ。ドライバーが疲れを取るための仮眠が休憩、と考えているそうで、それに時間の規定はないという。
あくまでも、車外にアイテムを出してくつろぐのは休憩ではないということらしい。昨今では、道の駅にRVパークを併設して、その区画ではサイドオーニングなどを出してもいいという施設もある。

さて車中泊の基本的なマナーは、「エンジンをかけっぱなしにしない」「ゴミを捨てない」「トイレを汚さない」「大量の水を消費しない」ということだ。どこでも言えることだが、施設管理者や利用者の不利益になることをしないというのは、当然のことだ。
逆にRVパークなどの車中泊施設であれば、電力は使えるし、トイレや水場も駐車スペースの近くにあって自由に使える。施設によっては、ゴミの処理も引き受けてくれるから便利だ(有料の場合も)。
筆者の場合はRVパークでも、トイレだけは借りるが、水はペットボトルや湧き水を携行し、缶とペットボトル以外のゴミはすべて持ち帰って自宅で処理する。このように地元に少しでも負担をかけないようにすることで、キャンピングカー業界の末席にいる身として、少しでも世間の車中泊旅に対するイメージを変えたいという想いがあるからだ。
過酷な暑さはどうにもならないが、寒さだったら対処できる
さて、1年を通じて約1万5000㎞の車中泊旅を楽しんだが、旬の季節は冬だということに気がついた。昨今は春と秋という季節がほぼなく、夏と冬が交互に来る感じだ。もちろん、春秋一瞬の快適な期間はあるのだが、それを除けば車中泊は冬に限る。

夏には車中泊はしない…という人が世間には多いのだが、それもそのはず、昨今の暑さは厳しすぎる。筆者は夏にエコフロー社のポータブルクーラーを購入したが、正直なところ気休めであった。外部電力設備がある場所なら朝まで使えるが、専用バッテリーと1000Wのポータブル電源を併用しても、6時間ほどの使用で電力ロストとなった。
昨今は夜間でも30℃を下らないという日が珍しくなく、窓を開けたり、扇風機を使っても、熱中症になりかねないという状況がある。

それに対して、冬は対処方法が多い。まず基本的な寒さ対策としては、窓の遮熱である。冷えは車体を伝わって下から上がってくることもあるが、多くは窓から入ってくる。車種専用のサンシェードを貼るだけで、冬の寒さをグッと抑えることができるのだ。これに厚手の布団や羽毛のシェラフなどを併用すれば、かなり快適に寝ることができる。
ユーザーの中には、石油ストーブを持ち込む人がいるが、これは危険だ。車両火災や一酸化炭素中毒といった危険性をはらんでいるからだ。
安全な暖房であれば、電気毛布やホットカーペット、電気ヒーターあたりだろう。ただし、これをクルマの補機用バッテリーで使用するとバッテリー上がりをする恐れがあるので、やはり車中泊派には1000W以上のポータブル電源の携行をおすすめしたい。

ポータブル電源は実に便利なアイテムで、様々な電化製品の使用が可能になる。スマホやタブレットの充電はもちろんのこと、電子レンジや車載用冷蔵庫、ドライヤー、掃除機なども動かせる。持っておけば、災害時にも役立つので無駄になることはないはずだ。
自分のクルマには105Ahのディープサイクル・サブバッテリーが1個載っているが、これとポタ電があれば、まず朝まで電力不足になることはない。
ちなみに冬の車中泊用に、クルマのガソリンを使うパーキングヒーターを装備したが、点けると暑すぎるというのが個人的な感想。筆者は設定温度を13℃にして寝るが、外気温が−5℃程度なら、窓はカーテンのみでも寒さを感じることがないほだ。逆にシェードを貼って、ヒーターなしで寝てもさほど寒さを感じなかった。ヒーターのありがたみを感じるのは、布団を被っていない時だった気がする。
冬の車中泊は工夫すれば快適で楽しい。積雪やフロントガラスの曇り・凍結には注意
ちなみに、冬の車中泊は夏とは異なる点に留意する必要がある。それは「曇り」と「積雪」だ。2025冬シーズンも、日本海側で災害級の大雪が降っているが、寝るまでは周囲に雪などなかったのに、起きたらクルマが埋まっていた…ということは降雪地帯では珍しくない。
降雪地帯に向かう場合は、除雪スコップ、長靴、防水手袋を必ず携行しよう。そして起きたらすごい雪だった…という場合は、まずエンジンを始動する前に車両周囲の除雪をしよう。周囲に積雪があるままエンジンをかけると、排ガスの逃げ場がないために車内にそれが入ってくる。それで一酸化炭素中毒になったというケースが少なくないのだ。

まず、進行方向の進路確保も含めて車体周囲を念入りに除雪し、終わったら車両に載った雪を下ろしてやる。フロントガラスやミラー、ヘッドライトの凍結もスクレパーでよく落としておきたい。
ちなみに冬場に怖いのがフロントガラスの凍結や曇りで、これがあるとカメラやレーダーセンサーが利かず、車両の安全装備が働かない。一度、安全装備がオフになると、再始動するまで時間がかかるので、出発からしばらくは運転に十分な注意が必要だ。
というわけで、十分な準備をしていけば、冬の車中泊は実に快適で楽しい。観光地もそこまで混雑していないし、車内での食料管理もたやすいなど、夏よりも遙かにラクなのである。
