装備を厳選して低価格化を実現したカジュアル系「フィアット・ドブロ」【最新ミニバン 車種別解説 FIAT DOBLÒ】

輸入車ミニバンを代表する兄弟車たちの中でもカジュアルな路線の「フィアット・ドブロ」。日本車ミニバンと同等の価格帯ながら使いやすさと細かな配慮が行き届き、シンプルな誠実さが魅力だ。ツール感の強い個性的なフロントフェイスに十分に力強い走行性能と静粛性は街乗りにもアウトドアにも大いに活躍できる実力あるクルマと言える。
REPORT:竹岡 圭(本文)/遠藤正賢(写真解説) PHOTO:中野幸次 MODEL:平岡明純

内装は使いやすく収納も豊富 シート配置や積載能力も特筆

数年前まで欧州スライドドアバンのカテゴリーはルノー・カングーの独壇場だったが、シトロエン・ベルランゴ、プジョー・リフター、そしてフィアット・ドブロが登場して、盛り上がりを見せている。すべて商用車ベースの乗用車モデルとなるが、フィアット・ドブロは2列シート5名乗りと、3列シート7名乗りの「ドブロ マキシ」のラインナップだ。

エクステリア

無塗装樹脂の範囲が広いバンパーとフラットな形状のランプ・グリルをもつフロントマスクはドブロならでは。側面とリヤまわりは、バンパーモール加飾の有無とエンブレムを除けばシトロエン・ベルランゴと同様だ。手動式のリヤゲートは地上高1980㎜まで開くものの、地上高1720㎜まで垂れ下がるストラップが備わっており、小柄な人でも開閉がしやすい。
前後バンパーに加え前後ドア下部の大型モール「エアバンプ」も無塗装かつフラットな形状でプロのツール感を強調。リヤゲートはガラスのみの開閉もできる。最小回転半径は5.6m。

シトロエン・ベルランゴ、プジョー・リフターとは兄弟車種だが、ドブロのテーマはカジュアルということで、手が届きやすい価格設定となっている。しかし、なかなかどうして装備はしっかりと揃えられている。確かに兄弟たちと比べると、ユニーク装備や面白味には欠けるかもしれないが、いわゆる使いやすい装備はしっかりと奢られているのだ。

乗降性

まず、運転席まわりにはこれでもかというくらいポケットエリアが用意されており、仮にこれがお部屋紹介だったら、しっかり収納スペースが用意されていますねと、言われること間違いなしである。さらに、オーバーヘッドコンソールには、荷物の置き忘れを防ぐための覗き穴が用意されるなど、細かい気配りも利いている。ひとつひとつのポケットスペースを含め、ドアノブなども大きめにつくられているので、例えばグローブなどを嵌めていてもすんなり作業ができそうなのも美点である。他に運転席まわりでは、シフトセレクターが円盤状なのが面白いところだ。見た目にもかわいらしいが、慣れてしまえば操作性も悪くない。パドルシフトもついているので、まったく問題ないと言っていいだろう。

インストルメントパネル

黒一色のインパネとハイセンターコンソールで囲まれた運転席・助手席は小物入れも充実しておりプロのツール感満点。左右独立調整式オートエアコンは全車に標準装備される。

続いて、2列目座席。3席独立型で、着座スタイル的には背筋をきっちり伸ばして座るようなタイプとなるが、ステッチ入りのデニム生地のような見た目はキュートだし、前席背もたれにはテーブルも用意されるほか、電源&エアコン吹き出し口もきちんとあったりして、しっかり過ごせる仕様となっている。そして、ラゲッジスペースはかなり広い。バックゲートは、ガラスハッチだけでも開閉できるタイプなので、狭い場所でもアクセス可能だ。トノボードも折り畳み式なので、ガラスハッチのみの開閉でも荷物は取れるし、またトノボードは上下2段階に設置することができるので、荷物の量や質に合わせて設定できてフレキシブル性も高い。

居住性

さて、7人乗りの「マキシ」はシート配列がユニーク。2-3-2の7人乗りなのだ。つまり3列目シートのセンターが空いているので、バックゲート側からもアクセスできてしまうのが面白い。また、2列目は独立型なのでセンターのみを倒せば、真ん中に長尺物を積めるほか、助手席も前倒しできるので左側を全部倒せば相当に長いものを運ぶことだってできる。とにかく大容量なのだ。

うれしい装備

標準装備のオーバーヘッドコンソールはティッシュ箱も余裕で飲み込むゆとりのサイズ。アシストグリップが一体となっており、小柄な乗員でも乗り降りしやすいよう配慮されているのも見逃せない。
月間販売台数      NO DATA
現行型発表       23年5月
WLTCモード燃費     18.1 ㎞/ℓ

ラゲッジルーム

そしてパワートレインは、両者ともに1.5ℓディーゼルターボエンジンに8速ATの組み合わせとなるが、トルクが300Nmとしっかり出ているので力不足の感じはなく、高速クルージングも問題ない。静粛性的にも問題ないので、ファミリーや仲間とワイワイロングドライブというのも楽しめるレベル。最低地上高も170㎜あるので、キャンプ場などでも大活躍間違いナシだろう。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.164「2025年 最新ミニバンのすべて」の再構成です。

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