BMW ALPINA B4 GT

ブッフローエ製BMWアルピナ

BMWアルピナ B4 GT
BMWアルピナ B4 GT

去る2026年5月15日、BMWは伊チェルノッビオで開かれたコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステにおいて、BMWアルピナのデザインスタディ「ビジョンBMWアルピナ」を世界初公開した。アルピナといえば、BMWをベースに独自の高性能車を仕立てる自動車メーカーとして知られるが、同ブランドは昨2025年いっぱいでBMWに譲渡された。今回のスタディはそんな新生アルピナの方向性を示唆するコンセプトカーというわけだ。

ご承知の好事家も多いように、独ブッフローエでアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社がつくっていた従来のBMWアルピナは、昨2025年をもって生産を終えている。というわけで、今回試乗した「B4 GT」はそんな“ブッフローエ製BMWアルピナ”の最後のモデルなのだ。ちなみに、末尾にGTの文字がつく最終モデルには、「4シリーズグランクーペ」がベースのB4 GTのほか、3のセダン/ツーリングをベースとした「B3 GT」もあった。

まさにアルピナマジック

BMWアルピナ B4 GTの室内。カーブドディスプレイなどの基本は正しくBMWの最新デザインとなる。
BMWアルピナ B4 GTの室内。カーブドディスプレイなどの基本は正しくBMWの最新デザインとなる。

最終モデルとはいえ、アルピナのクルマづくりは、このB4 GTでも何ら変わりはない。例えば、内装にしても、表皮やステリングホイール、そしてメーター表示がアルピナ専用になっているだけではない。カーブドディスプレイなどの基本は正しくBMWの最新デザインでありながら、トグル型であるはずのシフトセレクターには古典的なレバータイプが組み合わせられる。また、3.0リッター直6ターボを積む「M440i グランクーペ」のエンジンはB58型だが、B4 GTのそれは「M3」や「M4」などに使われる最上級のS58型がベース。こうしたところは、BMWと密接な協業関係にある自動車メーカーでなければできない仕事だ。

このように特別なベース車を、独自の調律で仕立てるのが、近年のアルピナだった。また、今回のB4 GTはその最終モデルということで、アルピナの伝統的アクセントカラーである同じ淡い金色=オロ・テクニコが、繊細なストライプだけでなく、ホイールやバッジ、内装の刺繍糸にまで使われるところも、その輝かしい歴史を知る好事家を泣かせる演出だ。

B4 GTでも、スプリングやリヤスタビライザーなどのバネが専用となっているそうだが、現代のクルマに敷く、その乗り味の醸成を生んでいる最大のキモは、パワートレインやシャシーの制御といっていい。で、この最終進化形のアルピナに乗ると、あらためて「制御でここまで変わるのか?」と驚かされるのだ。使い古された表現で恐縮だが、その味わいは“アルピナマジック”としかいいようがない。

飛躍的に向上したステアリング周辺剛性

ドームバルクヘッド・レインフォースメントストラットが印象的なBMWアルピナ B4 GTのエンジンルーム。
ドームバルクヘッド・レインフォースメントストラットが印象的なBMWアルピナ B4 GTのエンジンルーム。

アルピナの仕事を象徴するのが、BMWにはない専用の「コンフォートプラス」モードである。その名のとおり、表面的には通常のコンフォートモードよりさらにソフトな乗り心地となる……のは当然として、その路面感覚が、30扁平の20インチという超スポーティサイズのタイヤを履くとは思えないほどまろやかなのが、アルピナマジックその1である。

ダンパーをソフトにすればステアリング反応もゆるく、遅くなるのが宿命のはずだが、B4 GTのステアリングはどのモードでも俊敏かつ正確無比なのだ。これがアルピナマジックその2である。このマジックは、タイヤ選びやダンパー制御に加えて、エンジンフードを開けると否応なく目に飛び込んでくる「ドームバルクヘッド・レインフォースメントストラット」の効果と思われる。このフロントストラットトップとコアサポートを結合する強固なアルミ構造部品は、ステアリング周辺剛性を飛躍的に向上させているのだろう。

エンジンにもアルピナマジックは施されている。もともと世界一級のスポーツエンジンであるS58に、独自のタービンや吸排気系、冷却系を採用しているだけでなく、その制御マッピングはおよそ1年の歳月をかけて練り上げられているというのだ。

最後の伝統的アルピナに乗って

BMWアルピナ B4 GT
BMWアルピナ B4 GT

実際、B4 GTではMエンジンならではの高回転の伸びも快感だが、それ以上に中低速域の右足指に吸いつくリニアリティが印象的だ。ちなみに、欧州で公開されているB4 GTの最高速は305km/hとなっているが、あえて“巡航最高速度”を表記されるのもアルピナ流。それこそアウトバーンを延々と300km/hオーバーで走ることをマジで担保するアルピナマジックは、特に冷却系に絶対に手を抜かないことで知られている。

冒頭のようにすべての生産が終了してしまったブッフローエ製のアルピナだが、年間1700〜2000台というグローバル台数のうち、コンスタントに年間300〜400台を輸入してきた日本は、アルピナにとってドイツ、アメリカに次ぐ世界3位の市場だった。日本の輸入代理店であるニコルオートモビルズは、最終モデルのB4 GTも可能なかぎりの台数を確保したそうで、今も数十台の在庫があるという。しかし、伝統的アルピナの最終進化形はこれが本当に最後。残されたチャンスはごくごくわずかである。

PHOTO/平野陽(Akio HIRANO)

SPECIFICATIONS

BMWアルピナ B4 GT

ボディサイズ:全長4800×全幅1850×全高1440mm
ホイールベース:2855mm
車両重量:1930kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2993cc
エンジン最高出力:389kW(529PS)/6250〜6500rpm
エンジン最大トルク:730Nm(74.4kgm)/2500〜4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/35ZR20 後285/30ZR20
車両本体価格:1710万円

おそらくブッフローエ発の最後のアルピナとなるであろう、B4 GTとB3 GTの国際試乗会に参加してきた。マイナーチェンジ版とはいえ、その走りは大いに進化していた。

純アルピナ最後のモデル「B4 GT」「B3 GT」に試乗して痛感した「FR的キャラとAWD的キャラ」

アルピナの中核モデルB4グランクーペおよびB3リムジン/ツーリングがマイナーチェンジを果たした。車名に新たに「GT」を冠した2モデルはエンジン出力とシャシーの向上が図られている。B4 GTグランクーペを中心にインプレッションをお届けしよう。(GENROQ 2024年9月号より転載・再構成)