街乗りにベストサイズの3列7シーター「トヨタ・シエンタ」【最新ミニバン 車種別解説 TOYOTA SIENTA】

Mサイズミニバン並みの定員のコンパクトファミリーカーとして抜群の人気を誇る「トヨタ・シエンタ」。実は趣味のクルマとしての底力も注目を集めている。ツールが必要なアウトドアやスポーツなどにフラットになる広い荷室は大いに満足。燃費の良さや先進安全装備を含めてトータルバランスの優れた良車と言える。
REPORT:安藤 眞(本文)/小林秀雄(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:あらた唯

3列目格納時は荷室広々 低燃費なハイブリッドも好感

シエンタという名前はスペイン語の7(Siete)に由来。「こんな小さなボディだけど7人乗れるんだぞ」という思いを込めて付けられた。だからすべてのグレードに、3列シートの7人乗りを用意する。

エクステリア

最大のライバルであるホンダ・フリードと比べると、全長が5㎜短いだけで、全幅は同じ。それでも最小回転半径はフリードの5.2mに対してシエンタは5.0mと、驚くほどの小回り性能を備えている。全高はシエンタの方が低いため、縦横比の関係からパッと見はシエンタの方がワイド(と言うか偏平)に見える。リヤゲートを開けたときの地上高も低く、手が届きやすい。
「Z 」系はBi – Be amLED ヘッドランプとLEDライン発光テールランプを備え、他グレードとは違った見た目を実現。撮影車はオプションのアルミホイールを装着している。最小回転半径は5.0m。

その3列目シートの折り畳み方が秀逸。ミニバンの多くは、3列目シートは左右に跳ね上げて格納する方式だが、シエンタは2列目シートを持ち上げると、その下にスッポリと仕舞うことができる。この機構により3列目格納時でもラゲッジルームは制約されず、広々使える。反面、3列目を格納/展開する際に、2列目を動かす手間が掛かるし、2列目にチャイルドシートを付けてしまうと、その付け外しをする手間が上乗せされる。ここがシエンタ7人乗りの要注意ポイントだ。

乗降性

だから3列目は頻繁に出し入れするのではなく、普段は格納しておいて、息子家族が帰省した際に展開して使うとか、友人を駅まで送迎するとか、6〜7人で食事に行くとかいったシーンで使用すると良い。CMのイメージでは子育てファミリー向けのように見えるシエンタだが、2列シートの5人乗りは大人の趣味グルマにピッタリ(これも全グレードで選べる)。2列目席は背もたれを前に倒すと、7人乗りで3列目の格納に使っていたスペースにダイブダウンするので、ラゲッジフロアは完全にフラットになる。床の前後長も2mを超えるため、車中泊もしやすい。荷室高は1mを超えるため、ロードバイクやMTBなども車輪を付けたまま搭載できるなど、アウトドア・アクティビティのシーンで便利に使えるのだ。

インストルメントパネル

「Z」系はファブリック巻きのインパネでカジュアルな空間を演出。一部を除き8インチディスプレイオーディオが標準装備で、写真の大画面10.5インチ仕様は「Z 」系と「G 」系にオプション設定。

シエンタに用意されるパワーユニットは、1.5ℓ3気筒の直噴ガソリンエンジンと、それをポート噴射化してTHS―Ⅱシステムと組み合わせたハイブリッドユニットを用意する。前者のトランスミッションには、〝ダイレクトシフトCVT〞を採用。発進時には伝達ロスの少ないギヤトレーンを使用するため、小気味の良い発進加速が味わえる。直噴エンジンは低速トルクがしっかり出ている反面、爆発間隔が4気筒より長く、気筒当たりの容積も同じ排気量の4気筒より大きいため、燃焼音は低周波寄り。これを「力強い」と感じるか「うるさい」と感じるかで、このクルマの評価は変わってくる。とは言え急坂の登坂や高速の合流、追い越し加速でもなければ、感じるシーンはないのだが。

居住性

特筆すべきは、ハイブリッド仕様車の低燃費ぶり。ユーザー参加型燃費登録サイトでは、20㎞/ℓ超えの報告が当たり前になっている。ドライブフィールは、ズバリ〝日本の市街地ベスト〞。ハンドルの操作力は比較的軽く、混雑した街中や狭い路地、駐車操作も楽々。乗り心地はソフトで、路面店に出入りする際、横断歩道の段差なども快適に乗り越えられる。ただし、低速域ではタイヤの硬さやサスペンションの初動の渋さ、路面変化によるロードノイズの変化が大きめに感じられることもある。

うれしい装備

駐車をアシストするアドバンストパークを「ハイブリッドZ」にオプション設定。前進と後退の切り替え、アクセルとブレーキの操作も全自動だ。画面で駐車位置を決定する操作もわかりやすい。
月間販売台数      9576台(24年5月~10月平均値)
現行型発表       22年8月(一部改良 24年5月)
WLTCモード燃費     28.8 ㎞/ℓ※「HYBRID X」の5人乗り/FF車 

ラゲッジルーム

またダウンサイザーには、操舵感が頼りなく思えることもあるかも。サスペンションにお金を掛けて、クロスオーバーSUV風モデルを追加すれば、魅力はさらに高まると思う。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.164「2025年 最新ミニバンのすべて」の再構成です。

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