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YAMAHAの乗り物にYAMAHAのオーディオが装着って?
パシフィコ横浜で開催中の「ジャパンインターナショナルボートショー2025」において、ヤマハ発動機は新しい水上オートバイを展示していた。その1つの売りは珍しくオーディオだと言う。そもそもマリンジェットで音楽を聴くものかというのもよく知らなかったのだが、ドライブにカーオーディオが必需品であることを考えれば、そういうレジャーに対する需要は確実にあるだろう。しかもそのオーディオを手がけたのはヤマハブランドを共有するヤマハ株式会社。そう、日本の音楽の様々な分野でトップランナーであり続けるあのヤマハだ。

今回、発表されたばかりのヤマハ発動機製水上オートバイFXシリーズ、GPシリーズ、VXシリーズには、ユーザーのスマホなどを音源としてBluetoothで接続するオーディオシステムが搭載されている。その音源をデジタル処理し、アンプによって増幅して、スピーカーを鳴らすオーディオシステムをヤマハ株式会社が担当した。

意外なことに、乗り物がメインのヤマハ発動機の製品に、ヤマハ株式会社のオーディオ製品が搭載された例は少なくとも近年ではないそうだ。ちなみにヤマハ株式会社はカーメーカーの純正カーオーディオなどは手掛けているのだ。
水上オートバイのスピーカーは、もちろん海水にずぶ濡れになっても大丈夫な素材で作られ、ボックスはスピーカーの背面に空気振動を受けて低温を増幅する振動板を備えたパッシブラジエーター方式を採用し、不足しがちな低音を増強。DSP、アンプなどの電気系もヤマハ株式会社が担当し、最終的に要となる音をセッティングしたのは同社の音響マイスターだという。
会場には試聴コーナーもあり、騒がしい会場でもしっかりとした音量で低温から高音まで無理のない自然な音を鳴らしていた。アウトドアでも十分に聴かせてくれることを証明していた。

ヤマハ発動機は一昨年のジャパンモビリティショーにおいて、ヤマハ株式会社とコラボしたプレゼンを行っていたし、横浜の新拠点は、ヤマハ株式会社のビルにヤマハ発動機も本社組織の一部が磐田から移ってきている。元々は日本楽器製造(現ヤマハ)のオートバイ部門として独立したのがヤマハ発動機だが、それから70年を経て、両社のコラボによる展開が期待される。








CO2をゼロにする水素エンジン

ヤマハ発動機ブースでもうひとつの注目したい展示が水素エンジンの船外機。ベースとなるガソリンV8エンジン舶用であり、トヨタ向けの自動車用エンジンがベースではなく、自社船外機用エンジンがベースとのこと。主にガソリン用のインジェクターなどを水素用として、シリンダーにダイレクト噴射する。水素タンクはトヨタミライなどに使用されているものより大型のもので、アメリカのラウシュ社のものをこれまで使用している。

ヤマハ発動機はトヨタ自動車の水素燃料によるレース参戦のためのエンジンを手掛けているが、そのノウハウも活かして海上でもCO2ゼロを目指す。ちなみに、開発を担当する部署は、マリン部門ではなく、4輪用エンジン開発部門なのだそうだ。

電動操船システム「HARMO(ハルモ)」が市販型となって登場

ヤマハ発動機のもうひとつのカーボンニュートラルへの提案が電動操船システムのHARMO(ハルモ)。船外機を電動化したものだが、プロペラの外周に磁力を発生させるモーターを用いている。水中でモーターが回るので、ギヤもなく、非常に静かなのが特長。実際に過去に試乗させてもらったことがあるが、船がエンジンをオフにして惰性で走っているか、手漕ぎボートのような静かさを体験できた。


実証実験であったハルモは今回、操船のための制御も同社の得意とするヘルムマスターEXを搭載し、初心者でも直感的に離岸、着岸なども容易に可能。同時に一般的な船外機と同じように取付できるようになり、販売されることとなった。本体や基本的な構造に大きな変更はなく、販売価格は333万3000円だ。この価格にはバッテリーは含まれないので、近い方や必要な航続距離などに寄って、鉛でもリチウムでも48Vで供給すれば、排ガスゼロで、静かに走らせることができるという。



今後、実証実験していた小樽や徳島などのHARMOは新たに販売モデルに付け替えが行われ、横浜やその他の国内数カ所で運用が開始される。

サステナブルとモビリティの楽しさを表現したヤマハ発動機ブースであった。