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2025年3月の第3土曜日に、それまでの『No.39 ホンダ ステップワゴン』に代わって『トミカ』に加わったのが『No.39 凍結防止剤散布車 NWS60BC5』です。凍結防止剤散布車とは、冬季の道路凍結を防ぐために塩化ナトリウムや塩化カルシウムなどの凍結防止剤を散布する特殊車両です。積雪地域の道路管理に不可欠な車両であり、特に橋梁や急勾配区間、高速道路の料金所付近など、路面凍結が発生しやすい場所で活躍します。ベース車両としては2tクラスから大型トラックが用いられることが一般的で、4WD仕様も多く採用されています。除雪機能を兼ね備えたモデルもあり、今回の『トミカ』で再現されたNICHIJOのNWS60BC5のようにフロントに除雪ブレードを装備する車両も存在します。


凍結防止剤散布装置としては、薬剤を貯蔵するホッパー、液体薬剤を噴霧するスプレーシステム、固形薬剤を均等に散布するスピナーなどが備わっています。ホッパーは一般的にステンレス製やFRP製で防錆対策が施されており、スプレーシステムは塩化カルシウム溶液を路面に噴射することで即効性のある融雪効果を発揮します。また、スピナーはホッパー下部に設置されており、固形薬剤を遠心力で広範囲に散布する仕組みになっています。制御システムにはGPS連動の自動散布機能が搭載されることもあり、路面温度センサーと連携して適切な量を自動調整するほか、散布ログを記録し管理業務の効率化にも寄与します。手動と自動の切替機能を備え、運転席のコントローラーで散布量や範囲を調整できる車両も多く、走行速度に応じた散布制御を行なうモデルも存在します。
凍結防止剤として使用される薬剤には固形タイプと液体タイプがあり、固形タイプでは最も一般的な塩化ナトリウムが-10℃程度までの融雪効果を持ち、吸湿性が高く即効性に優れる塩化カルシウムは-30℃近くまで効果を発揮します。液体タイプでは塩化ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液があり、塩化ナトリウム水溶液は即効性があるものの効果が固形に比べて低く、塩化カルシウム水溶液は路面密着性が高く持続効果が長いという特徴があります。さらに、環境対応型薬剤として酢酸カリウムが使用されることもあり、環境負荷が低いため空港の滑走路などで用いられますが、高価なため一般道路では限定的な使用にとどまります。

凍結防止剤散布車の運用方法としては、降雪前に液体薬剤を散布して路面に膜を作ることで氷結を防ぐ事前散布、降雪後に塩化ナトリウムを散布して氷点を下げる積雪時散布、橋梁や急カーブ、交差点など特に危険な箇所に重点的に撒く緊急散布などがあります。一方で、薬剤の使用による腐食問題や環境影響が課題となっており、特に塩分による車両やインフラの腐食は深刻で、橋梁やガードレールの劣化、車両のサビの発生を防ぐために散布後の洗浄が重要とされています。また、塩化ナトリウムは土壌や水質汚染の原因となるため、過剰使用を防ぐ対策が求められています。他方、塩化カルシウムは高価であり、経済的負担も大きいため、費用対効果を考慮した運用が必要とされます。

近年では、AIやIoTを活用したスマート散布技術が導入され、気温や湿度、路面温度をリアルタイム測定し、必要最低限の薬剤を自動散布するシステムが開発されています。さらに、車両間通信を利用して除雪車や散布車の位置情報や作業状況を共有することで、より効率的な運用が可能になっています。また、代替薬剤としては有機系融雪剤が研究されており、糖蜜や酢酸系の薬剤が一部地域で試験導入されています。車両の多機能化も進んでおり、除雪機能を備えた散布車や、夏季には道路清掃車としても活用できるモデルも開発されています。凍結防止剤散布車は、冬季の道路安全を守る重要な特殊車両であり、技術の進歩によってより効率的かつ環境負荷の少ない運用に対応するべく進化を続けています。
さて、『No.39 凍結防止剤散布車 NWS60BC5』のモデル車は、1962年の創業以来、北海道の札幌市を本拠として除雪関連製品の開発・製造を事業の中核とし、除雪機械のトップメーカーとして成長してきたNICHIJ(旧・日本除雪機製作所)の凍結防止剤散布車(高速道路用湿塩散布機)、NWS60BC5です。
このNWS60BC5は、散布剤の凝固による散布障害の発生率が低いというメリットを持つベルトコンベアにより搬送された散布剤を、散布円盤により散布します。また、固形剤と溶液を混合して散布することで路面への散布剤の付着性が向上、風などで飛ばされにくくなるため経済的で、散布剤の即効性も高まるため、氷点下の凍結路面にも効果を発揮します。さらに、運転室内のコントロールボックスですべての散布操作が可能で、散布剤の散布方向は左右30度まで切り替えることができるため、道路の左右の車線に散布することが可能になっています。
一般にこのような特殊車両は様々なメーカーのトラック車両をベースにすることが可能ですが、『トミカ』で再現されている車両のベースとなっているのは、UDトラックスの大型トラック、クオンです。このクオンは2025年3月現在、2代目モデルとなっていますが、『トミカ』で再現されている車両に用いられているのは初代モデルで、『トミカ』でも実車同様に初代モデルの車体を用いています。

