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今日は何の日?■ル・マン24時間レースを目指してTS030マシンのテスト再開

2012年(平成24)年4月30日、4月初めのスパ・フランコルシャン6時間耐久レース(ベルギー)に向けたテスト中のトラブルで中断していたWEC参戦用マシン「TS030ハイブリッド」のテストを再開することを発表した。この結果、TS030ハイブリッドのデビュー戦は、同年6月開催のル・マン24時間レースとなった。

トヨタは2012年からハイブリッドマシンでWECに参戦
耐久レースの歴史は古く、1953年の世界スポーツカー選手権が始まりで、名称やレギュレーションを変えながら長く継続的に開催されていた。この流れを引き継ぎ、2012年に正式名称「FIA世界耐久選手権(WEC)」が発足して世界選手権の仲間入りを果たし、ル・マン24時間レースもWECに含まれることになった。

トヨタは、LMP1と呼ばれる自動車メーカーのワークスや有力プライベーターが独自に開発したプロトタイプレーシングカーで競う最上位クラスでの参戦を目指して、マシン「TS030ハイブリッド」を仕立てた。
当初の計画では、2012年WEC第2戦のスパ6時間レースでデビューする予定だったが、テスト中に1号車がクラッシュしてモノコックを損傷。事故原因はウェット走行時の水漏れによる電気系トラブルだった。

これにより事前の最終テストが行なえず、スパ6時間耐久レースへの参戦をキャンセル。マシン回復の目途が立った2012年4月のこの日、WEC第3戦ル・マン24時間レース参戦に向け、5月4日にフランスのマニクール・サーキットにおいて「TS030ハイブリッド」のテストを再開すると発表したのだ。
キャパシタを利用したTHS-Rで減速回生とパワーアシスト

「TS030ハイブリッド」のシャシーは、カーボンファイバーでアルミニウム製のハニカム材を挟み込んで成形したモノコックフレーム構造で、前後ともダブルウィッシュボーンプッシュロッドの独立懸架が採用された。

ハイブリッドシステムは、デンソー製の約300psを発揮するモーターを組み込んだ、レース用に開発されたTHS-R(Racing)と、ミッドシップ縦置きの3.4L V8 NA(無過給)エンジンの組み合わせ。トランスミッションは、6速シーケンシャルMTが採用された。

蓄電には、大容量のスーパーキャパシタを利用。静電気を利用して電気を蓄えるキャパシタの蓄電量は少ないが、急速で充放電ができるという特性を持ち、短時間で加速と減速を繰り返すレーシングカーには、減速時に一気に充電し、加速時に一気にモーターを駆動できるキャパシタの特性が適しているのだ。

減速回生で得られた電力は、コーナー脱出時の電動アシストとして使われるが、減速回生と電動アシストは前後の2輪どちらかしか利用できないこと、さらに使えるアシストエネルギー量は500kJと定められている。TS030は、後輪での減速回生とパワーアシストを選択した。
TS030ハイブリッドによるル・マン初挑戦はリタイア、2018年に悲願の初優勝
2012年6月、トヨタのTS030ハイブリッドがWEC第3戦ル・マン24時間レースに初挑戦した。予選では3位と5位に入ったが、決勝では2台ともリタイアに終わった。翌2013年のル・マンでは、改良型のTS030ハイブリッドが積極的な走りでトップ争いを展開し、2位と4位で完走を果たした。

続く2014年、TS040ハイブリッドはWEC開幕2戦で圧勝し、ル・マンでは中嶋一貴選手が日本車と日本人ドライバーによる初のポールポジションを獲得したが、決勝では中嶋選手はリタイア。もう1台の3位が最上位となった。2015年には、TS040ハイブリッドが2台参戦したが、ともに完走を果したものの6位と8位に終わった。
2016年のル・マンでは、TS050ハイブリッドが快走を続けて優勝確実とみられた残り5分で失速して優勝を逃すという、今も語り継がれるル・マンの悲運に見舞われ、2017年も優勝には手が届かなかった。

そして2018年、ついにTS050ハイブリッドで挑戦20回目に悲願のル・マン初優勝。セバスチャン・ブエミ、フェルナンド・アロンソと組んだ中嶋選手は、日本車で優勝した初の日本人選手となった。

その後、2023年まで5連覇を達成。しかし、2024年は悔しい2位に終わり、連覇が途切れてしまった。

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ル・マン24時間レースは、先進技術を試す場と言われて、過去にも市販車ではまだ採用されていなく、その後市販化された多くの技術が採用されてきた。現在は、ハイブリッドが主役だが、将来的にはFCEVや水素エンジンの投入が予想される。レースの世界も、カーボンフリーは必然なのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
