トヨタ/ダイハツ版e-POWERの「e-SMART HYBRID」を搭載したダイハツ・ロッキーの完成度は?

燃費も抜群! ダイハツ・ロッキー「モーター駆動がもたらす爽快な走り」が魅力

ダイハツ・ロッキー Premium G HEV 車両本体価格○234万7000円
ダイハツ・ロッキー(トヨタ・ライズと兄弟車)にシリーズハイブリッドシステム「e-SMART HYBRID」が搭載された。エンジンで発電、モーターで駆動するシリーズハイブリッドだ。いわばトヨタ/ダイハツ版e-POWERである。その走りと燃費はどうか?
TEXT & PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)

シリーズハイブリッドe-SMART HYBRIDとは?

ボディカラーはブラックマイカメタリック×シャイニングホワイトパール レーキ:Fはディスク、Rはドラム式

ダイハツ・ロッキーにハイブリッド車が追加された。ダイハツは新開発したハイブリッドシステムを「e-SMART HYBRID(イー・スマート・ハイブリッド)」と名づけている。エンジンで発電し、作った電力を使用してモーターで走行するシリーズハイブリッド方式を採用したのが特徴だ。日産ノートと同じ方式である。ロッキーのような小さなクルマには、効率やコスト面で他の方式よりシリーズ方式のほうが適しているとの判断だ。

他の方式とは、トヨタのハイブリッド車が搭載するシリーズパラレル方式を指す。走行用と発電用のふたつのモーターを用いるのはシリーズ方式と同じだが、シリーズ方式がモーターだけを使って走るのに対し(つまり、電気自動車と同じ)、シリーズパラレル方式は、走行状況に応じてモーターとエンジンの動力を使い分ける。発進時〜低速はモーターだけで走り、強く加速する際はモーターの力とエンジンの力を合わせ、高速道路を一定速で走るような状況ではエンジンのみの動力で走る。

エンジン形式:直列3気筒DOHC エンジン型式:WA-VEX型 排気量:1196cc ボア×ストローク:73.5mm×94.0mm 圧縮比:12.8 最高出力:82ps(60kW)/5600rpm 最大トルク:105Nm/3200-5200rpm 燃料供給:PFI 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:33ℓ

こうした複雑な制御を行なうため、トヨタのシリーズパラレル方式は動力分割機構と呼ぶ専用の歯車機構が必要になるし、さまざまな走行状況に合わせてエンジンとモーターを最適に制御するための合わせ込み、すなわち適合に多くの労力を割く必要がある。つまり、部品代も開発費もかさんでしまうということだ。小さなクルマにふさわしい車両価格を実現するため、ダイハツはシリーズパラレル方式に比べて安価に成立させることができるシリーズ方式を選んだ。

プラットフォームは、DNGAを使う。

小さなクルマならヤリス・クロスだって小さいじゃないか。あれはシリーズパラレル方式を採用しているぞ、という反論もあるだろう。まずはサイズを比べてみよう。

トヨタ・ヤリス・クロスHYBRID
全長×全幅×全高:4180×1765×1590mm
ホイールベース:2560mm
車重:1160〜1190kg(2WD)

ダイハツ・ロッキーHEV
全長×全幅×全高:3995×1695×1620mm
ホイールベース:2525mm
車重:1060〜1070kg(2WDのみ)

ダイハツ・ロッキー(トヨタ・ブランドでは「ライズ」として販売)のほうが、ヤリス・クロスよりひと回り小さいのがおわかりいただけるだろうか。とくに、全幅が5ナンバーサイズかそうでないかの差は、取り回しの面で影響が大きいだろう。最小回転半径はヤリス・クロスの5.3mに対し、ロッキーは4.9〜5.0mだ。全長が185mm短い(ホイールベースの差は35mmでしかない)ロッキーではあるが、後席の居住性は充分だ。身長184cmの筆者が運転席に座ったシート位置のまま後席に移動しても、ひざ前にこぶしが入るスペースが残る。頭まわりの窮屈さも感じない。ラゲッジスペースも広々としており、ロッキーより大きなサイズのクルマはみな、余裕を抱えながら走っていると思いたくなるほどだ。

