どちらも存在感は十分! 静粛性と快適性はエルグランド オーテックが上




エルグランド オーテックは、標準エルグランドの上級グレード“G e-4ORCE”をベースとして、専用内外装パーツなどを纏わせた特装車となる。対するヴェルファイアは、アルファードと基本構造を同じくしながら、闘牛を模した勇ましいフロントフェイスが特徴のミニバンだ。
端正なスタイルに改められた新型エルグランドは、迫力の点ではヴェルファイアに一歩譲る。しかし、メタル調のディテールアップが追加されたエアロパーツや、ブラック×ブルーステッチのプレミアムナッパレザーシートなどが奢られたオーテックバージョンはヴェルファイアにも劣らない存在感を放つ。
ただし、エルグランド オーテックの全長と全幅はパーツが張り出したぶんボディサイズ大きく、全長5m×1.9mをわずかに超えてしまう。対するヴェルファイアは押し出し感の強い見た目に反して、ボディサイズは兄弟車のアルファードと同じであり全幅1850mm制限の立体駐車場にも収まる大きさだ。
室内空間や車内機能はおおむね同等と言ってよいだろう。エルグランド オーテックは標準車と同じく7人乗りであり、ヴェルファイアもPHEVモデルを除いて7人乗りとなる。
どちらも2列目のキャプテンシートにはシートヒーター&シートベンチレーションが備わり、電動オットマンが標準装備だ。新型エルグランドの3列目シートは床下収納からヴェルファイアと同じく跳ね上げ式に変わり、テールゲートの開閉スイッチがボディサイドにも備わったことでヴェルファイアに劣らない使い勝手を手に入れた。
快適性は登場したばかりの新型エルグランドが明らかに優位だ。エルグランドの2列目は先代に引き続き中折シートとなっており、大きくリクライニングさせても肩と頭を前方へ向けられる。助手席には現行型ヴェルファイアでは廃止されたオットマンが備わるうえ、100Vコンセントは荷室に1口しか備わらないヴェルファイアに対し、エルグランドは後席と荷室に合計3口備わる。
とりわけ静粛性に関しては、遮音ガラスを多用しているうえ、新型アクティブノイズコントロール(ANC)が標準装備となる新型エルグランドの方が優れている。静粛性を大きく高めたパワートレインも相まって、新型エルグランドの静粛性は十分な音振対策がなされたヴェルファイアと比べても隔世の感がある。
ヴェルファイアにもANCが備わるが、搭載されるのは最上級グレードの“エグゼクティブラウンジ”と、ガソリンターボモデルのみだ。
日産 エルグランド AUTECH e-4ORCE
ボディサイズ=全長5045mm×全幅1910mm×全高1975mm
ホイールベース=3165mm
車両重量=2440kg
タイヤサイズ=235/60R18(前後)
トヨタ ヴェルファイア Z Premier(ハイブリッド 2WD)
ボディサイズ=全長4995mm×全幅1850mm×全高1945mm
ホイールベース=3000mm
車両重量=2160kg
タイヤサイズ=225/55R19(前後)
燃費は僅差! より高速走行で真価を発揮するヴェルファイア


