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乗員数が他の護衛艦よりかなり少ない
おおよそ年2隻のペースで進水と就役が進んでいる「もがみ」型。計12隻建造の計画のうち、現在までに11番艦「たつた」までが進水し、8番艦「ゆうべつ」までが就役している。
あらためて「もがみ」型について説明すると、基準排水量3900トン、全長133mのコンパクトな艦ながら、護衛艦として初めて機雷戦能力を与えられるなど、多様な能力を持つことで知られている(これまで機雷に対する能力は掃海艦や掃海艇など専用の艦艇に限られていた)。また、対レーダー・ステルスを意図した傾斜した平面で構成された船体や、「UNICORN(ユニコーン)」の名称で知られる一本角の複合アンテナなど、外観も従来の護衛艦とは一線を画すものだ。

「もがみ」型の特徴としては徹底した自動化・省人化も知られている。海上自衛隊は以前から艦艇乗員の充足率に苦労してきたが、少子化による隊員の募集難といった状況もあり、今後ますます厳しくなることが予想されているためだ。「もがみ」型の乗員は約90名であり、(単純比較は難しいものの)同規模の護衛艦より、おおよそ4~5割程度少ない。
幹部も曹士も一緒に科員食堂
さて、機能面で省人化を果たした「もがみ」型だが、人手が少なくなったことから日常面でも、他の護衛艦との違いが生まれているようだ。よく知られているところでは、幹部と曹士が同じ科員食堂で食事をするようになったことが挙げられる。これまで海上自衛隊の艦艇では、幹部は士官室で、若い隊員から選ばれた士官室係の給仕を受けて食事をしていたが、人数が少ないなか隊員の負担軽減のため、変更されたのだ。

また、これまでは停泊中、艦内に令達する際に、舷門(船の入り口)に立つ当番の隊員がサイドパイプという笛を吹いていた。放送と一緒に流れる「ピ~ヒョロ~」という独特の笛の音をご存じの人もいると思うが、このサイドパイプも「もがみ」型では吹いていない。従来、舷門の当番は第1・第2分隊(砲雷科、船務科、航海科)の隊員があたり、それぞれの科の教育課程でサイドパイプの吹き方を習っていたのだが、「もがみ」型では第1・第2分隊以外の隊員も舷門に立つことになったためだ。


こうした変化は乗員が少ないという「もがみ」型の事情もあるが、海上自衛隊全体として停泊中はなるべく乗員を休ませ、艦には限られた当直員のみを残すという方針があるようにも思える。たとえば、大型の艦でも停泊中は隊員の負担軽減のため、幹部も科員食堂で食事をするようになった。少子化という避けられない事態のなかで、さまざまな組織文化を見直すときが来ているのかもしれない。