日産910ブルに初のターボモデル「ブルーバード1800SSS」が150.1万円で登場【今日は何の日?3月31日】

Z18ET型1.8L直4 SOHCターボエンジン
「ブルーバード1800SSS」搭載のZ18ET型1.8L直4 SOHCターボエンジン
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日3月31日は、大ヒットした3代目510型ブルーバードの再来といわれた人気の6代目910型ブルーバードに、初となるターボモデル「ブルーバード1800SSS」が誕生した日だ。日産にとっては、セドリック/グロリアに続いたターボモデルである。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:前田 惠介、三栄・80年代日産車のすべて、国産名車のすべて

■910型ブルーバードの商品力強化のためターボ追加

日産「ブルーバード1800SSSターボ」
日産「ブルーバード1800SSSターボ」

1980(昭和54)年3月31日、日産自動車の6代目910型「ブルーバード」に、高性能ターボモデル「ブルーバード1800SSS(スリーエス)」が追加された。ブルーバードを代表する人気モデル510型に続いて人気を獲得していた910型に、高性能スポーツモデルが追加されることで、人気は加速した。

日産「ブルーバード1800SSSターボ」
日産「ブルーバード1800SSSターボ」

歴代ブルーバードで最も成功を収めた3代目(510型)

310型「ブルーバード」
1959年に誕生した初代310型「ブルーバード」。丸みを帯びたフォルムが特徴

日産「ブルーバード」とトヨタ「コロナ」は、デビュー以来BC戦争と呼ばれた熾烈な販売競争を繰り広げていた。1959年にデビューした初代310型ブルーバードはコロナを圧倒したが、1963年にデビューした2代目410型はスタイリングが不評でコロナに小型乗用車トップの座を奪われた。

2代目410型「ブルーバード」
1963年に登場した2代目410型「ブルーバード」

そして1967年に登場した3代目510型は、“新しい時代の新しいセダン”のキャッチコピーで、プラットフォームやエンジンなどを一新。スタイリングは、ロングノーズ・ショートデッキに、高性能時代にふさわしいスーパーソニックラインと呼ばれるシャープなフォルムが新鮮だった。

3代目510型「ブルーバード1600SSS」
3代目510型「ブルーバード1600SSS」
ダットサンブルーバード 1600SSS 1970年 第18回東アフリカ・サファリラリー総合優勝車
ダットサンブルーバード 1600SSS 1970年 第18回東アフリカ・サファリラリー総合優勝車

パワートレインは、最高出力72psを発揮する新開発の1.3L直4 SOHCと3速MT、100psの1.6L直4 SOHCエンジンと4速MTの組み合わせ。高性能1.6Lエンジンを搭載した「ブルーバード1600SSS」は、1970年のサファリラリーで総合優勝を果たしたこともあり、大ヒットして再びコロナから首位の座を奪回した。

4代目610型「ブルーバード:ハードトップ」
1971年にデビューした4代目610型「ブルーバード:ハードトップ」

しかし、その後サメブルと呼ばれた4代目610型(1971年~)と5代目810型(1976年~)は、人気が得られず再びコロナの後塵を拝することになった。

トップの座に返り咲いた6代目(910型)

6代目910型「ブルーバード(ハードトップ)」
1979年にデビューした6代目910型「ブルーバード(ハードトップ)」。3代目(510型)以来の大ヒットモデル

1979年に登場した6代目910型は、大きな角型ヘッドライトを組み込んだ3代目510型のような直線基調のシャープなスタイリングが特徴。コンセプトに“原点回帰”を掲げ、つねに先進的なクルマであること、最高水準のメカニズムを持つことを目標に開発された。

6代目910型「ブルーバード」
1979年にデビューした6代目910型「ブルーバード」

注目の新機構としては、走行安定性を高める“ハイキャスター・ゼロスクラブ・サスペンション”や新型“ラック&ピニオン式ステアリング”、“ベンチレーテッド・ディスクブレーキ”、そして“高性能&低燃費の改良Zエンジン”などが採用された。

