Morgan Supersport

最新かつ、最高のモーガン

最新の空気流体力学を採用するボディにより、エアロダイナミクス性能も向上している。見た目はクラシックだが、中身は最新の技術が用いられているのだ。
最新の空気流体力学を採用するボディにより、エアロダイナミクス性能も向上している。見た目はクラシックだが、中身は最新の技術が用いられているのだ。

昨年3月に発表されたモーガンの革新的なニューモデル「スーパースポーツ」が上陸を果たし、ついに公道上で対面を果たすことができた。現在は自動車100年に一度の変革期であり、1913年創業のイギリスの古豪も、以前は電動化を模索していた。だがここ最近は既存のシリーズの正常進化にも熱心だったようで、それが純ガソリンの2シータースポーツカーであるスーパースポーツとして結実したのである。

その名も「ライラック」というカラーでペイントされたスーパースポーツは、デザイナーによるラフスケッチのような軽いトーンの仕立てだが、ひと目でモーガンとわかるボディラインを与えられている。丸型2灯のヘッドランプや独立した前後ウイング(フェンダーのイギリス的な呼び方)はモーガンの公式通り。違っているのは全体的な雰囲気の部分で、これまでのモデルよりもメッキパーツやボディパネルに刻まれたルーバー(空気抜きの穴)等が減らされ、すっきりとしつつ華やかな雰囲気を漂わせている。

2年前にモーガンはイタリアのピニンファリーナにデザインを託したミッドサマーという限定車をリリースしている。それは先代モデルというべき「プラスシックス」のボディをコーチワークしたものだったが、スーパースポーツのデザインはその影響を強く受けているように思う。

スーパースポーツの外装で特筆すべきは、リヤエンドに独立したトランクスペースが備わっていること。モーガンのリヤはドライバーの肩あたりからスパッと斜めに切り落とされ、そこにスペアタイヤを掲げることが定番のスタイルだった。その点スーパースポーツはリヤエンドに降りるラインがなだらかになり、最後はスパッと切り落とされている。

全開にできる唯一のモーガン

BMW製B58型3.0リッター直列6気筒ターボエンジンにZF製8速ATを組み合わせる。装着タイヤは高いグリップ力に定評のあるミシュラン・パイロットスポーツ5となる。
BMW製B58型3.0リッター直列6気筒ターボエンジンにZF製8速ATを組み合わせる。装着タイヤは高いグリップ力に定評のあるミシュラン・パイロットスポーツ5となる。

こうして誕生したラゲッジスペースだがあまり深くないので、外した2枚のサイドウインドウを入れるとほぼほぼスペースが埋まってしまう。それでも鍵をかけておける独立した荷室は、幌屋根のオープンカーにとってありがたい装備に違いない。

今回のスーパースポーツは最新のCFD(空気流体力学)を使用してデザインすることでモーガンの弱点である空力性能も改善されている。全体的な空気抵抗は5%、そして揚力は20%も減少している。そのカギとなっているのは抑揚豊かなボディ上面ではなく、可能な限り下げられたフロントエアダムと高められたリヤエンドにあるように思う。

はっきりと雰囲気が変わった外装に比べると内装はプラスシックスの流れをくんだ仕立てになっている。ダッシュパネルの材質はモーガンの伝統通り様々なマテリアルから選べる。試乗車はアルミっぽい色の1枚板だった。それでも上縁を本革が包み込み、下縁には横一線のウッドパネルが走り、中央付近に大径メーターが集められるなどモーガン以外の何物でもない景色を構成している。もちろんシートやドアインナーといった内装は今日の自動車では珍しいくらい上質な革でトリムされており「幌を下ろしたまま駐車したくなる!」内装になっている。

ラジエーターの熱気をグリル直後から、一方エンジンルーム内の熱気はフロントガラス下あたりのボディサイドから抜くことで、ルーバーが消え去ったボンネット。その中に収まっているのはプラスシックスから受け継がれた最高出力340PS、BMWのB58、3.0リッターターボのストレート6エンジンである。であれば、その脇を固めるのはZF製の8速ATだ。

快適性の高いインテリア

ドライビングポジションやスクリーン越しの景色はこれまでのモデルと大きく違わない。だが走り始めた瞬間から、その動的質感はジェントルな方向にはっきりと進化していた。オープンで走り始めたのだが、無駄な音の類がぐっと減って、硬質なエンジンの音だけが響いてくる。

