スズキ・フロンクス 絶好調の理由はコスパだけじゃない? 乗ってわかった美点とは?

競争激しいコンパクトSUVのカテゴリーにブランニューモデルとして参入したスズキ・フロンクス。全長4m以下で全幅1765mm、全高1550mmのスタイリッシュな外観と高いコストパフォーマンスでたちまち人気モデルにのし上がった。実際、生活の足として使ったらどうなのか? 数日お借りして試してみた。

日本専用に4WDモデルを開発したスズキの本気

スズキ・フロンクス(4WD 6AT)車両価格:273万9000円

スズキ・フロンクスの販売が好調だ。2024年10月デビュー以来、月販販売目標1000台に対して、10月2137台、11月1713台、12月1417台、2025年1月が1388台と推移している。日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025の10ベストカーにも選出されている。

発表されたばかりのジムニーノマド(月販販売目標1200台)も、わずか数日で5万台(!)を超える受注を獲得している。スズキ、絶好調なのだ。
 

ボディカラーはスプレンディッドシルバーパールメタリック/ブラックの2トーン

フロンクスもジムニーノマドもインド生産だ(工場は別だが)。両モデルとも好評なのだから、もっと生産してインドから輸入すればいいのに、と思うが、そうもいかない事情がある。どちらもインドやその他のマーケットで好調で、日本への割当分を簡単には増やせないし、両モデルのPDI(Pre-Delivery Inspection)のキャパシティにも限りがあるからだ。

といった事情はさておき、フロンクスが売れているには理由がありそうだ。それを探るために、数日間お借りして生活をともにすることにした。

フロンクスの販売台数は2025年1月が1388台、2024年10月が2137台、11月が1713台、12月が1417台。月販販売目標が1000台

借り出したクルマは、6ATの4WDモデル(車両価格273万9000円。FFモデルは254万1000円)だ。フロンクスはモノグレードだから、選ぶのは駆動方式とボディカラーだけ。メーカーオプションもカラーリングに関するものくらいしかない。じつにシンプル。迷いようがない。ちなみに、4WD仕様は日本専用に開発したもので、本国インドにはない。ここにもスズキの気合いが感じられる。

独特のプロポーションとマイルドハイブリッド

全長×全幅×全高:3995mm×1765mm×1550mm ホイールベース:2520mm 最小回転半径:4.8m
トレッド F1520mm/R1535mm 最低地上高170mm
車両重量:1130kg 前軸軸重690kg 後軸軸重440kg

フロンクスのプロポーションは、ちょっと独特だ。全長×全幅×全高:3995mm×1765mm×1550mmで、全長に対して全幅が広い。そして全高は1550mmとSUVとしては低め。もちろん、機械式駐車場にも楽々入るサイズだ。そのプロポーションがフロンクスをスタイリッシュに見せている。全長4mに満たないコンパクトさなのに、存在感が高いのだ。それでいて、最小回転半径は4.8mと小回り性もいい。

搭載するエンジンは、K15C型1.5L直列4気筒DOHC。ロングストロークの自然吸気型エンジンで最高出力は99ps(73kW)/最大トルクは134Nm。大してパワフルではない。これにスズキ得意のマイルドハイブリッドを組み合わせている。

エンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:K15C 排気量:1460cc ボア×ストローク:74.0mm×84.9mm 圧縮比:11.9 最高出力:99ps(73kW)/6000rpm 最大トルク:134Nm/4400rpm 燃料:無鉛レギュラー 燃料タンク:37L
WA06A型交流同期モーター 最高出力:2.3kW/800-1500rpm 最大トルク:60Nm/100rpm

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「スズキ・フロンクス 絶好調の理由はコスパだけじゃない? 乗ってわかった美点とは?」の2枚めの画像
パワーステアリングはJTEKTインド製

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パワーステアリングはJTEKTインド製

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パワーステアリングはJTEKTインド製

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特段パワフルな感じもない代わりに、力不足でがっかりすることもない。ちょうどいい感じなのだ。トランスミッションは、CVTではなくアイシン製6速ATである。