室内長×幅×高:1955mm×1420mm×1250mm

ハイブリッドシステムのスペックはどうだろうか。ヤリス・クロスは1.5L直列4気筒自然吸気エンジン(最高出力67kW(91ps)/最大トルク120Nm)と最高出力59kW(80ps)/最大トルク141Nmのモーターを組み合わせる。いっぽう、常にモーターのみで走るロッキーの走行用モーターの最高出力は78kW(106ps)、最大トルクは170Nmだ。エンジンはe-SMART HYBRIDの設定に合わせて新開発した1.2L直列3気筒自然吸気で、最高出力は60kW(82ps)、最大トルクは105Nmである。

車両価格は、ヤリス・クロスHYBRIDが228万4000円〜258万4000円(2WD)なのに対し、ロッキーHEVは211万6000円〜234万7000円だ。

走行用モーターのスペックを比較すると、ロッキーHEVのほうが、ヤリス・クロスHYBRIDよりもパワフルで、トルクがある。ロッキーのほうが車重は100kg軽いので、スペックの差以上に走りの差は大きいことが想像できる。実際、ロッキー・ハイブリッドの走りは爽快だ。高出力モーターを積んだプレミアムな電気自動車ほどの強烈なパフォーマンスは望むべくもないが、モーター走行に特有の瞬発力の高さは充分に体感できる。

走りはどうだ? 燃費はいいか?

発進から40km/h程度の車速まで、周囲の交通の流れに合わせて加速するシーンでの走りは絶品だ。アクセルペダルを踏み込む足に軽く力を込めた瞬間にスッと動き出し、踏み増していく感覚に合わせてリニアに加速していく。この、右足の動きと加速のシンクロ具合が気持ちいい。車両価格を抑えるためにバッテリー容量を必要最小限にしていることもあり、強めの加速を欲してアクセルペダルを踏み込むと、バッテリー出力では足りずにエンジンが始動し、発電用モーターの出力で加速をアシストする。

エンジンがかかるとうるさいと感じるかもしれないが、エンジンがかかっているのだから仕方ないと、筆者は思うたちだ。とくに、ロッキーのようなお買い得価格帯のクルマに乗っているときは。もちろんダイハツとて無策ではなくて、車室内への音の侵入を抑える手当(ガソリン車に対する、遮音・吸音材の追加)は施している。エンジン音が気になるかどうかは人それぞれだと思うので、その点は販売店の試乗車で確認してほしい。

ステアリングホイールの右側にある「S-PDL」のボタンを押すと「スマートペダル」がオンになって、アクセルペダルの踏み加減で加速側だけでなく、減速側もコントロールできるようになる。ブレーキへ踏み換えることなく車速がコントロールできるので運転が楽だし、カーブが連続する道でクルマの姿勢をコントロールしやすくなる。試す価値のある機能だ。

モーター駆動がもたらす爽快な走りがロッキーHEVの最大の魅力である。それに燃費。走り方にもよるだろうが、車載燃費計が30km/Lを超える数字を表示するのも珍しくない、というのが、一般道と高速道路を試乗しての印象。お手頃価格のハイブリッド車で、取り回しがしやすく、使い勝手も良くて燃費もいい。そしてなにより、走りが爽快なのが、シリーズ方式のハイブリッドシステムを採用したロッキーの魅力である。

さらっと乗って32.3km/ℓの燃費が出る。これはスゴイ。
最小回転半径:5.0m トレッド:F1475mm/R1470mm 最低地上高:185mm
ダイハツ・ロッキー Premium G HEV(2WD)
 全長×全幅×全高:3995mm×1695mm×1620mm
 ホイールベース:2525mm
 車重:1070kg
 サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
 エンジン形式:直列3気筒DOHC
 エンジン型式:WA-VEX型
 排気量:1196cc
 ボア×ストローク:73.5mm×94.0mm
 圧縮比:12.8
 最高出力:82ps(60kW)/5600rpm
 最大トルク:105Nm/3200-5200rpm
 燃料供給:PFI
 使用燃料:レギュラー
 燃料タンク容量:33ℓ
 フロントモーター:E3A型交流同期モーター
 最高出力:106ps(78kW)
 最大トルク:170Nm
 バッテリー:リチウムイオン電池
 電池容量:4.3Ah
 
 駆動方式:FF
 WLTCモード燃費:28.0km/ℓ
  市街地モード 29.6km/ℓ
  郊外モード 30.2km/ℓ
  高速道路モード 26.1km/ℓ
 車両本体価格○234万7000円

著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…