マセラティが始めた正統なクラシックカー認定プログラムとは? マセラティ ジャパン社長インタビュー

マセラティ ジャパン株式会社木村隆之代表取締役と初代ギブリ スパイダー。展示されたギブリ スパイダーは1969~1973年、2ドア2シータークーペ「ギブリ」(1966~1973)のオープントップモデルとして、わずか125台のみ生産された希少なマセラティ・ロードカーである。
マセラティ ジャパン株式会社木村隆之代表取締役と初代ギブリ スパイダー。展示されたギブリ スパイダーは1969~1973年、2ドア2シータークーペ「ギブリ」(1966~1973)のオープントップモデルとして、わずか125台のみ生産された希少なマセラティ・ロードカーである。
オートモビルカウンシル2025にて、マセラティ ジャパンがヘリテージプログラムの「マセラティ・クラシケ」認定証発行プログラムの実施を発表した。マセラティ・クラシケ(以下クラシケ)に認定されることは、保存や修復の状態、正当性などの本来持っている真正性に、製造者であるマセラティがお墨付きを与えるものである。マセラティ ジャパン株式会社の木村隆之代表取締役に、今後の展開を含めて訊いた。

Maserati Classiche

──今回クラシケを発表されました。

木村社長(以下、木村):2021年にイタリア本国で始まった取り組みです。日本は非常にマセラティに対する造詣の深いオーナーが多く、オーナーズクラブも以前から積極的に活動していましたので世界でも屈指のレベルのクルマが揃っています。今回の発表で展示した「ギブリ スパイダー」のオーナーのように、クラシックモデルと同時に最新モデルも所有されている方も多いです。それで、以前から本国にお願いしていたとおりに、イタリアに次ぐ2ヵ国目のクラシケ認定証発行プログラムの実施できることになりました。

マセラティ ジャパン株式会社の木村隆之代表取締役

──そもそも、クラシケが始まったきっかけは?

木村:2020年に発表した「MC20」以降ラインアップを一新するなどして、マセラティ復活の狼煙を上げました。このクラシケもその中の一環になります。日本に限らず世界中に状態のいいクラシックモデルが存在していましたが、メーカーとしてオフィシャルにそれをフォローしてきませんでした。このプログラムで歴史的なモデルの正統性を審査・検証し、認定証を発行するとともに、スペアパーツの再生産や車両レストアのサポート等のサービスを展開していきます。4年で80台と数はまだ少ないですが、今後確実に増えていきます。

──日本独自の取り組みは?

木村:クラシケは、その歴史的モデルの正統性、つまり当時の仕様・状態を維持しているかを審査・認証する必要があります。ですが審査・認証するために車両を日本からイタリア・モデナに送ることは費用も時間も膨大なコストがかかります。そこで審査員を日本に呼び寄せて、日本で認定できることになりました。今年日本で8台に認定書を発行する予定ですが、オーナーズクラブの方達のクルマを見ても、その候補車は少なくとも20〜30台はあるのではないでしょうか。

──クラシケの対象車両は?

木村:対象モデルは、クラシック(1947〜1978年)、ネオクラシック(1978年〜生産後20年以上経過した車両)、スペシャルカー(MC12及び派生モデル、バードケージ75th、バルケッタ・ビターボ、320S、アルフィエリ、フルーアボディを持つクアトロポルテ、A6 1500グランツーリスモなど)の3つに分けられます。

──審査の申し込み方法は?

木村:6月1〜30日にマセラティ ジャパン公式ウェブサイトで受け付けております。書類と写真でまずは事前審査させていただき、審査の対象になったらマセラティ ジャパンのテックラボに輸送し、イタリア本社から来た審査員と日本のテクニカルチームが300以上の項目を点検して審査します。日本でも古くからマセラティを知る3人の社員がクラシケ担当として、ディーラーでのサポートなどもします。そういった審査を経て合格した車両に認定書を発行します。

──今後のマセラティのラインナップの方向性は?

木村:これまでと同じサルーンがメインストリームとは思っていません。現在のラインナップはレヴァンテとグレカーレのSUV2車種、ギブリとクアトロポルテのサルーン2車種、グラントゥーリスモとグランカブリオ、そしてMC20とMC20チェロのスポーツクーペ4車種がありますが、それらも多少見直されます。お客様の志向が背が高い、ヒップポイントの高いクルマに行っているのは事実です。そして個人主義が強まる傾向からも囲まれ感のある頑丈そうなクルマということがSUVブームの理由のように思います。だから当面SUVブームは無くならないでしょう。今後グレカーレよりも大きなSUVと背の低いサルーンが登場しますのでご期待ください。

──本国ではEVモデルも登場しているが電動化に向けた動きは?

木村:日本市場において直近1年ほどでEVを導入しませんが、既存のマイルドハイブリッドモデルなどを積極的にプロモーションしていきたいと思っています。

PHOTO/GENROQ

マセラティ ジャパン公式ウェブサイト

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著者プロフィール

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka) 近影

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka)

大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わりたいと、1999年に…