最新VWゴルフ8のホットモデルGTI 「見た目も動きも」新世代に進化している

ゴルフGTIの場合「最新は最良だ」人工的な「よく曲がる」感覚ではなくナチュラルに「よく曲がる」

VWゴルフGTI 車両本体価格○466万円
VWゴルフの伝統芸と言っていいホットモデル、GTIが最新世代のゴルフ8にも登場した。歴代の作法を守りながら、確実に新世代へ進化した最新のGTI。その走りの質は如何に?
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)

ゴルフGTIってどんなモデル?

VWゴルフGTI 全長×全幅×全高:4295mm×1790mm×1465mm ホイールベース:2620mm

フォルクスワーゲン(VW)ゴルフは2021年のモデルチェンジで8代目に移行し、グレード名称を一新した。ガソリンエンジンを搭載する基本シリーズは従来、TSI Trendline(トレンドライン)、TSI Comfortline(コンフォートライン)、TSI Highline(ハイライン)を軸に構成されていたが、新型のゴルフ8はActive(アクティブ)系とStyle(スタイル)、R-Line(アールライン)で構成される。ゴルフ5まではGLiというグレード名が残っており、むしろこちらのほうに強いなじみを感じる人がいるかもしれない。

最初のGTIは初代ゴルフが1974年にデビューした際に、社内の有志がスポーツモデルを開発したことで生まれた。

初代から変わらず存在し、多くの支持を集めているのが、実用性の高さはそのままに、スポーツ性を高めた「GTI」だ(日本に正規輸入されたのは2代目から)。最初のGTIは初代ゴルフが1974年にデビューした際に、社内の有志がスポーツモデルを開発したことで生まれた。あまりにも完成度が高かったのでフランクフルトモーターショーで展示したところ、反響が大きかったため1976年に5000台限定で販売。ところがあっという間に売り切れ、最終的には初代ゴルフのGTIだけで46万台も売りさばいたというエピソードが残る。

GTIらしさを演出するエクステリア

以来、GTIはゴルフにとってなくてはならない存在になった。初代から7代目までのGTIの累計販売台数は230万台以上になるという。国内での販売台数は6万4000台超(2代目〜7代目)だそう。GTIからGTIへの乗り換えユーザーが多いのも特徴で、それだけ信頼が厚いということだ。

新型GTIを開発するにあたってのターゲットは、次の5点である。

・俊敏かつ自然なハンドリング特性による、優れたドライビングプレジャー
・高いコーナリングスピードを実現するグリップ力
・ワインディングからトップスピードまで、正確で安定したドライビング
・リニアで、思いのままに操れるレスポンスの良さ
・ロングドライブにも適した、日常的な使い勝手の良さ

エクステリアとインテリアには、歴代のGTIが築き上げてきた“お約束“がちりばめられている。左右のヘッドライトをつなぐように配された赤い差し色がその代表例。左右2本出しのテールパイプはもはや、GTIの証といってもいいだろう。インテリアに目を移すと、ヘッドレスト一体型のスポーツシートは、シート座面と背もたれにタータンチェック柄のファブリックがあしらわれている(オプションでレザーシートを選択可)。まごうことなき、GTIの伝統だ。

左右2本出しのエキゾースト
シートには伝統のチェック柄が
Cd値は0.275を達成!

ゴルフ8のGTIに特化した特徴を拾い上げると、大型のフロントバンパーが専用だ。メッシュパターンのワイドなグリルには、X字を描くフォグランプが埋め込まれており、これが新型GTIに独特の表情を与えている。後端がわずかに跳ね上がったルーフスポイラーもGTI専用アイテムで、拡張されたアンダーボディパネルや専用ディフューザーなどと合わせ、空気抵抗係数(Cd値)は先代の0.3から0.275に改善している。また、先代GTIはリヤのリフト(揚力=車体を浮かせる向きの力)がフロントに比べて大きかったが、新型ではこれを是正し、高速域でのスタビリティ向上を図った。デジタルメーターのグラフィックもGTI専用だ。

ストラット式フロントサスペンションはロワーアームのブッシュを改良。さらに、アルミ製サブフレームの採用で3kg軽量化した。4リンク式のリヤサスペンションは、ロワーウイッシュボーンの改良に加え、新開発のホイールマウントを採用。スプリングレートはフロントが5%、リヤが15%引き上げられた。一般論でいえば、よりリヤのタイヤを働かせる方向だ。これら、GTI専用サスペンションを採用することにより、ノーマルゴルフ比で15mmローダウンしている(計測条件などの影響で、全高は−10mm)。

タイヤは235/35R19サイズ
タイヤサイズは235/35R19(標準は225/40R18)
リヤサスペンションは4リンク式
フロントサスペンションはマクファーソンストラット式。サブフレームはアルミ製になる。
キャプション欄・画像は任意のサイズにドラッグ可能

新型GTIで新たに採用したのが、ビークル・ダイナミクス・マネージャーだ。これは、電子制御式フロントデファレンシャルロックのXDS(内輪側のブレーキ制御で旋回方向のヨーモーメントを発生させる)と電子制御油圧式フロントデファレンシャル、それにオプションのアダプティブシャシーコントロールDCC(可変制御ダンパー)を制御する技術だ。ドライバーは、標準装備されるドライビングモードで「カスタム」を選択し、画面上でDCCの項目をタッチすることで、15段階あるダンパーの減衰力設定を任意に切り換えることができる。

