スバルのストロングハイブリッド、その燃費性能を実測。カタログ値の18.9km/Lを超えられるのか!?【スバル・クロストレックS:HEV】

「走りが優先、燃費は二の次」というイメージが強かったスバル車だが、それも過去の話になりそうだ。スバルは渾身のストロングハイブリッド「S:HEV」を開発し、クロストレックから搭載を開始している。WLTCモード燃費は18.9km/Lと優秀な値だが、普段使いでの燃費はどれほどのものだろうか。気になったので、確かめてみた。

約500km走った際の燃費は18.4km/Lを達成。ワンタンクで1000km以上の走行が可能

スバル初のストロングハイブリッドシステムを積むクロストレックのS:HEVには、冬の青森で触れている。そのときのドライブで燃費が良さそうな感触は得られたが、本当にいいのかどうか。気になって仕方なかったので(やや誇張)東京・恵比寿のスバル本社で試乗車をお借りし、自動車メーカー主催の試乗会(というか、スバル・フォレスターの試乗会)に出かけるなど、筆者にとって普段使いでの燃費を確かめた。

2022年9月、XVはフルモデルチェンジに伴って国内でのモデル名もクロストレックに変更。2024年12月からはストロングハイブリッド搭載モデルがラインナップに加わった。
試乗モデルは「Premium S:HEV EX」。車両本体価格は405万3500円。

先に4日間で482.6km走行した際のメーター表示上の燃費をお知らせしておくと、18.4km/Lだった。WLTCモード燃費は18.9km/Lである。クロストレックS:HEVの名誉のため(?)に記しておくと、316.4km走行時点では19.4km/Lを記録していた。その後、撮影のために少し動かしては停止を繰り返したりしたために数値が落ちてしまったと考えられる。

「Premium S:HEV EX」のメーターは12.3インチフル液晶メーター(パワーメーター付き)。左下の燃費計は18.4km/Lを示している。
316.4km走行時点では、最良燃費の19.4km/Lを達成していた。

スバル車としてはなかなか優秀な数字だと思うが、いかがだろう。ちなみに手持ちの記録を振り返ってみると、アウトバック(1.8L水平対向4気筒ターボ)で164.5km走ったときの燃費は12.2km/L、先代インプレッサ(2.0L水平対向4気筒自然吸気)で159.0km走ったときの燃費は13.0km/Lだった。

2.5L水平対向エンジンと、発電用/駆動用のふたつのモーターを内蔵したトランスアクスルで構成されるスバルのストロングハイブリッド。後輪への駆動力はプロペラシャフトによって伝達される機械式AWDを採用する。
フロントサスペンション:ストラット
リヤサスペンション:ダブルウイッシュボーン

クロストレックの燃料残量計はメーターの右下にある。150km程度走っても目盛りは少しも減っておらず、それを助手席の住人から「全然減ってないじゃん。斜めから見ているから減っていないように見えるだけ?」との指摘があった。クロストレックのメーターは液晶ディスプレイ上の表示であって、見る角度によっては針の位置が違って見えた昭和のメーターではないのだが。

しかし確かに目盛りは減っていなかった。S:HEVの高効率のハイブリッドシステムの恩恵と、63Lも容量がある燃料タンクのおかげである。満タン後の航続可能距離は1070kmを示していた。スバルが説明するとおり、ワンタンク1000kmの実力はあると見ていいだろう。給油のインターバルが短くて済むのはありがたい。

ナビの新機能「what3words」を試してみたけれど…

助手席の住人ついでに記しておくと、クロストレックに乗り込んだ途端、複数人が11.6インチセンターインフォメーションディスプレイについて、感嘆の声を発した。「デカイ」と。縦型の大型ディスプレイは2020年のレヴォーグから採用されているが、初めて見る人にとっては依然とインパクト大なようである。

11.6インチセンターインフォメーションディスプレイはクロストレック全車に標準装備。

信号待ちなどでの停車中に停止状態を維持してくれるオートビークルホールド(AVH)のスイッチは、センターインフォメーションディスプレイの下部に常時表示されている。信号待ちなどでブレーキペダルを踏みつづけておく必要がなく楽なので、筆者は常時使用派だ。スバル車の場合はいったんシステムをオフにすると、運転中はオンにしておいたAVHもオフになってしまい、次にシステムを起動した際に再びタッチして機能をオンにする必要がある。視界に入りにくい位置に表示があるせいか、オンにし忘れること度々で、AVHがオンになっていないのに信号待ちの際にブレーキペダルから足を離してしまい、ヒヤッとすることがあった。メモリー機能があったほうがありがたい、と感じる派である(4日間では結局、慣れずじまいだった)。

