物理機構の廃止で、運転席まわりの収納やデザイン性が向上

かつては高級車を中心に採用されていた電動パーキングブレーキだが、近年はホンダ「N-BOX」やトヨタ「ヤリス」など、幅広い車種へと採用が広がっている。
その背景には、単なる操作の負担軽減といった目的だけでなく、クルマの構造や利便性を大きく変えるような、わかりやすいメリットが存在しているからだ。
まず、電動パーキングブレーキを採用する大きな理由のひとつとして、車内空間をより効率的に使える点が挙げられる。
従来のレバー式やペダル式のブレーキを作動させるには、金属製の太く頑丈なワイヤーといった物理的なパーツを、車体の下やフロントシートの間のセンターコンソール内部に配置する必要があった。
しかし、ブレーキの作動を専用の電子制御と電動モーターに置き換えることで、これまで場所を取っていた物理的な部品が不要になり、運転席と助手席の間に広々としたゆとりが生まれる。
その結果、空いたスペースを活かして大容量の収納ボックスやドリンクホルダーを新たに設けたり、スマートフォンのワイヤレス充電器を配置したりと、インテリアにおけるデザインの自由度がぐっと高まった。
これにより、運転席まわりがすっきりするだけでなく、日常的な使い勝手も向上するなど、乗る人にとって嬉しい空間的な恩恵がもたらされている。
これが、電動パーキングブレーキを採用する車種が増えている理由のひとつと言えるだろう。

また、電動パーキングブレーキは、単に車内のスペースを広くして利便性を高めてくれるだけではない。現代のクルマに求められる最新の先進安全装備を、正確に機能させる上でも大切な役割を担っている。
とくに、高速道路などで前方のクルマに合わせて速度を自動で調整してくれる、全車速追従機能付きのアダプティブクルーズコントロール(ACC)を実現するためには、この電動化の技術が欠かせない。
渋滞などで前のクルマが停止した際に自車も合わせて自動で停止し、そのまま安全なブレーキ状態を一定時間維持し続ける機能は、システムが電子的にパーキングブレーキを細かく制御できるからこそ成り立つ技術だ。

くわえて、信号待ちや踏切での停止時に役立つブレーキホールド機能も挙げられる。これはブレーキペダルから足を離しても、再びアクセルを踏むまで停車状態をしっかり維持してくれるもので、電動化がもたらす日常的な運転での大きなメリットと言えそうだ。
こうした安全運転支援システムは、ドライバーの足元の負担や操作の煩わしさを和らげ、長距離ドライブや渋滞時の疲労を軽くしてくれる頼もしい存在となっている。
なお、電動パーキングブレーキは、シフトレバーを「P(パーキング)」に入れると自動で作動し、「D(ドライブ)」に入れてアクセルを踏むと自動で解除される場合が多い。これらの機能により、ドライバーの操作忘れによる予期せぬクルマの転がり事故を防ぐことにもつながっているのだ。
指先ひとつで軽く操作できる電動パーキングブレーキは、単なる日常の利便性アップやインテリアのスマート化にとどまらない。これから先の自動運転の時代を見据えた車両制御の要として、今後もさまざまなクルマで標準化が進んでいく、とても大切な装備と言えるだろう。