エンジンは、1気筒あたり2本の点火プラグを配置したZエンジンに改良を加えた最高出力95psの1.6L、105ps&115psの1.8L、120psの2.0L直4 SOHCが搭載され、トランスミッションは4速/5速MTおよび3速ATと、豊富なバリエーションが用意された。

910型の人気を加速した1800SSS

ダットサンブルーバード 4ドアハードトップ 1800ターボSSS-X・G
ダットサンブルーバード 4ドアハードトップ 1800ターボSSS-X・Gタイプ。マルチボイスウォーニングを採用した1.8Lの最上位のグレード。135ps、1800ccの直4 OHCターボエンジン(Z18ET)を搭載。グレーツートンの塗装は特別色
「ブルーバード1800SSS」のコクピット
「ブルーバード1800SSS」のコクピット

好調に滑り出した910型ブルーバードに、1980年3月のこの日に真打ともいえる高性能スポーツ「ブルーバード1800SSS」が追加された。ターボモデルは、日産にとっては1979年に5代目430型セドリック/グロリア2000ターボに続く第2弾となった。

Z18ET型1.8L直4 SOHCターボエンジン
「ブルーバード1800SSS」搭載のZ18ET型1.8L直4 SOHCターボエンジン

1.8L直4 SOHCにターボを装着したターボエンジンは、最高出力135ps/最大トルク20.0kgmを発揮。通常ターボエンジンはノックが発生しやすくなるが、ノックセンサーを使ってノックを検出し、点火時期を適正にコントロールする手法を採用。そのおかげで、ターボエンジンながら圧縮比を比較的高い8.3に設定していたことでも注目を集めた。

6代目910型「ブルーバード1800SSS」
1980年にデビューした6代目910型「ブルーバード1800SSS」

ハイパワーエンジンを搭載した1800SSSは、足回りについても強化を実施。フロントがマクファーソンストラット式、リアがセミトレーリングアーム式の4輪独立サスペンションを専用チューニングした。

ブルーバード スーパーシルエット グループ5
ブルーバード スーパーシルエット グループ5。910ブルはなんといっても、このレーシングマシンを載せとかないと! 570psLZ20B 型ターボエンジンの大パワーは、当時のF1さえも超えるものだったとか。この白とオレンジに塗られたブルーバードスーパーシルエットは1983年、柳田春人選手ドライブで全10戦中4勝をマークし、シリーズチャンピオンを獲得

車両価格は、セダンタイプの1.8L標準グレードが120.8万円、ターボの1800SSSが150.1万円に設定。当時の大卒初任給は、11万円(現在は約23万円)程度だったので、単純計算では現在の価値で標準グレードが約253万円、1800SSSは約314万円に相当する。

歴代ブルーバード
歴代ブルーバード

1800SSSは、シャープなスタイリングとスポーティな走りで多くの若者から支持され、910型ブルーバードの人気に拍車をかけた。販売台数は、27ヶ月連続で小型乗用車トップに君臨し続け、ライバルのコロナを圧倒した。

6代目910型「ブルーバード1800SSS」
6代目910型「ブルーバード1800SSS」

ちなみに、駆動方式は初代以降FRだったが、ブルーバードにとってはこの6代目が最後のFRモデルとなった。

1981年のダットサンブルーバード 2000SSS-EX
1981年のダットサンブルーバード 2000SSS-EX。1気筒に2本の点火プラグをもつZ20E型/120psエンジンを搭載し、7つの調整機能の「7ウェイシート」も装備する上級グレード

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3代目ブルーバードの再来と言われて大ヒットした6代目ブルーバード。ターボモデルの追加で、大衆車ながら510型のように走り好きの若者の心も掴んだ。ブルーバード最後のFRモデル、またダットサンの冠が付いた最後のブルーバードであり、ブルーバードにとって大きな転換期となったモデルだった。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…