トップ写真は1969年モデル。Cピラーにウインドウを持つ、いわゆる6ライトタイプのサイドビュー。室内を明るくするばかりでなく、良好な後方視界を得ることができる。
1967年11月に、いすゞ1.6ℓクラスのファミリー・セダンとしてデビューしたのが「フローリアン」。前年のモーターショーで「117セダン」として公開されたモデルの生産型である。
いすゞのモデルのなかでフローリアンは、2ℓなみのゆったりとした居住空間を持ちながら、高い経済性とリーズナブルさをテーマとしたファミリーカーである。
スタイリングはイタリアのデザインオフィス「ギア」のイメージスケッチを参考とはしているが、いすゞとしては日本のファミリーカーのニーズを徹底的にマーケティングしたうえでのパッケージングでありスタイリングであると表明していた。
フローリアンの狙いは2ℓセダンなみ、つまり6人が乗車できる居住性でありながら、それを1.5ℓクラスの燃費で実現することにあった。
シルエットはおとなしい印象のセミ・ファストバック。クォーターパネルにつけられた三角窓などがフローリアンの個性であり、また後席の快適な居住空間をアピールする部分でもあった。フロントマスクも角型のヘッドライトをスッキリとしたグリルで結んだ、クリーンでファミリーライクなデザインでまとめられている。
インテリアは、このクラスとしては最大の広さであり、サイドのカードグラスの採用などで、後席の3人がけでも窮屈さを感じさせないものだった。また、70度と大きく開くドアも乗降性の良さという点で注目された。ダッシュボード部は、楕円を基調としたデザインで木目仕上げとパッド類の多用でソフトなインテリア空間を演出している。
エンジンは、ベレットGT用をベースとしてフローリアン用に開発された、水冷直列4気筒、アルミ・ヘッドのOHVを採用したのは、コスト面とともに、低回点から発揮する粘り強いトルク特性がフローリアンにマッチしていたからだという。
最高出力は84ps/5200rpm、最大トルクは12.4kgm/2600rpm。2ℓクラスの外寸でありながら940kgと軽量に収められたこともあり、燃費は18km/ℓを得ている。
ボディはモノコック構造、サスペンションはフロントにダブルウィッシュボーン+コイルスプリング、リヤは非対称半楕円の6枚リーフの構成。ロール剛性を確保するとともに、前後ともに筒型複動オイルダンパーを装備、なによりも、ファミリー・セダンとしての乗り心地を重視していた点が特徴だ。
SPECIFICATIONS:FLORIAN Colum shift(1967)
〈寸法重量〉
全長×全幅×全高:4250×1600×1445mm
ホイールベース:2500mm
トレッド前/後:1310/1300mm
車両重量:940kg
乗車定員:6人
〈エンジン〉
直列4気筒OHV
ボア×ストローク:82.0×75.0mm
総排気量:1584cc
最高出力:84ps/5200rpm
最大トルク:12.4kgm/2600rpm
〈トランスミッション〉
3MT
〈駆動方式〉
RWD
〈ステアリング型式〉
ボールナット式
〈サスペンション〉
前・ダブルウィッシュボーン式、後・リジッド式
〈ブレーキ〉
前・2リーディング式ドラム、後・リーディングトレーリング式ドラム
〈タイヤサイズ〉
5.60-13-4P
〈タイヤサイズ〉
150km/h
〈価格・当時〉
64.3万円