着実に進化している! 363万円〜のゴルフ(ヴァリアント) 8.5世代の走りと使い勝手をチェック

8.5世代になったフォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
フォルクスワーゲンを代表するゴルフは、ハッチバック、ヴァリアントを設定するCセグメントモデル。初めての輸入車としてはもちろん、多くのクルマを乗り継いできたツウも魅了する同セグメントのベンチマークだ。現行型の8代目からビッグマイナーチェンジで8.5代目に。その進化を探った。

TEXT&PHOTO:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)

1.5L 直4ターボに統一された「ゴルフ8.5」のパワートレーン

シャープですっきりした顔つきに変身

今回のマイナーチェンジでは、内外装の刷新に加えて、パワートレーンにも手が入れられている。大幅改良前のベーシックグレードの「Active」には 、999cc直列3気筒ターボの「1.0eTSI」が搭載されていたが、全車1.5L(1497cc)の4気筒に統一された。さらに、この4気筒は最新世代の「EA211 evo2」エンジンにアップデートされている。なお、3気筒だった「Active」は、排気量と気筒数の拡大に伴い出力も4kW(5.4PS)、最大トルクも20Nm向上したことになる。

今回、試乗したのはヴァリアントの「eTSI Style」で、その1.5L 直列4気筒ガソリンターボを搭載。従来どおり、48Vマイルドハイブリッドが組み合わされている。改良前の「1.0eTSI」とヴァリアントの組み合わせも試乗したことがあり、1360kgの車両重量でも軽快な走りが印象的だった。全車4気筒になったことでエンジン稼働時の音・振動が大幅に小さくなり、エンジンがメインとなる48Vマイルドハイブリッドでも一級品の静粛性を享受できる。

なお、従来から気筒休止システムのACT(アクティブシリンダーマネジメント)が搭載されていたが、「ACT+(プラス)」にアップデート。作動する1番、4番ピストンは、2気筒に最適化されたカムプロフィールに切り替わり、気筒休止による燃費向上とトルクの両立に寄与するという。また、48Vマイルドハイブリッドのスターターオルタネーターは、従来の最大12kW(16PS)から最大14kW(19PS)に向上。発進時のトルク供給やエコ・コースティング機能による燃費向上に寄与している。ヴァリアントの「eTSI Style」は、従来のWLTCモード17km/Lから18.3km/Lに向上していて、実燃費での利点もあるだろう。

フォルクスワーゲン・ゴルフ・ヴァリアントのリヤまわり

48Vマイルドハイブリッドのモーターアシストやコースティング機能も進化

主力グレードになりそうな「eTSI Style」と「eTSI R-Line」は、110kW(150PS)/250Nmと、1.0Lから1.5Lに格上げされた「eTSI Active」の85kW(116PS)/220Nmよりも出力、トルクともに上回る。「eTSI Style」は、エンジン出力とトルクに加えて、存在感を増したモーターアシストにより中低速域での力強さがあり、トルク変動を抑え、さらにターボラグを打ち消すようなモーターの加勢によりスムーズさが際立っている。デュアルクラッチトランスミッションのDSGは、緩やかな下り坂から発進する際に、クラッチがつながるわずかの間にクルマが少し後退したり、CVTやトルコンATのようなスムーズな発進とまではいかないものの、ほとんど違和感はなく、変速時のダイレクト感を味わえる美点がある。

1.5Lガソリンターボと48Vマイルドハイブリッドを組み合わせる「eTSI」

エコ・コースティング機能も十分にスムーズだが、アクセルペダルを完全に離すと、当然ながら滑走状態になるため、スーッと前に進み燃費を稼いでいるのが分かる。MT車からの乗り替えだと違和感を抱くかもしれないが、コースティング機能としてはその作動感の違和感を抑え込んでいる方だろう。

乗り心地は、フォルクスワーゲンらしく低速域では引き締まっているものの、ハンドリングとのバランスに優れ、フラットライドといえる仕上がりだ。リヤに大開口部を持つヴァリアントでも剛性感はすこぶる高く、8世代目の高い完成度を再確認できた。「8.0」世代の16インチ装着車は接地感が少し希薄で、パワステも軽く感じられたが、少なくても17インチを履く「eTSI Style」では違和感も抱かせなかった。

大画面センターディスプレイで操作性、先進性も高まったインテリア

操作性では、10.4インチもしくは12.9インチの大画面センターディスプレイがトピックスで、視認性や先進性が大幅に向上するとともに、アプリ(機能)がズラリと並んだ画面での扱いやすさも増している。タッチディスプレイのレスポンスも良好で、押し間違えることもなかった。フォルクスワーゲン独自の純正ナビは、ナビ画面を押すと検索画面が最初に映し出され、検索の操作性も慣れが必要だ。ナビ画面の状態で現在地を表示する際は、ナビ画面から現在地を押す必要があるのが少し面倒。ただし、ホームボタンを押すと、分割された地図画面が表示される。

大画面センターディスプレイの採用で操作性、視認性を向上

また、エアコンの操作性は8.5世代になり改善されている。センターディスプレイ下にバックライト付のタッチスライダーバーが配置され、エアコンの操作や音量設定の操作性が向上するとともに、「IDA(アイダ)ボイスアシスタント」の採用により、話しかけることでエアコンやインフォテイメントシステムが操作できる。エアコンの設定などであればかなりの高精度で応えてくれる。

タッチディスプレイのレスポンスも上々
音声操作にも対応した

ハッチバック、ヴァリアントとともにキャビンやラゲッジの広さに変わりはなく、ヴァリアントは611L〜1642Lという広大な荷室容量を誇っている。日本製ステーションワゴンは、SUBARUレヴォーグとトヨタ・カローラツーリングの2台を残すのみとなっているが、ジャストサイズといえるCセグメントであり、価格帯も363万9000円〜485万6000円(Rをのぞく)と、走りの良さや装備を考えるとバーゲンともいえる値付けで、その存在感はさらに高まりそうだ。

ヴァリアントは611L〜1642Lという広大な荷室容量を確保

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著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…