オーテックバージョンのパワートレインは、第3世代シリーズハイブリッド4WDであるe-POWER e-4ORCEだ。新開発の直列3気筒ターボエンジンのスペックは標準エルグランドと共通であり、モータースペックもフロント最高出力205ps/最大トルク330Nm、リヤ136ps/195Nmで共通となる。
ヴェルファイアのハイブリッドモデルは、アルファードと同じく190psの2.5L 直列4気筒エンジンと最高出力182ps/270Nmのフロントモーターを効率よく使い分けるシリーズパラレル方式のTHS-IIであり、4WDモデルは54ps/121Nmのモーターで後輪を駆動するE-Fourだ。
エルグランド オーテックは持ち込み登録車であるため正確な燃費計測値は公表されていないが、WLTCモード燃費はベースグレードの“G e-4ORCE”に準ずる16.8km/Lに近い数値となるだろう。対するヴェルファイアは17.8km/L(Z ハイブリッド FF)であり、4WDはFFモデルに対してマイナス5%ほどが目安となる。ハイブリッドモデル同士の燃費性能ではヴェルファイアが勝るものの、その差はごくわずかだ。
ただし最新のe-POWERとはいえ、運動エネルギーから電気エネルギーへの変換ロスが大きいうえ、高速度になるほどモーターの効率が低下する基本特性は変わらない。新型エルグランドはターボにより低回転でも十分な発電量を確保しているが、高速度域ではヴェルファイアのほうが燃費性能、動力性能ともに優位に立つ。
また、ヴェルファイアのZプレミアグレードは、新型エルグランドやアルファードよりも1サイズ大きい19インチホイールを履きこなすためのボディ補強が施されており、とりわけ違いを明瞭に感じられるのは大きな路面入力を受ける高速走行時だ。ヴェルファイアは高速走行を前提としたドライバーズミニバンとして仕立て上げられている。
一方、乗り心地ではエルグランド オーテックが勝る。エルグランドのe-4ORCEは、モーターの素早い応答性を姿勢制御に活用することで車体の不快な揺れを抑えるように制御されるうえ、サスペンションは高コストな電子制御ダンパーだ。
ヴェルファイアにも細かな路面凹凸に対してしっかりと減衰力を発生させる周波数感応型ダンパーが装着され、モーターを利用した高度な“ばね上制振制御”が組み込まれるものの、乗り心地ではハードウェアで優れるエルグランドに敵わない。また、ヴェルファイアに搭載されるTHS-IIは強い加速時にエンジンが始動するため静粛性の面でもやや不利となる。
日産 エルグランド AUTECH e-4ORCE
エンジン形式=直列3気筒ガソリンターボエンジン+モーター
排気量=1498cc
最高出力=140ps/5000rpm
最大トルク=228Nm/3600rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=4WD
トヨタ ヴェルファイア Z Premier(ハイブリッド 2WD)
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=2487cc
最高出力=190ps/6000rpm
最大トルク=236Nm/4300-4500rpm
トランスミッション=電気式CVT
駆動方式=2WD(FF)
価格は問題じゃない! 重要なのはQOLへの寄与度合い


エルグランド“オーテック e-4ORCE”の新車価格は824万7800円、対するヴェルファイア“Zプレミア(ハイブリッドFF)”は709万9400円だ。
ただでさえ110万円以上の価格差があるうえ、エルグランド オーテックのオプション装備となる“プロパイロット2.0”は、プレミアム仕様の高遮音ガラスやANCのゾーンコントロール機能などもセットで73万2600円と高額であり、装着すれば価格差はさらに広がる。
どちらも高額車両ではあるが、標準エルグランドやアルファードよりも高額となるこれらのクルマを購入する層が重視するのはスペックや高級感、静粛性や快適性などQOL(生活満足度)向上への寄与度合いが価格に対して見合うかどうかであり、価格や価格差は二の次となるだろう。
両車はどちらも自ら所有し、自分でハンドルを握りたい人に向くミニバンだ。しかし、内外装のデザインや雰囲気は対照的であり、ライバル車同士であるだけにメーカーの訴求点も正反対となる。
静粛性や乗り心地を重視するならエルグランド オーテックが魅力的な選択肢であり、低速から高速域まで滑らかで優雅な走りを提供してくれるはずだ。
対するヴェルファイアは、華やかで豪華なインテリアと、高速走行時の動力性能と安定性に強みを持つ。燃費性能を度外視すれば、430Nmもの最大トルクを1700〜3600rpmで発揮するガソリンターボモデル(674万9600円)もエルグランド オーテックの有力な対抗馬だ。
総合性能では登場したばかりの新型エルグランドが優位と言えそうだが、両車に明確な優劣はつけがたい。クルマに表れるメーカーの価値観や世界観の違いをよく観察し、自らの嗜好に委ねて選び分けたい。
車両本体価格
日産 エルグランド AUTECH e-4ORCE:824万7800円
トヨタ ヴェルファイア Z Premier(ハイブリッド 2WD):709万9400円