2004年に登場した初代クオンは発売当時、電気系統、安全面、環境面において世界初ともなる革新性をもつ、さまざまな最先端技術が組み込まれていましたが、特に環境対応技術では高い評価を受けました。日本では、2005年を目標に新長期排出ガス規制が設定されましたが、あまりにも厳しい目標のため、業界では達成は不可能と考えられていました。これに対し、初代クオンは排出ガスの浄化装置に、トラックでは世界初となる尿素SCRシステム『FLENDS(フレンズ)』を採用することで環境性能と燃費性能を大幅に高め、新長期排出ガス規制適合を施行の1年前に実現しています。エンジンには、ユニットインジェクターを採用したGEエンジンシリーズを搭載、最高モデルは410psとなっていました。
2017年に登場した2代目クオンも、先代から受け継ぐクラス最高レベルの燃費・環境性能と力強さの両立、スムーズでストレスの少ない快適な走りをもたらすドライブライン、乗員と積荷を守ることに加えて、周囲の安全性も同時に確保する先進的な安全装備、快適かつ運転に集中できるインテリアなど、先進的なトラックとなっています。
『トミカ』の『No.39 凍結防止剤散布車 NWS60BC5』は的確に実車のユニークなスタイリングが再現されています。凍結路や降雪路の安全維持に欠かせない1台を、あなたのコレクションに配備されてみてはいかがでしょうか? また『トミカ』では2025年3月現在、同じクオンを用いた『No.53 日産ディーゼル クオン ミキサー車』、『No.69 水族館トラック』、『No.90 UDトラックス クオン エネオス タンクローリー』といった異なった架装の車両がラインアップされているので、これらと並べてみるのも面白いでしょう。現行の2代目モデルも『No.31 UDトラックス クオン』としてラインアップされています。
■UDトラックス 初代 クオン 主要諸元(『トミカ』のモデル車両と同一規格ではありません)
全長×全幅×全高(mm):11950×2490×3060
ホイールベース(mm):7125
トレッド(前/後・mm):2040/1840
車両重量(kg):8890
エンジン型式::GE13TB型直列6気筒ターボディーゼル
排気量(cc):13074
最高出力: 279kW(379.3ps)/1800rpm
最大トルク:1648Nm(168kgm)/1400rpm
トランスミッション:6速AMT電子制御式自動変速機能付(ESCOT-A T Ⅳ)
サスペンション(前/後):リジッド
ブレーキ(前後) :フルエアブレーキABS付き
タイヤ:(前/後): 295/80R22.5 / 11R22.5-14PR
■NICHIJO 高速道路用 湿塩散布機 NWS60BC5 主要諸元
ホッパ容量:6.0立方メートル
水溶液タンク容量:2000L
散布幅:3~12m
散布量(凍結防止剤):10~40g/平方メートル
水溶液混合比:0.1~30%
作業速度:30~80km/h
散布剤送出方式:ベルトコンベア
散布ヘッド:散布方向調整式
剤排出機構:排出シュータ取付式(オプション)
散布円盤:ステンレス製
■毎月第3土曜日はトミカの日!

毎月第3土曜日は新しいトミカの発売日です。2025年3月の第3土曜日には、上でお伝えしているように、それまでの『No.39 ホンダ ステップワゴン』に代わって『No.39 凍結防止剤散布車 NWS60BC5』が登場します。また、それまでの『No.62 ラフェラーリ』に代わって『No.62 トヨタ クラウン セダン』が登場します。なお、『No.62 トヨタ クラウン セダン』には、初回出荷のみの特別仕様もあります。
