ダイハツ・ロッキー ターボでもハイブリッドでもないけれど、1.2Lエンジンモデルは中身が濃いのだ

ダイハツ・ロッキー Premium G 車両本体価格○205万8000円
ダイハツ・ロッキーのパワーソースは3種類ある。話題のシリーズハイブリッド「e-SMART HYBRID」と1.0Lターボ、そして1.2ℓ直3NAエンジンだ。コストコンシャスなエントリー向けと思われがちだが、このエンジン、なかなか中身が“濃い”のだ。
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
ボディカラーはブラックマイカメタリック×コンパーのレッド。タイヤサイズは195/60R17サイズ

1.2L直3自然吸気エンジンも技術満載

ダイハツは「小さなクルマに適した」シリーズ方式のハイブリッドシステムを新たに開発し、ロッキーに搭載して発売した。2021年11月1日のことだ。「e-SMART HYBRID(イー・スマート・ハイブリッド)」と名づけたハイブリッドシステムの開発にあたっては、1.2L直列3気筒自然吸気(NA)エンジンを新たに開発して発電専用に用いている。と同時に、この新開発エンジンを搭載する「ガソリン車」を設定。既存の1.0L直列3気筒ターボエンジンと合わせ、ロッキーは3種類のパワートレーンを持つに至った。

ダイハツはこれら3種類のパワートレーンに関し、次のようなユーザーを想定している。

1.2L HEV(ハイブリッド車)→環境・燃費・先進感を求めるユーザー
1.2L NA→街乗りメイン。価格重視のユーザー
1.0Lターボ→走りにこだわるアクティブなユーザー

1.2L HEVと1.2L NAは2WD(FF)、1.0Lターボは4WDである。最上級グレードのPremium G同士で車両価格を並べてみると、次のようになる。カッコ内は1.2L HEVとの価格差だ。

1.2L HEV Premium G:234万7000円
1.2L NA Premium G:205万8000円(−28万9000円)
1.0Lターボ Premium G:231万8200円(−2万8800円)

1.2L NAには隠し球があって、Lというグレードの価格は166万7000円だ。運転席にシートリフターが付かないとか、ガラスが遮音ガラスでなくなるとか、フロントコンソールサイドのシルバー加飾が付かないとか、アルミホイールではなくてホイールキャプになるとか、スピーカーはフロントだけになるなど(リヤは付かない)装備は簡素化されるが、価格を重視するユーザーには気になるグレードだろう。

室内長×幅×高:1955mm×1420mm×1250mm
ダイハツ得意のD-CVTを使う。CVTの変速比は2.800〜0.425
Premium Gの駐車ブレーキは電気式(XとLは機械式)

室内の広さも荷室の広さも上級グレードと変わらない。もちろん、新たに開発されたエンジンのスペックも上級グレードと同じだ。そのエンジン(WA-VE型)、1t前後の車重を持つクルマを走らせるのに必要な動力と燃費のバランスから排気量が導きだされた。最もバランスに優れているのが1.2Lだという判断である。もっと排気量が大きければ動力性能は向上するが、燃費は悪化する。逆に、もっと排気量が小さいと、登坂性能や荷物の積載時に力不足になるという。

コンベの1.2LがVE型、ハイブリッド発電用がVEX型
エンジン形式:直列3気筒DOHC エンジン型式:WA-VE型 排気量:1196cc ボア×ストローク:73.5mm×94.0mm 圧縮比:12.8 最高出力:87ps(64kW)/6000rpm 最大トルク:113Nm/4500rpm 燃料供給:PFI 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:36ℓ

排気量が決まったら、次は気筒数だ。1.2Lの排気量の場合、現実的には3気筒と4気筒が考えられる。ダイハツは「効率」の観点から3気筒を選択した。ロッキーに設定のある1.0Lターボ車が搭載する1KR-VET型は排気量996ccの3気筒で、1気筒あたりの容積は332ccになる。エンジン開発担当者は以前から、「もう少し大きくしたい」と思っていたという。効率を考えると、1気筒あたりの容積は400ccから500ccが適当とされているからだ。排気量が1.2Lなら単筒容積は400ccになり、ちょうど効率のいいゾーンに入る。

新開発の1.2ℓ直列3気筒DOHCエンジン WA-VE型

単筒容積が決まったら、次にボア(シリンダーの直径)とストローク(行程)だ。ストロークは長いほうが、燃焼室の容積に対する表面積の比率が小さくなり、冷却損失が減る。しかし、あまり長くするとクランクの振り回し径が大きくなってパッケージングが厳しくなるし、サイドフォース(シリンダー壁面にかかる力)が大きくなって損失が増えてしまう。搭載性や損失の観点から、WA-VEのボアは73.5mm、ストロークは94.0mmに落ち着いた。ボア/ストローク比(SB比)は1.28で、かなり大きな部類に入る。SB比が1.2を超えると、「頑張っているな」「熱効率高そうだな」とのイメージが湧く。そんな数字だ。

