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今日は何の日?■日産NV200がイエローキャブに選出
2011年(平成23)年5月3日、日産自動車はニューヨークの次世代タクシーに多目的小型商用車「NV200」が選ばれたと発表した。メキシコで生産されるNV200をタクシー仕様に仕立て、2013年10月からニューヨークを走り始めた。

レジャーにも使えるマルチユースな商用車NV200バネット
「NV200バネット」は、1980年に誕生した小型商用車「ダットサン・バネット」の5代目に相当する。従来の地味な商用車を打破すべく、ビジネスはもちろん、デイリーユースやレジャーにまで幅広く使えることを目指して開発された。

スポーティな2ボックススタイルで、サイズはセレナよりひと回り小さいが商用車らしく全高は高い。室内は、ウエストラインが低く、開放的な横基調と縦基調のシンプルなインパネのデザインを採用。バン(2人/5人乗員)と乗用車系ワゴン(7人乗員)の2タイプが設定され、パワートレインは最高出力109ps/最大トルク15.5kgmの1.6L直4 DOHCエンジンと4速ATおよび5速MTの組み合わせで、駆動方式はFFである。
次世代小型商用車として特徴的なのは、マルチパーパスな用途に使えること。従来のワンボックスタイプのバネットのようにフロントシートをフロントタイヤの上に設置させるのではなく、最近人気のミニバンのようにフロントタイヤの後にフロントシートを設置するスタイルに変更し、乗降性を大きく向上。さらに荷室についても、低いフラットな床と高い荷室高で、クラストップレベルの積載量を誇った。
また3列シートを備えた乗用車系ワゴンは、一般的なファミリーユースとは一線を画して、ユーザーの使用パターンに応じて自在にアレンジできる本格的なマルチパーパスなワゴンである。
2013年10月からニューヨークでNV200タクシーが運用

2011年5月のこの日の発表は、ニューヨーク市庁舎でニューヨーク市と日産自動車の共同会見の形で催された。
イエローキャブに選ばれたNV200タクシーは、メキシコのクエルナバカ工場で生産されたNV200をベースに仕立てられた。実際にニューヨークを走り始めたのは、2013年10月末であり、2015年には東京都内でもNV200タクシーが走り始めた。
イエローキャブの主要な仕様は、以下の通り。

・低排ガスと低燃費を両立させた2.0L直4エンジン
・4名の乗客と荷物のための十分な室内空間
・乗り降りを容易にするスライドドア、乗降用の補助ステップと手すり
・乗る人を開放的な気分にさせるパノラミックルーフ(シェード付き)
・乗客用の電源コンセント(12V)と2つのUSBプラグ
・運転席・助手席サイドエアバッグ付SRSエアバッグシステムおよび前席・後席SRSカーテンエアバッグ
・トラクションコントロール(TCS)とビークルダイナミクスコントロール(VDC)

ニューヨークのタクシーは、年間累計で5億マイル(8億km)の走行距離に達するので、特に耐久性については万全な形で仕立てられた。
●イエローキャブに採用された日本車は、オデッセイとオアシスから始まった
イエローキャブに初めて採用された日本車は、1990年代のホンダ「オデッセイ」と いすゞ「オアシス」であり、2000年代後半にはミニバンのトヨタ「シエナ」が使われた。

2005年には、地球環境問題がクローズアップされたことでハイブリッド車を積極的に導入する気運が高まり、フォード「エスケープ」やトヨタ「プリウス」、「ハイランダー」、「レクサスRX」などのハイブリッド車が多用された。

ニューヨークのNV200イエローキャブは2019年に採用を終え、また東京のNV200タクシーも2021年に運用を終え、同時にNV200タクシー自体の生産も終了した。残念ながら、今後NV200タクシーを見る機会はないかもしれない。


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日産もかつてはタクシー事業に積極的に参入していた時期もあったが、現在はNV200タクシーの生産終了以降は撤退状態になっており、タクシーはほぼトヨタ一強となっている。かつてはタクシーも主要な交通手段のひとつだったが、公共交通機関の整備やライドシェアサービスの台頭などによって、タクシーの需要が大きく減少し、タクシー事業の規模が萎んでしまった。この状況で、それなりにコストのかかるタクシーを作ろうとするメーカーはなくなってしまったのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