「コンフォート」を選択するとDCCは下から4番目、「スポーツ」は下から12番目にセットされるが、カスタムではコンフォートよりソフト側にも、スポーツよりハード側にも変更することが可能。これ、試してみたら、変化がわかりやすく楽しい。同時に、ダンパーの減衰力ひとつで乗り味がこれほど変わるものかと感心する。路面状況や走りのステージに合わせて切り替えを楽しむのがいいだろう。

evo4になったEA888型2.0ℓ直4ターボエンジン

エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ エンジン型式:EA888 evo4型 排気量:1094cc ボア×ストローク:82.5mm×92.8mm 圧縮比:9.6 最高出力:245ps(180kW)/5000-6500rpm 最大トルク:370Nm/1600-4300rpm 過給機:ターボチャージャー 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) 使用燃料:プレミアム 燃料タンク容量:51ℓ

2.0L直列4気筒ターボエンジンを搭載するのは先代GTIと同じだが、アップデートを受けている。先代GTIはEA888 evo3を搭載していたが、新型はEA888 evo4を搭載する。大きな違いは直噴インジェクターの変更で、従来の最大噴射圧は200barだったのに対し、新型は350barになった。より高圧で噴射できるようになったため、燃焼制御の幅が広がり、出力とトルクの向上が可能になったのだろう。

最高出力は先代比11kW(15ps)アップの180kW(245ps)、最大トルクは先代比20Nmアップの370Nmを発生する。フロント2輪のみで駆動力を路面に伝達することを考えれば、限界に近い数値だろう。もっと太いタイヤやもっと大きな垂直荷重を掛ければ、もっと大きな力を路面に伝えることができるかもしれないが、そのためにはクルマが大きく重くなってしまい、GTIが受け継いできた良さを失ってしまう。

EA888 evo4に組み合わせるトランスミッションは、従来の湿式6速DCT(VWの呼称ではDSG)から、新型では湿式7速DCTにアップデートされた(ゴルフ7のGTI Performanceは7速DCTだった)。参考までに、100km/h走行時のエンジン回転数は1800rpm近辺である。

DCCとXDS、その走りは?

駆動方式:FF WLTCモード燃費:12.8km/ℓ 市街地モード 8.9km/ℓ 郊外モード 13.2km/ℓ 高速道路モード 15.5km/ℓ ボディカラーはドルフィングレーメタリック

試乗車はDCCパッケージとセットで装着される19インチサイズのアルミホイールを装着していた。タイヤサイズは前後とも235/35R19である(標準は225/40R18)。横から眺めると、ゴムのベルトを巻き付けたように見え、ハイトは低い。「大丈夫だろうか」とやや不安を感じながら走り出したが、なんのことはない。まったく問題ない。ボディは余裕をもってサスペンションの動きを受け止めているし、車輪はしっかり動き、ダンパーはしっかりと入力を減衰させている。

箱根の山のなかの、とてつもなく荒れた路面を行き来したが、クルマがドタバタ、ガタピシと弱音を吐くことがないので、安心して自分のペースでドライブを続けることができた。それに、よく曲がる。XDSが介入しているのだろうが、人工的な「よく曲がる」感覚ではなく、ナチュラルによく曲がる。キビキビ動いて、実に気持ちがいい。サーキットでも走れば別だろうが、曲率の小さなカーブが連続する山道では、応答遅れや力不足によるストレスは一切感じなかった。動きの良さは、進化した可変ギヤレシオステアリングの効果もありそうだ。

ドライブモードで「スポーツ」を選択すると、エンジンのエキゾースト音が脈動感のある野太いサウンドに切り替わる。ちょっと過剰かなと感じたら「カスタム」モードで音だけおとなしくし、DCCだけハードに設定することができるし、乗り味は変えずに音だけ派手にもできる。自分好みの設定にできるのがありがたいし、おもしろい。

ゴルフのGTIはやっぱりゴルフのGTIで、伝統の味はしっかり受け継いでおり、GTIからGTIに乗り換えても満足できるに違いない。見た目も動きも格段に洗練されており、「世代が違う」ことをはっきりと乗り手に感じさせる。他のグレードにも総じて言えることだが、ゴルフGTIの場合、最新は最良だ。

車両重量:1430kg 前軸軸重900kg 後軸軸重530kg トレッド:F1535mm/R1515mm 最小回転半径5.1m メーカーオプションDiscover Proパッケージ:19万8000円 テクノロジーパッケージ:17万6000円 DCCパッケージ:22万円
VWゴルフGTI
 全長×全幅×全高:4295mm×1790mm×1465mm
 ホイールベース:2620mm
 車重:1430kg
 サスペンション:Fマクファーソンストラット式 R4リンク式
 エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
 エンジン型式:EA888 evo4型
 排気量:1984cc
 ボア×ストローク:82.5mm×92.8mm
 圧縮比:9.6
 最高出力:245ps(180kW)/5000-6500rpm
 最大トルク:370Nm/1600-4300rpm
 過給機:ターボチャージャー
 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
 使用燃料:プレミアム
 燃料タンク容量:51ℓ
 トランスミッション:7速DCT
 駆動方式:FF
 WLTCモード燃費:12.8km/ℓ
  市街地モード 8.9km/ℓ
  郊外モード 13.2km/ℓ
  高速道路モード 15.5km/ℓ
 車両本体価格○466万円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…