ストレートな吸気ポートを採用したのも、WA-VEの特徴だ。タンブルと呼ぶ空気の乱れを作り出すためで、合わせて、薄型バルブシートを採用した。従来のようにバルブシートが厚いと、空気の流れを邪魔して狙いどおりのタンブルを作り出すのが難しいからだ。タンブルを強化するのは、熱効率を高めるためである。空気と燃料が混ざった混合気がタンブルによって強く乱れることによって、燃焼が高速化する。つまり、早く燃え終わるため、燃焼エネルギーが圧力に変換される効率が高くなり、熱効率が高くなるというわけだ。熱効率の向上分(裏を返せば、無駄が少なくなる)は燃費に振ることもできるし、出力に振ることもできる。

高効率な高速燃焼を実現する「高タンブルストレートポート」。タンブルとは縦流れの渦のこと。バルブはラッシュアジャスター付きローラーロッカーアーム式
インジェクターは、ポートそれぞれに1本ずつのデュアルインジェクター

他にも、1気筒あたり2本のインジェクターを配置したデュアルポートや、そのインジェクターから噴射する噴霧を低ペネトレーションにして、燃焼促進と排ガスのクリーン化を図るなど、練りに練られた技術がたくさん投入されている。低ペネトレーションとは、噴霧の到達距離が短いことを意味し、従来は水鉄砲のようにズバッと噴射したターゲット噴射だった。フワッと加湿器のように拡散する噴霧にすることでポートなどに付着させず、うまく気流に乗せて燃焼室に送り込み、直噴に近い吸気の冷却効果も得る。噴いた燃料を徹底的に燃やして排ガスもクリーンにする技術だ。

3気筒エンジンの課題は、すりこぎ運動のような特有の振動が出てしまうことで、手っ取り早いのはバランスシャフトを付けて振動を打ち消すことだ。だが、ダイハツのエンジン開発陣はそれをいやがった。バランスシャフトを付けると重量は増えるし、フリクションも増え、部品が増えるのでコストも上がるからだ。では、どうやって解決したかというと、運動系部品を軽くして振動を抑えたのである。重い物を振り回すと振動は大きくなるが、軽ければ小さくなるからだ。

1.2ℓNAとは思えない力感

全長×全幅×全高:3995mm×1695mm×1620mm ホイールベース:2525mm 車重:980kg
WLTCモード燃費:20.7km/ℓ
 市街地モード 15.9km/ℓ
 郊外モード 21.9km/ℓ
 高速道路モード22.9km/ℓ

「鈍いんじゃないの?」と指摘されると返す言葉もないが、1.2L NA車(Premium G)に乗って片側2車線の幹線道路を走り始めた途端、「本当にこれ、1.2L?」と首をかしげたくなった。「1.5Lです」と言われても信じたかもしれない。発進が力強いのは、低速トルクが充分に出ているからだろう。組み合わせるトランスミッションはダイハツが自社開発したD-CVTで、低速域はコンベンショナルなベルト式CVTとして機能。高速側になるとシームレスにバトンタッチしてギヤ駆動になる。レシオカバレッジ(変速比幅)の拡大と伝達効率の向上を実現する、実にクレバーなトランスミッションだ。

賢いだけでなく、フィーリングもいい。エンジンが充分に力を出しているのが大きいのだろうが、従来のCVTに見られた、エンジン回転だけウワーンと上がって後から車速がついてくる、いわゆるラバーバンドフィールが顔を出すことはない。アクセルペダルを踏み込むと、エンジン回転と車速がリンクしてスムーズに加速していく。地上レベルにある首都高速の料金所を通過して高架の本線に合流するシーンでも、苦しげな表情を見せずに加速し、急な上り勾配での合流をこなしてしまう。

ごく短い試乗時間だったので、燃費のレベルを確認するには至らなかったが、ロッキーのハイブリッド車には叶わないものの(当然だ)、20km/Lはごく身近に感じられた(WLTCモード燃費は20.7 km/L)。シリーズ方式のハイブリッドに注目が集まりがちだが、コンベンショナルなガソリン車も、走りと燃費と価格の面で、かなり高いレベルでバランスのとれた仕様である。

E SMARTHYBRIDより90kg軽い
ダイハツ・ロッキー Premium G (2WD)
 全長×全幅×全高:3995mm×1695mm×1620mm
 ホイールベース:2525mm
 車重:980kg
 サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
 エンジン形式:直列3気筒DOHC
 エンジン型式:WA-VE型
 排気量:1196cc
 ボア×ストローク:73.5mm×94.0mm
 圧縮比:12.8
 最高出力:87ps(64kW)/6000rpm
 最大トルク:113Nm/4500rpm
 燃料供給:PFI
 使用燃料:レギュラー
 燃料タンク容量:36ℓ
 トランスミッション:CVT
 駆動方式:FF
 WLTCモード燃費:20.7km/ℓ
  市街地モード 15.9km/ℓ
  郊外モード 21.9km/ℓ
  高速道路モード22.9km/ℓ
 車両本体価格○205万8000円

著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…