連載

自動車エンブレム秘話

円と横棒が表す、創業時代からの理念

日産エンブレムの意匠は、「ダットサン」ブランドにさかのぼる。
日産エンブレムの意匠は、「ダットサン」ブランドにさかのぼる。

日産のエンブレムは、円の中央を横長の帯が貫き、その上に「NISSAN」の文字を配置したシンプルなデザインを特徴とする。この基本構成は、日産の源流となった「ダットサン」ブランド時代のエンブレムに通じるもので、長年にわたり象徴として受け継がれてきた。

日産によれば、このロゴには創業者・鮎川義介の信念「至誠天日を貫く」が反映されているという。丸は太陽を、中央のラインは信念を表現しており、「強い信念を持って誠実に行動すれば、必ず道は開ける」という考えが込められている。現在のミニマルなエンブレムにも、この思想は継承されている。

時代とともに変化した日産ブランド

日産のブランド表現は、時代ごとに大きく変化してきた。1960〜70年代の車両では、「NISSAN」の文字バッジや「DATSUN」エンブレム、車種専用デザインなどが多く用いられ、現在のような統一された丸型エンブレムは限定的だった。

1980年代以降になるとブランドアイデンティティの統一が進み、立体感のあるメッキ調エンブレムが広く採用されるようになる。特に2001年に導入されたロゴは、クロームリングとブラックの背景を組み合わせたデザインとなり、多くの人にとって“現代の日産”を象徴するイメージとなった。

この時代の日産は、「フェアレディZ」や「GT-R」といったスポーツモデルを世界市場で展開し、ブランドとしての存在感を高めていた時期でもある。立体感を強調したエンブレムは、グローバルブランドとしての力強さや先進性を視覚的に表現したものともいえる。

また、日産は時代ごとにブランドイメージの刷新を積極的に行ってきたメーカーとして知られる。エンブレムの変更も単なるデザイン変更ではなく、ブランド戦略や時代との向き合い方を示す役割を担ってきた。

2020年に導入された新ロゴとは?

現在のエンブレムは「アリア」の登場に伴って刷新された。
現在のエンブレムは「アリア」の登場に伴って刷新された。

2020年、日産は約20年ぶりとなる新しいブランドロゴを発表した。これはクロスオーバーEV「日産アリア」の発表とともに公開されたもので、現在の多くの新型車に採用されている。

新ロゴでは、従来の立体的なクローム表現を廃し、細いラインによるフラットなデザインに変更。日産はこの新ロゴについて、「薄く、軽く、しなやか」をキーワードに開発したと説明している。デジタル空間やスマートフォン上でも視認性を高めることを意識したデザインだという。

さらに、新ロゴにはイルミネーション機能も用意され、EVモデルでは発光エンブレムとして使用されている。このロゴには20個のLEDが使われており、前回のロゴ刷新から20年が経過したことを表現しているという。

エンブレムに映る“変わらない精神”

現在の日産ロゴは、以前よりもはるかにミニマルなデザインとなった。しかし、中央に「NISSAN」の文字を配置し、円とラインで構成する基本思想は変わっていない。新しいロゴは創業以来の理念を継承しながら、電動化やコネクティビティの時代へ進化するブランドを表現したものだと日産は説明している。 日産のエンブレムは、「伝統」と「革新」を両立し続けようとするブランドの姿勢を象徴していると言えるだろう。

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