エバンスがサファリラリー初優勝!
今季2勝目で選手権のリードをさらに拡大
サファリ・ラリー・ケニアの最終日デイ4は、木曜日の夕方にSS2として行なわれた「ムザビブ」の再走ステージとなるSS17に続き、「オセレンゴニ」と「ヘルズゲート」のステージを、ミッドデイサービスを挟んで各2回走行。5本のステージの合計距離は65.99kmだった。最終日は早朝から青空が広がったが、前日に強く降った雨の影響で湿っていたり、泥状になっている路面もあった。

前日のデイ3で、総合2位のオィット・タナック選手(ヒョンデ)に対し1分57.4秒という大きな差を築いた首位エバンス選手は、オープニングのSS17で4番手タイムを記録。既に十分なギャップがあるため大きなリスクを負って攻める必要はなく、安定性と速さのバランスを上手くとりながらステージを走行。

一方、前日総合4位の勝田選手は、総合3位ティエリー・ヌービル選手(ヒョンデ)とのタイム差が33.2秒とそれほど大きくなかったこともあり、アタックを続行。SS17ではハーフスピンを喫しヌービル選手との差は拡がったが、総合4位の座は守った。
前日総合5位のロバンペラ選手はSS17を3番手タイムで走り切るも、その後ロードセクションでクルマに電気系統のトラブルが発生しストップ。リタイアを余儀なくされた。続くSS18でもエバンス選手は確実性の高い走りを続け、5番手タイムで首位を堅持。一方、勝田選手は果敢な走りでベストタイムを記録し、ヌービル選手との差を僅かに縮めた。ヘルズゲートの1本目、SS19では勝田選手が3番手タイム、エバンス選手は5番手タイムで順位は変わらず。ナイバシャでのミッドデイサービスを経て始まった再走ステージ、SS20では勝田選手が今大会4目のベストタイムを記録。ヌービル選手との差を32.9秒まで縮めた。

そして迎えた最終のSS21、ボーナスポイントがかかるパワーステージでは大きなドラマが起こった。日曜日のみの合計タイムでポイントを争う「スーパーサンデー」で優勝の可能性があった勝田選手が、スタートしてすぐにロールオーバー。何とか走行を再開しタイムロスを喫しながらもフィニッシュラインを通過し、その時点では総合5位フィニッシュの可能性を残していた。しかし、タイムコントロールでクルマを前に進めることができなくなり、勝田選手とコ・ドライバーのジョンストン選手はクルマを押して何とかポディウムを通過。その後、サービスパークに設定されているタイムコントロールまでクルマを戻すべく修理を試みたが、残念ながらリタイアとなった。
一方、エバンス選手は最終ステージも安定した走りで駆け抜け、総合2位のタナック選手に1分09.9秒差をつけて優勝。サファリ・ラリー初優勝、そして前戦ラリー・スウェーデンに続く今シーズン2勝目を挙げ、ドライバー選手権におけるリードを36ポイントに拡げた。

TGR-WRTは今回の勝利により、サファリ・ラリーがWRCのカレンダーに復帰した2021年以降、負けなしの5連勝。トヨタとしては通算13回目のサファリ・ラリー優勝となった。パワーステージエンドで行なわれた表彰式では、今回チーム代表代行を務めたユハ・カンクネン氏が選手達と共に表彰台の最上段に登壇。カンクネン氏は1985年にセリカ・ツインカムターボを駆り、このラリーでWRC初優勝を果たしたが、それから40年後の今大会では、チームを率いる立場でサファリ・ラリーを制した。なお、TGR-WRTにとって今回は100戦目の節目となるWRCイベントだった。
今回がサファリ・ラリー初出場だったパヤリ選手は、最終日も安定した走りでフィニッシュ。最後まで大きなトラブルに見舞われることなく、総合4位を獲得している。
⚫︎TGR-WRT 豊田章男会長のコメント
「エルフィン、スコット、優勝おめでとう! ふたりが、今シーズンの3連勝とサファリ・ラリー5連覇を実現してくれました。そして、今回のラリーでチーム代表を代行したユハをポディウムに連れていってくれました。昔からのラリーファンであるモリゾウは、せっかくならユハにはサファリ・ラリーのポディウムに立ってもらいたいと考えていました。それを実現してくれた二人に感謝します。エルフィン、スコット勝ってくれてありがとう。
今回、エルフィンたちのおかげで勝つことはできましたが、ケニアは例年と変わらず本当に厳しい道でした。簡単に勝てた訳ではありません。我々は、サファリでの4年の経験を生かして万全の準備をしてケニアに臨みました。しかし今年もまたサファリでは新たな課題にぶつかりました。最終日、最終SSまで様々なことがありました。エルフィンたちにはもっと楽に勝たせてあげたかった。カッレたちには最後まで走らせてあげたかった。貴元たちも今回こそはと思っていたし、サミたちにももっと力を発揮させてあげたかった。「もっといいクルマづくりに終わりはない」を改めて実感させてくれるような道に出会うと、我々はワクワクしてきます。
チームのみんなは明日からまたGRヤリス・ラリー1を、もっと乗りやすくて、もっと強いクルマに改善していってくれるでしょう。そして、その改善はラリーカーに留まらず、世界中を走るあらゆるトヨタ車に繋がっていきます。ケニアの道は自動車メーカーがラリーに出る意義を再確認させてくれました。チームのみんな、明日からまたもっといいクルマづくりを頑張っていきましょう!そして、ライバルたちとの戦いを楽しみましょう!」
⚫︎ユハ・カンクネン チーム代表代行のコメント
「ここケニアで、チームにとって100回目のWRCイベントでの優勝を達成できたこと、そして、私が初めてここで優勝してから40年後に、トヨタの優勝をサファリ・ラリーで祝うことができたことをとても嬉しく思いますし、涙が溢れ出ました。近年の走行距離が短くなったサファリ・ラリーの中でも、今回は間違いなく最も過酷なラリーだったと思います。常に何かが起こっていたので、自分が運転していた時よりもずっと緊張しました。特に最終日に関しては、過去数年と比較すると少し運が悪かったかもしれませんが、最も重要なのは、このラリーで再び優勝できたことです。エルフィンとスコットは本当に良くやってくれましたし、彼らは非常に素晴らしいシーズンのスタートを切ったと思います」

