連載

自衛隊新戦力図鑑

対ドローン用の「ケージ装甲」

東千歳駐屯地は、陸上自衛隊唯一の機甲師団(戦車を中心とした打撃部隊)である第7師団の司令部が置かれており、毎年開催される駐屯地記念行事では多数の戦車・装甲車が参加する観閲行進が有名だ。

“屋根”つきの89式装甲戦闘車。第7師団は戦車・装甲車を多数装備した部隊であり、記念行事は、これら戦闘車両の勇壮な観閲行進が実施されることで知られている(写真/はうざー @yahou5)

今年はその車列に複数の“屋根”つき戦車・装甲車が登場したことが話題となった。10式戦車や90式戦車、また89式装甲戦闘車、73式装甲車の一部が車体上面に金網の屋根を取り付けていた。

この屋根は「ケージ装甲(鳥かご装甲)」と呼ばれているもの。戦車の周囲に金網などを取り付ける装甲は、ウクライナ戦争において「対自爆攻撃ドローン用」の装備として広く知られるようになった。

ケージ装甲つき10式戦車。ケージ装甲は「コープケージ(cope cage)」や「バードケージ(bird cage)」とも呼ばれる。この写真は昨年の記念行事で展示された車両(写真/はうざー @yahou5)

歩兵攻撃対策からドローン対策へ。ケージ装甲の目的

さて、ロシア軍戦車でのケージ装甲の装備は、侵攻前年冬の時点で確認できる。この頃に確認できるものは金網というより、細長い薄板(スラット)を並べたもの(「スラット装甲」とも呼ばれる)。これは、ドローンよりも歩兵携行式の対戦車火器への防護が想定されていたと思われる。

旧東側などに広く使用されている歩兵用対戦車ロケット「RPG-7」(写真)。弾頭先端の圧電素子が圧力を受けるとコーン部分を電気信号が弾頭底部に伝わり、炸薬を起爆させる。スラットは弾頭のコーン部分を切り裂き、電気信号を阻害して不発にするか、爆発の方向を歪めて威力を減衰させる(写真/アメリカ陸軍、イラスト/筆者作成)

戦車や装甲車の装甲は、敵と対峙する前面や側面が分厚い一方で、上面は薄く弱い。ロシア軍は1990年代のチェチェン紛争や2010年代のシリア内戦で、ビル高層階から戦車上面を狙った対戦車ロケット攻撃を経験している。さらに、ウクライナ軍が多数の「トップアタック(上面攻撃)」式対戦車ミサイルを配備していたことも、背景にあったと思われる。

ウクライナ軍に鹵獲されたロシア戦車。やや分かりにくいが、砲塔上部にスラット装甲を装備している(写真/armyinform.com.ua)

ウクライナ侵攻後は、ウクライナ・ロシア双方で一人称視点操作型ドローン(FPVドローン)による高精度な自爆攻撃戦法が多用されるようになったことで、ケージ装甲は対ドローンを想定した金網やネットへと変化していった。こうしたドローンは上面だけでなく側面からも攻撃を仕掛けてくるため、上面だけでなく車体の全周を覆う、文字通りの「鳥かご」のようなものへと変化している。

車両全体を金網で覆ったウクライナ軍の自走砲。FPVドローンは遠隔操縦により側面から飛び込んで弱点を攻撃できるため、全体を防御している(写真/armyinform.com.ua)

さて、自衛隊の車両に話を戻そう。陸上自衛隊も近年の自爆攻撃ドローンの脅威を認識し、訓練の想定に取り入れるなど対策を進めているようだ。今回の行進に登場したものも、そうした訓練を反映したものであるという。

ここまで説明したとおり上面だけを覆うタイプは、自爆攻撃ドローン対策としては不充分だが、あくまで今回のケージ装甲は研究・検討のための過渡的なものだろう。ドローンという新たな脅威に自衛隊がどう対応していくのか、引き続き注目したい。

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