エンジンの始動ボタンを押すと、目の前にコンバイナー式ヘッドアップディスプレイ(HUD)が立ち上がる。そうなのだ、フロンクスはHUDも標準装備しているのだ。

インテリアの質感はクラス平均だが、装備は充実している。
装備の充実ぶりは、ここからもわかる。
トランスミッションは、アイシン製6速AT。CVTではない。
パーキングブレーキは電気式。フロントはシートヒーターを装備する。寒い朝にはありがたかった。

同じインド生産のホンダWR-V(FFモデルのみ。Zグレードで234万9600円)と比較されがちだが、サイズ的にはダイハツ・ロッキー(全長×全幅×全高:3995mm×1695mm×1620mm)の方が近い。ちなみにロッキーの4WDモデルは、プレミアムGで243万2100円だ。

試乗期間は大寒波が日本列島を覆っていた。そんなとき、シートヒーターを装備しているのはうれしい。温度調節はできない(ON/OFFだけ)が、あるとないとでは大違いだ。全車速追従のACCやミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせたデュアルセンサーブレーキサポートⅡも安心安全に繋がる。

インパネを含めたインテリアの質感は値段相応だが、装備面では「付いていてほしい装備が全部付いてる」状態だ。これはコストパフォーマンスが高い。

タイヤサイズは195/60R16 指定空気圧はF 250kPa/R220kPa
タイヤはグッドイヤーASSURANCE TRIPLEMAX2
Rトーションビーム式
Fマクファーソンストラット式
日本仕様向けにビスカスカップリング式の4WDを設定した。

モード燃費以上の燃費性能

メーターは220km/hまで刻まれている。燃費はWLTCモードを上回る18.4km/Lをマークした。

今回、市街地、高速道路を含めて240kmほど走行した。トータルの燃費は18.4km/Lだった。WLTCモード燃費(17.8km/L)を超える数値となった(車載の燃費計による)。特段省エネ走行をしたわけではなく、ごくごく普通にドライブしてこの燃費はなかなか優れている。マイルドハイブリッドだからといって、「モーターが押してくれている感」はほとんどなかったし、メーター内にパワートレーンの作動状態を表示してもモーター(ISG=インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)が活躍している様子は見られなかったのだが、燃費を見ると大きく貢献しているのだろう。

数少ない不満……は、身長175cmのドライバーの視点では、フロント左の上下の視界は少し狭いことだった。

燃料タンク容量は37Lだから680km程度の航続距離は期待できる。1タンクで500kmは燃料残を気にせずに乗れるのはコンパクトSUVとしてうれしいポイントだ。

スズキ・フロンクスが売れている理由は、スタイル、走行性能、そして装備の充実ぶりが購入層にとって「お値段以上」の価値があると判断されているからだろう。数日間を一緒に過ごして、「こいつ、いい相棒だな」と思えたし、気軽に「さぁ、どこか、行こうか!」という気持ちにさせてくれる存在であることがよくわかった。

まったく新しいモデル名を浸透させて、さらにきちんとセールスに結びつけるのはじつは至難の業だ。半年前、日本中のほとんど誰も知らなかった「フロンクスFRONX」という名前を、いまや多くの人が知っている。スズキの絶好調ぶりに商品力の裏付けが確かにある。願わくば、フロンクスもジムニーノマドも増産して楽しみに待っている人の納期が少しでも短くなるといいのだが……。

スズキ・フロンクス(4WD 6AT)
全長×全幅×全高:3995mm×1765mm×1550mm
ホイールベース:2520mm
車重:1130kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rトーションビーム式
駆動方式:AWD
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:K15C
排気量:1460cc
ボア×ストローク:74.0mm×84.9mm
圧縮比:11.9
最高出力:99ps(73kW)/6000rpm
最大トルク:134Nm/4400rpm
燃料:無鉛レギュラー
燃料タンク:37L
WA06A型交流同期モーター
最高出力:2.3kW/800-1500rpm
最大トルク:60Nm/100rpm
トランスミッション:6速AT
WLTCモード燃費:17.8km/L
市街地モード14.4km/L
郊外モード17.9km/L
高速道路モード19.8km/L

車両価格:273万9000円

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…