センターインフォメーションディスプレイの左下にオートビークルホールド(AVH)のスイッチが設けられている。

今回、ナビシステムで目的地を設定するのにwhat3wordsを多用した。世界を3m四方の正方形に区切り、3つの単語を割り当てることで正確な位置を特定できるサービスだ。目的地を設定するには、あらかじめwhat3wordsのウェブサイトやスマホアプリを利用して、目的地に設定する場所に対応する3つの単語を調べておく必要がある。

「目的地設定」のメニューの中に「what3words」の項目がある。

今回の試乗期間中は、スマホアプリで目的地を検索→3つの単語を調べる→調べた3つの単語をタッチパネルで入力というプロセスで目的地を設定した。スマホで検索したら、その情報を通信でクルマに送ることができれば、手入力の手間が省けて楽なのに……と思ったが、できるのかできないのかは未確認である。

3m四方に区切られたエリアに三つの単語が割り振られ、目的地をピンポイントで指定できるのだが…。

で、たまげたのは検索履歴を表示したときだ。what3wordsで目的地設定をした場所にもう一度向かう必要が出てきたので、検索履歴を表示させた。目的地の名称なり住所なりがリスト表示されるのかと思いきや、呪文(3つの単語)の羅列……。どの呪文がどの場所だったかなんて、覚えていないでしょ。ひとつ選択しては「ここじゃない」を繰り返したのであった。もっとスマートな方法があるのかどうかは未確認である。

検索履歴でも抽象的な文字の組み合わせが表示されるので、目的地のイメージが湧かなかった。

しかし収穫は、クロストレックS:HEVの燃費がいいのを確認できたことだった。条件が良ければ、20km/Lを記録しそうな感触はあった。WLTCの郊外モードは20.6km/Lなので、ポテンシャルはある。青森での試乗時にも感じたことだが、快適なドライブの邪魔をするようなことはない。実際には刻々と変わる運転状況に応じてEV走行をしたり、エンジンを始動して発電しながら走行用モーターでアシストしたり、アクセルオフした途端にエンジンを切ったりと、目まぐるしく制御を切り換えている。

煩雑な制御を行なっていることを、一切ドライバーに(ましてや助手席や後席の乗員に)意識させない。ドライバーはただ、気持ち良く運転するのみである。燃費が良く、燃料残量計の目盛りがなかなか減っていかないのは、精神衛生上とってもよろしい。そのことが、4日間の付き合いで確認できた。

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S:HEVモデルは、専用の18インチアルミホイール(ダークメタリック塗装+切削光輝)を履く。タイヤは225/55R18サイズのオールシーズンタイプ。

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インパネにはスポーティなカーボン調の加飾や質感の良いソフトパッドを採用。

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フロントシートは骨格から新設計したもの。仙骨を支持するブラケットの追加により、骨盤をしっかりと支えて頭の揺れを抑制する。

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クロストレックの後席。フロントシートの形状の変更により、膝まわりのゆとりは先代より7mm増。

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身長184cmの乗員が座っても、ご覧のとおりの空間が確保されている。

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センターコンソールには、車両との通信用のUSBポート(タイプCとタイプA)を設置。AUX(音声)入力端子も備わるのは珍しい。

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後席用のUSB電源は、タイプAとタイプCを1基ずつ用意。

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ラゲッジルームの容量は315L。

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荷室の床下の前側は駆動用バッテリーが置かれている。

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ルーフに荷物を載せ下ろしする際に、足を乗せやすいようステップ面を広く、平らに設計。表面には山をモチーフにした滑り止めを入れるなど、遊び心もプラス。
SUBARU クロストレック Premium S:HEV EX
全長×全幅×全高:4480mm×1800mm×1575mm
ホイールベース:2670mm
車重:1660kg
サスペンション:Fストラット式/Rダブルウィッシュボーン式
駆動方式:4WD
エンジン
形式:水平対向4気筒DOHC+モーター
型式:FB25
排気量:2498cc
ボア×ストローク:94.0mm×90.0mm
圧縮比:11.9
最高出力:160ps(118kW)/5600pm
最大トルク:209Nm/4000-4400rpm
燃料供給:DI
燃料:レギュラー
燃料タンク:63L
駆動用モーター:MC2型交流同期モーター
最高出力:88kW(119.6ps)
最大トルク:270Nm
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
 容量1.1kWh
トランスミッション:リニアトロニック
燃費:WLTCモード 18.9km/L
市街地モード15.4km/L
郊外モード20.6km/L
高速道路モード19.7km/L
車両本体価格:405万3500円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…