目次
■セレナに繋がる小型キャブオーバーのバネット
1980年(昭和55)年3月26日、日産自動車は「サニーバネット」と「チェリーバネット」に続いて、小型キャブオーバーの「ダットサン・バネット」を発売した。バネットにはライトバンと乗用車系コーチ、それぞれに標準とハイルーフ、ロングと多彩なモデルが用意された。

ライトバンと乗用車系コーチが用意されたダッタサン・バネット

1978年にデビューした「サニーバネット/チェリーバネット」は、小型キャブオーバーのライトバン/コーチ(ワゴン)/トラックが用意されたが、その兄弟車として1980年3月のこの日にデビューしたのが、ダットサン・バネットである。3つのモデルの違いは販売系列で、フロントマスクが若干異なる程度だった。
バネットシリーズは、すぐれた積載力と作業性を特徴としつつ、運転のしやすさ、居住性、乗降性も重視された、ドライブやレジャーにも使えるマルチユースカーだった。特に、ダットサン・バネットはトラックを設定せず、乗用車系のコーチをより乗用車志向に仕上げていた。

ダットサン・バネットは、メッキタイプのヘッドライト枠に4灯を採用し、窓ガラス面積を大きくとって明るく開放的とし、ウエストラインを低くして洗練されたスタイルを採用。フルキャブオーバーで足元をフラットにして乗降性を容易にし、広い荷室空間も確保しているのも特徴だった。

ライトバンが標準タイプ(標準ルーフ&ハイルーフ)とロング(標準ルーフ)、コーチは標準(標準ルーフ&ハイルーフ)とロング(標準ルーフ)が設定され、パワートレインは1.4L直4 OHVエンジンと4速MTの組み合わせ、駆動方式はFRのみ。同年6月には、エンジンが1.5L直4 OHVに換装された。

車両価格は、ライトバンが75.2万~84.4万円、コーチが98.6万~104.0万円に設定。当時の大卒初任給は11.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値でライトバンが約150万~169万円、コーチが197万~208万円に相当する。
2代目バネットは小型ワンボックスで人気モデルに
バネットシリーズは、1985年にモデルチェンジして2代目へ移行した。先代と同様にピックアップ、バンおよび乗用車系コーチが設定された。
ワンボックススタイルのコーチは、強く傾斜したフロントウインドウや3次元曲面を持ったサイドウインドウなどでスタイリッシュにまとめられた。比較的小さなボディだが、室内空間はキャブオーバーの利点を生かして広く、9人乗りや回転対座シートも装備された。
パワートレインは多彩になり、最高出力88psを発揮する2.0L直4 SOHC、67psの1.5L直4 OHVのガソリンエンジン、65psの2.0L直4 OHVディーゼルエンジンの3種エンジンと、4速MTおよび3速ATの組み合わせ、駆動方式は先代同様FRのみだった。
コーチは、当時のワンボックスワゴンの流行にも助けられて。高い人気を獲得。バネットシリーズは、小型ワンボックスではトップシェアを誇ったのだ。
今に繋がるミニバンの先駆けとなったバネット・セレナ登場

1991年にバネットコーチの後継としてミニバン「バネット・セレナ」がデビューした。従来の商用車ベースのバネットとは異なり、キャブオーバーから前輪を前席の前に搭載するセミキャブオーバーに変更、さらにエンジンを前車軸後方のミッドシップに搭載。目指したのは、理想的な3列シートのファミリーユースを第一に考えたマルチパーパスなミニバンだった。

新パッケージングによってフロントに有効なクラッシャブルゾーンが確保されて安全性が高まり、さらに長いホイールベースによって広い室内空間と自由度の高いシートレイアウトが実現された。グレードに応じて8名の標準仕様と、定員7名の2列目キャプテンシートが選べた。
パワートレインは、最高出力130psの2.0L直4 DOHC、91psの22.0L直4 SOHCディーゼルエンジンと5速MTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FRと4WDが用意された。
広い荷室空間を持ち、多人数でのファミリードライブを快適にこなすバネット・セレナは、好調な販売を記録。1999年にモデルチェンジしてバネットの冠が外れ「セレナ」の単独ネームとなり、現在ミドルクラスのミニバンとして人気を獲得しているセレナのベースが出来上がったのだ。
・・・・・・・・・・
ダットサン・バネットは、現在のセレナの源流のモデルである。1980年代に日本で起こったアウトドアブームが、商用車ベースから多人数で楽しめる現在人気のミニバンへと進化させたのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。