先代のプラスシックス、というかCXジェネレーションと名付けられたモーガンの新世代プラットフォームを初めて体感した時には、その劇的な進化に驚かされた。ボディのねじり剛性10倍アップ! とテキトーなことを言ってもだれも疑わないくらい。何しろ83年ぶりのプラットフォーム刷新だったのだから当然といえば当然。今回スーパースポーツに採用されているCXVはその名の通り進化版であり、ねじり剛性が10%アップしているという。

その10%はスーパースポーツのあらゆる立ち居振る舞いに効いている。低速時でもステアリングを通して路面の凹凸をつぶさに感じつつ、車体はフラットなまま。ハンドリング面のフィードバックも豊富なので、コーナーでは速度にかかわらず進入で舵角を決め、そこからはスロットル操作だけでエイペックスの狙った点にタッチできるほどだ。

モーガン初となるトランクルームを採用

モーガン初となるトランクを備える。オープン2シーターゆえ、その採用は実用面でも歓迎したいポイントだ。
モーガン初となるトランクを備える。オープン2シーターゆえ、その採用は実用面でも歓迎したいポイントだ。

ボディ剛性が上がったというよりクルマ全体の減衰が改善された感じで、不必要な振動や音がドライバーに届く前に霧散するのもいい。長距離ドライブも楽々こなせるはずだ。

だが走りの部分で最も進化したと感じたのは「全開」の部分だった。歴代のV8、直6搭載のモーガンでは全開加速ができた例がなかった。鉄フレームの時代はいうに及ばず、アルミシャシーを得たプラス8でも、LSD云々を語るはるか前、スロットルペダルがストッパーに当たる前にリヤが盛大に暴れる。そこに車体全体の震えも加わることで「おやめなさい」と諭してくるのだ。「生きる化石」のようなモーガンを前にしてそんな暴力的な部分に言及するのもヤボだと思い、これまでは言及してこなかった経緯がある。

その点最もいいセンまで行っていたのはプラスシックスだが、それでもターボキックが立ち上がる部分では右足が躊躇してしまっていた。ところがついに、スーパースポーツはシャシーのキャパシティが340PSの最高出力をしっかりと抑え込めるところまで向上していたというわけなのである。こうなると同じB58エンジンを搭載し、しかし車体が明らかに重いスープラやZ4よりも名実ともに速いモーガンが誕生したことになるのである。

動的質感の部分は作り手のプライドが大きいのかもしれないが、快適で完成度の高い走りはオーナーのベネフィットに違いない。だが走行性能の引き上げよりもさらに大きなスーパースポーツの価値は、クルマ全体が放つオーラのようなもののような気がしてならない。

歴史的なターニングポイントを目の当たりにしている

スーパースポーツは最新テクノロジーとモーガンの個性が融合した唯一無二のの英国製スーパースポーツに仕上がっていた。
スーパースポーツは最新テクノロジーとモーガンの個性が融合した唯一無二のの英国製スーパースポーツに仕上がっていた。

歴代のモーガンはまさに過去からやってきたようなスタイル(実際にそうだ)が売りであり、存在感はあった。だが伝統的な英国製品と同じく華と呼べるような雰囲気は持ち合わせていなかった。いうなればツイードのジャケットのようなもので、人ごみでもしっかり浮く(?)異質な感じこそが持ち味だったのである。

だが最新の空力的な考え方と、ピニンファリーナのミッドサマーにヒントを得たであろうすっきりとしたデザインが、手作りの恐竜であることに重きを置いていたマルヴァーンのスポーツカーに、銀幕のスターのような華を与えたのである。

今回のフラッグシップ交代は工芸品が芸術品に変わった瞬間。我々は歴史的なターニングポイントを目の当たりにしているのだ。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2026年6月号

SPECIFICATIONS

モーガン・スーパースポーツ

ボディサイズ:全長4110 全幅1805 全高1290mm
ホイールベース:2520mm
乾燥重量:1170kg
エンジン:直列6気筒DOHCターボ
総排気量:2998cc
最高出力:250kW(340PS)/6500rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/1250rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前235/45R18 後255/45R18
最高速度:267km/h
0-100km/h加速:3.9秒
車両本体価格:2457万4000円

 

【問い合わせ】
モーガン・カーズ・ジャパン エスシーアイ
https//www.morgan-cars.jp

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