エボIIIといってもメルセデス・ベンツ190E!? 21世紀にレストモッドでエボIIから進化した「1048Style 190E EVOIII」!【東京オートサロン2025】

古い車をレストアすると同時にモデファイを行う「レストモッド」。アメリカでは1920年代のフォード・モデルAや1960年代のマッスルカーに、現代のエンジンや足回りを組み込むカスタムが古くから行われているが、近年ではヨーロッパでも中古のクラシック・ミニやレンジローバーをベースに、ファクトリーで現代風にモデファイしたものが販売されるなど、カスタム手法の一つとして定着している。もちろん日本でもレストモッドの人気は高く、2024年1月10日(金)〜12日(日)に幕張メッセで開催された『東京オートサロン2025』でも、多くのレストモッドが展示されていた。
REPORT&PHOTO:橘 祐一(TACHIBANA Yuichi)

メルセデス・ベンツ190Eエボリューションとは?

800台を超えるカスタムカーが並ぶ中、異彩を放っていたのがこのメルセデス・ベンツ190Eだ。1980年代から90年代の欧州車に詳しい方ならモチーフとした車両が190Eエボリューションだということがお分かりだろう。

190E2.5-16エボリューションIIのDTMマシン。(PHOTO:MERCEDES BENZ)

190Eエボリューションとは、1982年から販売されていたメルセデス初のDセグメント(現在の規格ではBCセグメントにあたる)というコンパクトなセダンをベースに、ドイツツーリングカー選手権(DTM)への出場を目的に開発されたもの。

メルセデス・ベンツ初のスモールモデルとなった190E。(PHOTO:MERCEDES BENZ)

当初は2.3L直列4気筒エンジンをベースにコスワースが開発した16バルブのヘッドを搭載し、グループAホモロゲーションモデルの190E2.3-16として誕生。1986年から市販モデルが販売された。

1988年にはDTMのレギュレーション変更に合わせ、エンジンをストロークアップして2.5Lとした190E2.5-16が登場した。そして1989年、より戦闘力を高めた190E2.5-16エボリューションを発表。大型のスポイラーやオーバーフェンダーなどのエアロパーツを装備し、DTMに参戦するレースカーそのままのスタイルで市販化。限定500台で販売された。

奥から190E2.3-16、190E2.5-16エボリューション、190E2.5-16エボリューションII。この3台に加え、190E2.3-16を2.5Lに拡大した190E2.5-16がエボリューションのベースになる。(PHOTO:MERCEDES BENZ)

コスワースによりチューニングされた2463ccの直列4気筒DOHC16バルブエンジンは231psを発生。
1990年にはさらに進化した190E2.5-16エボリューションⅡが登場。最高出力は235psにパワーアップ。こちらも500台限定で販売された。

190E2.5-16エボリューションII(PHOTO:MERCEDES BENZ)

1991年にはDTMでマニファクチャラータイトルを獲得。翌1992年はAMG、ZAKSPEED、MASS-SCHONSなどから8台が出場し、全24戦中16戦で優勝。マニファクチャラーズタイトルとともにドライバーズタイトルも獲得している。

1992年のメルセデス・ベンツ陣営のドライバー。左からジャック・ラフィ、ヨルグ・ファン・オメン、ベルント・シュナイダー、クラウス・ルドビク、クルト・ティム、ローランド・アッシュ、エレン・ロール、ケケ・ロズベルグ。ツーリングカーのスペシャリストだけでなく、F1経験者も揃う。(PHOTO:MERCEDES BENZ)

1993年には190E/C1がレースカーとしてデビューしているが、すでにCクラスが登場していたこともあり、市販モデルは登場しなかった。

時を超えてエボリューションはIIからIIIへ

東京オートサロン2025に展示されていたメルセデス・ベンツ190Eには「1048Style 190E EVO3」のネームプレートが掲げられていた。

これはイギリスのカーデザイナーKhyzyl Saleem氏がSNS上で発表した3Dレンダリングモデルを、RWB(RAUH-Welt BEGRIFF)などのブランドでも知られる日本のチューニングパーツメーカーKamiwazaJapanが190E2.3-16をベースに具現化したもの。

Khyzyl Saleem氏が描いたグラフィックは190E EVOⅡをモチーフに、オリジナルのボディラインを維持しながら大胆にモデファイされて2ドアクーペ化されている。

Khyzyl Saleem氏のインスタグラムでこの3Dレンダリングモデルを見ることができる。

実際に制作されたデモカーは4ドアセダンのままだが、ブリスターフェンダーや特徴的なエアロホイール、マットシルバー&ミントグリーンのカラー、ブラックマスクなど、その特徴を捉えて制作されている。

車高はFITMENT ENGINEERING製のエアサスペンションにより変化させることができるようになっている。ちなみに実車に装着されているエアロパーツは190E EVOⅡ用のエアロを加工したものだ。

車両はKamiwazaJapanから出品されているものの、自社のデモカーではなく、代表が完全に趣味で製作したもの。2024年はBMW M3のレストモッドも製作しており、いずれはアウディV8 クワトロやオペル・オメガのレストモッドも完成させて、1990年代初頭のDTM出場車を並べたいという野望があるのだとか。来年の出展が早くも楽しみになってきた。

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著者プロフィール

橘祐一 近影

橘祐一

神奈川県川崎市出身。雑誌編集者からフリーランスカメラマンを経て、現在はライター業がメイン。360ccの軽…