足を組めるほど広いサクラの後席と、車中泊も楽々なN-VAN e:の荷室




どちらも軽自動車であるため全長と全幅に差はない。しかし頭上空間の開放性に優れるのは全高は300mm以上も高いN-VAN e:の方だ。一方で後席空間の広さで勝るのは明らかにサクラの方となる。
サクラは室内空間へのスペース侵食が一切なくEV化されているため、使い勝手もベースとなる日産 デイズと変わらない。もちろん後席にはシートスライド機構も備わるため居住空間と荷室空間を自在に調節できる。
4ナンバーの貨物車となるN-VAN e:は後席空間に制限があるうえ、後席にスライド機構は備わらず助手席も前後位置が固定となる。その代わりN-VAN e:は広い荷室空間に大量の荷物を積み込むことが可能だ。
N-VAN e:の2名乗車時の荷室寸法は縦1495mm×横1390×高さ1370mmであり、助手席を畳めば荷室全長は2645mmにまで拡大される。N-VAN e:の使い勝手はガソリンモデルのN-VANと変わらず、助手席側のセンターピラーを廃した広大なドア開口もそのままだ。
ホンダ N-VAN e: e:FUN
ボディサイズ=全長3395mm×全幅1475mm×全高1960mm
ホイールベース=2520mm
車両重量=1140kg
タイヤサイズ=145/80R13(前後)
日産 サクラ G
ボディサイズ=全長3395mm×全幅1475mm×全高1655mm
ホイールベース=2495mm
車両重量=1070kg
タイヤサイズ=155/60R14(前後)
サクラの航続距離180kmに対し、N-VAN e:は245kmで急速充電対応


最高出力は両車ともに64psとなっているが、定格出力はN-VAN e:が39kW(約53ps)、サクラが20kW(約27ps)となっており、N-VAN e:の方が常時高い出力を発揮できる。しかし最大トルクが高いのはサクラの方であり、加速はより力強い。
どちらもターボエンジンを搭載した軽自動車以上にパワフルであり、動力性能に不満は覚えないはずだ。なお、両車ともにFFのみの設定となっている。
一充電走行距離はN-VAN e:が最大245kmであるのに対し、サクラが180kmとなる。搬送業務を主目的とするN-VANは積載物の重量により、どうしても出力と航続距離の低下が起こるため、より大きな定格出力とバッテリー容量が必要となるのだろう。
充電性能はN-VAN e:が6kW出力の充電で約4.5時間、サクラが同じく6kW出力で約4時間だ。しかし、N-VAN e:は50kWの急速充電にも対応しており、約30分で満充電状態にできる。
EVとしてのスペックではN-VAN e:の方が優れているといえよう。しかし、さまざまな使い方が想定される乗用利用では、使用環境によって優劣が容易に逆転する。
背高なN-VANは全面投影面積も大きいため速度域が高いほど電費の低下も大きい。ヒートポンプエアコンシステムが採用されるサクラは、エアコン使用時でも電力消費を抑えられる特徴がある。
ホンダ N-VAN e: e:FUN
駆動用バッテリーの種類=リチウムイオン電池
定格出力=39kW
最高出力=64ps/-rpm
最大トルク=162Nm/-rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)
日産 サクラ G
駆動用バッテリーの種類=リチウムイオン電池
定格出力=20kW
最高出力=64ps/2302-10455rpm
最大トルク=195Nm/0-2302rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)
同じ軽EVでも商用車N-VAN e:と乗用車サクラの違いは大きい


N-VAN e:の最上位乗用グレード「e:FUN」の価格は291万9400円、サクラの上位グレード「G」は308万2200円であり、快適装備が充実したサクラの方が16万円ほど高い。CEV補助金はどちらも同じく57万4000円だ。
快適装備を省いた廉価グレード同士なら、N-VAN e:の「e:L4」が266万9400円、サクラの「X」が259万9300円と価格差は小さくなる。また両車はEVバッテリーの保証内容もおおむね同じだ。
乗用車として使うなら航続距離に余裕があるN-VAN e:の方が安心感は高いが、快適性は雲泥の差となる。とくにN-VAN e:はエンジンがないぶんロードノイズが気になりやすい。
サクラの方は軽自動車とは思えないほどの乗り心地と快適性、上質感が備わっており、人の移動が主体なら断然サクラがおすすめだ。荷物の積載や車中泊などに使う機会が多いなら、それだけN-VAN e:の優位性が高まる。同じ価格帯にある同じ軽EVであっても、両車は対極の存在といえるだろう。
車両本体価格
ホンダ N-VAN e: e:FUN:291万9400円
日産 サクラ G︰308万2200円
