護衛艦「あきづき」型は、「はつゆき」型の代替用として建造された汎用護衛艦だ。その「はつゆき」型とは1979年(昭和54年)に起工し、進水は翌80年(昭和55年)、竣工は82年(昭和57年)。そして同型最終12番艦「しまゆき」の竣工が1987年(昭和62年)と、東西冷戦間とその終焉時期にかけて整備された汎用護衛艦(DD)になる。「八八艦隊(8艦8機体制)構想」での第1世代汎用護衛艦という存在だった。そして「あきづき」型は古くなった「はつゆき」を代替し、「はつゆき」以降に登場している他の汎用護衛艦と合わせ艦隊の戦力基盤とするものだ。
1番艦「あきづき」の起工は2009年(平成21年)、進水は翌2010年(平成22年)、竣工は2012年(平成24年)。同型で4隻が造られ、最終4番艦「ふゆづき」の竣工が2014年(平成26年)と、艦齢は若く、まだ新鋭艦と紹介してもいいような世代の護衛艦だと思う。当然、設計や搭載装備などは最新の仕様だ。
護衛艦「あきづき」型はその先代にあたる「たかなみ」型の改良発展型になる。基本的な運用構想は従来のDDと同様に艦隊の主力を務め、個艦性能には各種の洋上戦闘に対応するバランスのとれたスペックを求めたもの。加えてとくに防空能力の強化に重点を置いたのが「あきづき」型の特徴になっている。
たとえば、共同行動中のイージス艦が弾道ミサイル防衛(BMD)任務に専従対応しているような状況下で、そのイージス艦の防空や艦隊全体の防空を部分的に補完する役割だ。僚艦防空艦などと呼ばれる存在で、その防空機能面からミニ・イージスなどとも呼ばれることもあるようだ。
全体デザインは現代艦に求められるステルス性を考慮したもの。艦橋などの上部構造物や煙突などは直線で形成され、面は傾斜している。これで相手からのレーダー波をそらし反射面積を小さくする。そして艦橋上側面と後部構造物の上部に「FCS-3A多機能レーダー」を装備している。このレーダーが本艦の高性能な目となっている。同レーダーと発展型のESSMシースパロー・ミサイルの組合せにより相手の攻撃を防ぐ。
FCS-3Aはヘリコプター搭載護衛艦(DDH)「ひゅうが」型が搭載するFCS-3の改良型になる。「あきづき」型はこれを艦橋上部と後部ヘリ格納庫上の4ヵ所に装備した。従来のイージス艦は艦橋周辺に集中配置したが、本艦では分散しているのが特徴だ。このレーダーで自艦を中心に各々半円周をカバーすることになるわけだ。
防空システムは相手のミサイルや戦闘機など航空戦力による脅威に対して、同時複数の目標に対処できるという。旧来のミサイル護衛艦(DDG)では1〜2目標にのみ対処できていた能力を大幅に向上させたシステムになっているという。
搭載された武装は、主砲となる127mm単装砲1門を前部甲板に置いた。主砲の後方にあるVLS(垂直発射装置)には対空ミサイルESSMを64発、対潜用アスロックを16発搭載できる。対艦ミサイルSSMは4連装発射機2基を中央部の甲板に装備している。自艦防衛用の高性能20mm機関砲CIWSは艦橋前部と後部構造物上部に各1基ずつ装備。そして哨戒ヘリコプターSH-60Kを後部飛行甲板で運用でき、通常は1機のみだが、格納庫は同時に2機を搭載、運用できるスペースを持つ。
護衛艦「あきづき」型は防空重視タイプの汎用護衛艦だと冒頭で紹介したが、対潜能力も充実させている。大容量の洋上通信システムや深度可変式ソナーシステムなどを組み合わせて行なう「マルチスタティック対潜戦」に対応する近代化改修を進めた。これは行動中の僚艦のソナー(音波探知機、艦首水面下のハル・ソナー)から発せられた発信音に対する目標からの反響音を自艦で受信し情報処理するもの。僚艦の索敵情報を取得(共有)して攻勢するシステムだ。2番艦「てるづき」以降では垂直発射方式の魚雷投射ロケットを発射可能となっている。
スペック) 主要要目 基準排水量 5,050t(2番艦「てるづき」以降5,100t) 主要寸法 151×18.3×10.9×5.4m(長さ、幅、深さ、喫水) 主機械 ガスタービン4基2軸 馬力 64,000PS 速力 30kt(約55.6km/h) 主要兵装 高性能20mm機関砲×2、VLS装置一式、127mm単装速射砲×1、3連装魚雷発射管×2、SSM装置一式、哨戒ヘリコプター×1 乗員 約200名