●エルフィン・エバンス選手(GRヤリス・ラリー1/33号車)のコメント
「このラリーで優勝することができたのは、素晴らしいことです。まだ実感が湧きませんが、サファリ・ラリーで優勝するのは特別なことです。素晴らしいクルマを用意するために、一生懸命頑張ってくれたチームに感謝したいと思います。また、トヨタのこのラリーにおける輝かしい歴史のほんの一部に関わることができて、誇りに思います。非常に厳しい週末でしたし、自分たちが出場するようになってからは、最も過酷なサファリ・ラリーだったように思います。土曜日は天候が状況をさらに複雑にしました。最終日に、大きなリードを保ちながらフィニッシュを目指すのは、容易ではありませんでした。日曜日に追加ポイント獲得を狙うという誘惑もありましたが、このような状況ではクルマをフィニッシュまで運ぶことが何よりも重要だったので、最終的にとても満足しています」
●カッレ・ロバンペラ選手(GRヤリス・ラリー1/69号車)のコメント
「難しい週末でしたが、最終日もできるだけ多くのポイントを獲得しようと頑張りました。朝の最初のステージでは全てが順調でしたが、次のステージに向かうロードセクションで、クルマの電気系統に問題が発生し始めました。修理を試みたのですが、結局間に合わず、ラリーからのリタイアを余儀なくされました。ポイントを獲得できずに終わったことは本当に残念ですが、次のラリーではまた頑張ります」
●勝田貴元選手(GRヤリス・ラリー1/18号車)のコメント
「このような形でラリーを終えることになってしまい、とても残念です。パワーステージをスタートしてすぐハーフスピンを喫してコーナー内側のバンクに当たってしまい、クルマがロールし始めました。まったく予想外のことで、何が起こったのか正確にはわかりません。非常に難しいラリーでしたし、もちろんプッシュしなければならなかったので、このようなことはいつでも起こり得ます。ただ、チームに対しては本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」
●サミ・パヤリ選手(GRヤリス・ラリー1/5号車)のコメント
「今回のラリーでは完走することが自分たちにとって唯一の計画だったので、フィニッシュラインを通過することができて本当にホッとしています。ステージのレッキから4日間のラリー本番まで、かなり長い一週間でした。とても疲れましたが、うまく仕事をやり遂げることができたと思います。大きなミスやトラブルもなく、それはまさに自分たちが今回のイベントに求めていたことだったので、とても満足しています。また、チームがこのラリーで再び優勝したことを嬉しく思います。ここで得た経験を活かすことで、次回はさらに強い戦いができるはずです」
FIA WRC第3戦サファリ・ラリー・ケニアの結果(敬称略)
1:エルフィン・エバンス/スコット・マーティン(トヨタ GR ヤリス・ラリー1)4時間20分03.8秒
2:オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ(ヒョンデ i20 N ラリー1) +1分09.9秒
3:ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ(ヒョンデ i20 Nラリー1)+3分32.0秒
4:サミ・パヤリ/マルコ・サルミネン(トヨタGRヤリス・ラリー1)+7分18.7秒
5:グレゴワール・ミュンスター/ルイス・ルッカ(フォード・ピューマ・ラリー1)+11分35.3秒
6:ガス・グリーンスミス/ヨナス・アンダーソン(シュコダ・ファビアRSラリー2)+14分11.6秒
7:ヤン・ソランス/ロドリゴ・サンファン(トヨタGRヤリス・ラリー2)+17分26.6秒
8:ジョルダン・セルデリウス/フレデリック・ミクロッテ(フォード・ピューマ・ラリー1)+28分45.5秒
9:ファブリツィオ・ザルディヴァー/マルセロ・デル・オハネシアン(シュコダ・ファビアRSラリー2)+35分38.8秒
10:ジョシュ・マッカーリーン/オーエン・トレーシー(フォード・ピューマ・ラリー1)+37分15.8秒
R(リタイヤ):勝田貴元/アーロン・ジョンストン(トヨタGR ヤリス・ラリー1)
R(リタイヤ):カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン(トヨタGRヤリス・ラリー1)
※現地時間3月23日18時00分時点のリザルト第3戦終了時点でのドライバー選手権順位(敬称略)
1:エルフィン・エバンス(88ポイント)
2:ティエリー・ヌービル(52ポイント)
3:オィット・タナック(49ポイント)
4:セバスチャン・オジエ(33ポイント)
5:アドリアン・フォルモー(31ポイント)
6:カッレ・ロバンペラ(31ポイント)
7:勝田貴元(25ポイント)
8:サミ・パヤリ(19ポイント)
9:グレゴワール・ミュンスター(16ポイント)
10:マールティンシュ・セスクス(8ポイント)
第3戦終了時点でのマニュファクチャラー選手権順位
1:TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(148ポイント)
2:Hyundai Shell Mobis World Rally Team(122ポイント)
3:M-Sport Ford World Rally Team(47ポイント)
4:TOYOTA GAZOO Racing WRT2(25ポイント)