連載

あのコンセプトカー、どうなった?

「次期エルグランド」だと思われたコンセプトカー

日産ハイパーツアラー(2023年)

日産はジャパンモビリティショー2023にEVコンセプトカー第3弾となる「ニッサン・ハイパーツアラー(Hyper Tourer)」を発表した。

この頃のニッサンは、「ハイパーシリーズ」として

Hyper Urban/Hyper Adventure/Hyper Punk/Hyper Force、そして今回取り上げるHyper Tourerを発表している。

2023年に発表されたハイパーシリーズ。

どのモデルも、”ハイパーな感じ”で面で構成したボディ、幾何学模様、そして未来感・デジタル感たっぷりのデザインが特徴だった。もっとも注目を集めたのは、Hyper Force。「次期GT-Rか?」と話題になった。

ハイパーツアラーが発表されると、多くの人が「次期エルグランドだ」と受け止めた。実際、筆者もそう思っていた。しかし2年後に登場した新型エルグランドを並べてみると、意外な事実が見えてきた。

日産ハイパーツアラー(2023年)

2023年当時のエルグランドは3代目で、すでにデビューから13年経っていて、新型が待望されていたタイミングだったのだ。

日産デザインをつなぐ「タイムレスジャパニーズフューチャリズム」

日産ハイパーツアラー(2023年)
2025年のジャパンモビリティショーで発表された新型エルグランド
2026年7月に発売された新型エルグランド

そこから2年後。ジャパンモビリティショー2025で日産が発表したのが、「新型エルグランド」である。

新型エルグランドのデザインコンセプトは、「The private MAGLEV」。MAGLEVとはリニアモーターカーのことで、非日常の旅に出かける高揚感や期待感を感じさせる特別なデザインだ、と説明していた。ハイパーシリーズとは違って、ノートやアリアにも共通するデザインランゲージ「タイムレスジャパニーズフューチャリズム」を具現化したという。

日産がタイムレスジャパニーズフューチャリズムを唱えたのは、2019年のアリア・コンセプトから。
2025年発表の新型エルグランドもタイムレスジャパニーズフューチャリズムの系譜だとすれば、

2019年:アリア コンセプト(タイムレスジャパニーズフューチャリズム)

2023年ハイパーシリーズ(次のデザイン表現を模索)

2025年新型エルグランド(ジャパニーズフューチャリズムとハイパーシリーズの中間)

2026年新型ジューク(ハイパーシリーズの系譜?)

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と時系列的に並べると、新型エルグランドは、タイムレスジャパニーズフューチャリズムとハイパーシリーズの移行期の作品と見ることができそうだ。実際、2023年のジャパンモビリティショーの時点で、日産のデザイナーはハイパーツアラーについて

「タイムレスジャパニーズフューチャリズムの次の段階を模索している」と述べている。

新型エルグランドもまた、日本の伝統工芸「組子」や日本庭園の「間」と「整」をデザインテーマとして掲げた。つまり「日本らしさ」を現代的に表現するという考え方は、ハイパーツアラーと共通している。

日産ハイパーツアラー(2023年)のホイール。ハイパーツアラーのタイヤサイズは発表されていないが、写真のプロポーションから見ると、ホイール径:22インチ前後、偏平率:35~40くらいに見える。
新型エルグランド(2026年)タイヤサイズは235/60R18。組み木から発想を得たホイールデザインのモチーフはハイパーツアラーから引き継いでいる。ホイールは、樹脂フィニッシャーによりアルミホイールだけでは表現できない日本の伝統工芸的な緻密さと車両全体で統一感のあるデザインだ。
ハイパーツアラーのフロント。Vモーションとはだいぶ異なるデザインだ。
2026年の新型エルグランド 日産らしいフロントフェイスでLEDもだいぶ現実的になっている。フロントグリルは日本の伝統工芸である「組子」をモチーフとしている。
ちなみに、これはジャパニーズフューチャリズム025で発表された新型エルグランドのフロント。ボンネットの前端に「ELGRAND」の文字があるのが発売された新型エルグランドとの相違点。

実車を並べると、意外なほど似ていない

上が日産ハイパーツアラー(2023年)、下が新型エルグランド(2025年)ハイパーツアラーはボンネットが極端に短いワンモーションフォルムだが、新型エルグランドはボンネットをしっかり持つ。Aピラーもやや寝かせているミニバンらしいシルエットだ。
エルグランド
全長×全幅×全高:4995mm×1895mm×1975mm
ホイールベース:3000mm

では、コンセプトカーであるハイパーツアラーはどうだったか?

ニッサンは当時のプレスリリースで「ニッサンハイパーツアラーは日本ならではのおもてなしの精神や上質さ、そして自動運転をはじめとする数々の先進技術を融合したプレミアムEVミニバン」だと説明していた。

エクステリアは「日本の伝統美を表現」「建築的で堂々とした佇まい」「車体を囲むように施した白いウェストラインは、ヘッドライトやシグネチャーランプとしても機能します」「組み木をモチーフに緻密さを表現したホイール」と説明していた。

どちらも「日本の」伝統美、伝統工芸を謳う。「日本」をデザインの源流にしている。

ハイパーツアラー(2023年)車体を一周する白いウェストラインが特徴だ。
新型エルグランド(2026年)ハイパーツアラーの特徴だった白いウェストラインは、ウインドウ上部に流れるラインに継承されている。

だが、ハイパーツアラーが新型エルグランドに結実した……というには、並べて見ると意外と似ていない。造形はかなり変わっている。これは、ハイパーシリーズから少しタイムレスジャパニーズフューチャリズムに戻した(合わせた)からなのかもしれない。

ハイパーツアラーのドアはこう開く。

Hyperシリーズは次期市販車を予告するショーカーではなく、AI、自動運転、EV時代の日産ブランドそのものを再定義するためのデザイン実験だった。ハイパーツアラーが示していたのは、ミニバンではなく「EV時代のラグジュアリーとは何か」という日産からの提案だった。新型エルグランドはその第一歩であり、本当の完成形はまだ未来にあるのかもしれない。

ハイパーツアラーは、高いエネルギー密度の全固体電池を使うBEVを想定していた。駆動方式は進化した電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」。

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