新型リーフ初お目見え! 日産の反転攻勢は、新車ラッシュで始まる。次期GT-Rは、エルグランドはこうなる?

日産の反転攻勢の狼煙、新型リーフ(中央)
日産自動車はコスト構造を最適化すると同時に競争力の高い商品を投入することで、業績不振に陥った事業を、収益を上げられるように立て直す「ターンアラウンド」を実行中だ。3月25日には内外のメディアやジャーナリストを日産テクニカルセンター(神奈川県厚木市)に集め、「強固で持続可能な地盤を築き、収益性を向上する」ための新商品の投入計画を発表した。
TEXT:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:NISSAN
ギョーム・カルティエ日産自動車チーフパフォーマンスオフィサー(CPO)、アルフォンソ・アルバイサ氏(グローバルデザイン担当)、そして4月よりCEOに就任するイヴァン・エスピーノサ氏が登壇(写真はカルティエ氏)。

チーフプランニングオフィサーであり、4月1日付けで代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)に就任するイヴァン・エスピノーサ氏は、「今後2年間で、新型『リーフ』や新型『マイクラEV』を含む魅力あふれる商品ラインアップを構築します。さらに、SUVのラインアップを刷新し、運転体験を向上させます。また、次世代e-POWERは新次元の洗練された高効率な走りを実現します」と説明した。

日産がターンアラウンドしていくための商品は次の3つに大別できる。

・代表モデル
・高競争力モデル
・パートナーシップ活用モデル

代表モデルとは、アイコニックなスポーツカー(GT-RやZと想像したくなる)など日産のDNAを体現し、ブランドを象徴するモデルを指す。売れるに越したことはないが、台数や収益よりも日産のブランドイメージの引き上げる役割を重視したモデルだ。

次期GT-R?のコンセプトカー、NISSAN HYPER-FORCE(ハイパーフォース)。電動スーパーカーのコンセプトだ。2023年のジャパンモビリティショーでワールドプレミアされたモデルだ。エスピノーサ次期CEOは、新型GT-Rの開発について明言はしなかったが……言葉の端々からその可能性は感じられた。

高競争力モデルは日産の業績を向上させ、成長を促進する量販車種。俗っぽく表現すれば、「利益を取りに行く」モデルだ。国内市場にあてはめれば、コンパクトSUVやミニバンがあてはまるだろうか。パートナーシップ活用モデルは、日産のポートフォリオを補完し強化する車種を指す。電気自動車(EV)の領域ではルノー、軽自動車では三菱自動車との協業が具体例である。

最大のマーケットにして、現在苦戦中の北米市場には、2025年度に新型リーフ(後述)を投入。日産ローグ(ROUGE)には、ブランド初のPHEVを追加する。これは三菱アウトランダーPHEVの日産版となる。

会場での展示車両も含め、今回発表された主な投入予定車種は次のとおり(「新型」はフルモデルチェンジを意味。それ以外はマイナーチェンジ、イヤーモデル、OEMモデルを表す。カッコ内は著者の見立てを含む補足)。

2025年度投入予定車種

2025年度に投入される新型リーフ。3代目となる。
マイクラの名前が復活する、日産マイクラEV。ルノー5EVがベースだ。

新型リーフ、ローグPHEV(三菱アウトランダーPHEVがベース)、新型セントラ、マイクラEV(ルノー5 EVがベース)、パスファインダー、キャシュカイe-POWER、インフィニティQX60

2025年、26年のインドに投入する2モデルのティザーイメージ。
世界で最も急成長しているインド市場には、2025年度にMPVを26年度には5人乗りコンパクトSUVを投入する。
インド向けの2モデルについては、チェンナイ工場で生産される。現地で進める「One Car, One World」戦略に従い、インド国内の販売を強化し、さらに右ハンドル/左ハンドルの両仕様で世界への輸出を計画している。インド国内販売10万台/年、輸出10万台/年が目標だ。
中南米市場にはピックアップトラック、コンパクトSUV、手頃なセダンに加え、エクストレイルe-POWERの拡大を目指す。
中南米のインフィニティブランドは、2025年度にマイナーチェンした3列シートのラグジュアリーSUVのQX60を投入。26年度にはミドルサイズのクロスオーバークーペの新型QX65を発売する予定だ。

2026年度投入予定車種

新型ローグe-POWER、新型ジュークEV(2023年のJMS 2023出展車『ハイパーパンク』で表現した大胆なデザインをほぼそのまま採用)、ナヴァラ/フロンティア、ヴァーサ、インド市場向け2列シートSUV、インド市場向けMPV、新型インフィニティQX65

2027年度投入予定車種

新型ニッサンEV SUV

2028年度投入予定車種

新型インフィニティEV SUV

「強固で持続可能な地盤を築き、収益性を向上する」と前述したが、そのために日産は、市場戦略を再構築し、市場ごとに最適な商品戦略を立て、欧州には欧州のマーケットに合った車種を、北米は北米、日本は日本のマーケートの実状や嗜好に合った商品を投入していく。

日本市場には、2025年度に新型リーフと新型軽自動車(三菱自動車と協業)を含め、多様な新型車(サプライズがあるかも)とマイナーチェンジ車を投入。2026年度には第3世代のe-POWERを搭載した新型大型ミニバンを投入すると発表された。新型大型ミニバンは次期エルグランドと見て間違いないだろう。

次期エルグランドのコンセプトだと想像できるコンセプトカー「NISSAN HYPER TOURER(日産ハイパーツアラー)」

すべてが新しい新型リーフに期待!

センターにあるのが、新型リーフ。3代目となるリーフだが、初の完全刷新であることを考えると、まさにAll-New LEAFということになる。

日米欧の各マーケットに投入する新型リーフは、会場(日産テクノロジーセンター内のデザインセンター)に展示されていた。クロスオーバーに一新された3代目リーフは、アリアから採用したCMF EVプラットフォームを採用し、先進のEVアーキテクチャーを搭載。空力性能を大幅に向上させたという。また、モーター、インバーター、減速機を一体化した新開発の3 in 1パワートレーンの採用により、エネルギーマネジメントが向上。大幅な航続距離の改善を見込んでいる。

2021年12月に発表されたCHILL-OUTコンセプトが新型リーフの”元ネタ”であるのは、間違いない。
コンセプトカーの持っていた特徴や雰囲気を新型リーフが引き継いでいることがわかる。写真はCHILL-OUTコンセプト
写真はCHILL-OUTコンセプト。新型リーフのリヤのライティングも、これによく似ている。

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CHILL-OUTコンセプト

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CHILL-OUTコンセプト

エクステリアはラジアスレクタングルと呼ぶ角を丸めた四角を反復させたライティンググラフィックが目を引く。先進的かつクリーンな印象だ。リヤのライティンググラフィックも凝っており、ホログラムが採用されている。ホイールサイズは19インチ。パノラミックガラスルーフを採用したのも特徴だ。

日本市場向けには2026年度に新型大型ミニバン(欧州向けにはコンパクトクロスオーバーのキャシュカイに2025年度後半、北米では2026年度に新型ローグに投入予定)に適用される第3世代e-POWERは、効率の大幅な改善により弱点とされていた高速走行時の燃費を最大15%向上させる狙いで開発が進められている。e-POWER専用に新開発した新しい1.5Lエンジンの組み合わせだ。(第2世代e-POWERを搭載するセレナも充分に静かだが)静粛性も大幅に向上するという。

メディアとのラウンドテーブルで、プレスの質問に応えるイヴァン・エスピーノサ氏。現在はチーフ プランニング オフィサー、4月1日付けでCEOに就任する。

「世界中の熱いファンの皆さまと、日産を支えてくださっているお客さまにワクワクする体験をお届けすることをお約束します」とエスピノーサ氏は話す。魅力的な姿に生まれ変わった新型リーフを見ると、無類のカーガイであることが質疑応答でのやりとりで判明した次期CEOの言葉を額面通り受け取りたくなる。皆さんはいかがだろう。

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…