ボルボと言えばステーションワゴン

日本におけるボルボのイメージはどういったものだったのだろうか?全日本ツーリングカー選手権でグループAのボルボ240ターボが日本車勢を蹴散らしたこと?衝突安全で頑丈っぷりをアピールしたこと?それも確かにそうだが、筆者的にはボルボといえばバブル期頃からエンスージアストとは別のクルマにこだわる層、特に横文字職業の人……例えばカメラマンとか……が愛車に選んでいたイメージがあった。

そんな人達が乗るボルボは決まってステーションワゴンの方。積載量は欲しいけどバンやワンボックスの走りでは満足できない人達が乗っていた。これも勝手なイメージではあるが、実際、巷で見るボルボのほとんどがステーションワゴンだったように思う。

日本では初代レガシィツーリングワゴンがヒットするまで、ワゴンはバンの乗用派生モデル扱いで、走行性能はもちろんオシャレさとはかけ離れた実用車だった。そこに、円高で輸入車にハードルが下がり、高い実用性を備えつつオシャレかつしっかりとした走りのボルボのステーションワゴンが人気を呼んだのだろう。

今でこそ、ボルボ世界的な潮流に合わせて基幹車種はSUVとなっているが、やはりボルボと言えばステーションワゴンと思いたい。そんな思いを確かめるべく、V60「ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド」を試乗してみた。

クリーンで落ち着いたエクステリア
外観はいかにもボルボ的な落ち着いたデザイン。いたずらに先進感を演出するような奇抜なところはなく、それでいてどう見てもボルボにしか見えない独自性を感じさせるのは、これまで培ってきたイメージが巧みに踏襲されているからだろう。あるいは、”四角いワゴン”というだけで、無意識にボルボと認識させられているのだろうか。

逆に言えばコンサバティブ、保守的でもあり、デザインに新しさを求める層には古く感じるかもしれない。この辺りはボルボが狙うターゲットユーザーの嗜好がコンサバ寄りということか。

ボディサイズは全長4780mm×1850mm×1430mm、ホイールベース2870mmと、このクラスでは標準的ながら、この全幅でもワイド&ローなフォルムが強調されているデザインだ。世間的にSUVが大勢を占めるため、余計にそう感じるのかもしれない。
また、大型化が進む昨今のクルマにあって、まだ日本でもなんとか取り回せるサイズに収まっている。スクエアなデザインのおかげで運転席からのボディの見切りが良いのがありがたい。
プレミアムなインテリアと確かな実用性
ボルボは電動化時代から、それ以前に比べて上級移行している。40系や、今でこそEX30というエントリーモデルも用意しているが、基幹モデルは60系であり、ラインナップ的にも60系以上が大勢を占めている。ということもあり、V60のインテリアも高級志向だ。

特に試乗車の「ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド」は最上級グレードでオプション搭載モデルということもあり、装備も充実している。ファインナッパレザーのシートやオレフォス社製クリスタルシフトノブ、ドリフト・ウッド・パネルのダッシュボード加飾など、高級感が演出されている。やや古典的に見えるのは、試乗車がブラウン系のシートとウッドパネルだったからだろう。
とはいえ、レイアウトはオーソドックスでインターフェイスも奇をてらったところはない。反面、エアコンも含め車両設定などもディスプレイ上で行なうため、瞬時の操作性という意味では物理スイッチに一歩譲るのは昨今の先進インターフェイスではよくあるパターンだ。

オーディオもharman/kardonプレミアムサウンド・オーディオシステムが標準のところ、オプションのBowers&Wilkinsオーディオシステムを装備。聴き比べこそ出来なかったが、ハイクオリティのサウンドであることは間違いない。静かなEV走行時であればオーディオサウンドがより際立つ。

USBソケットやワイヤレス充電など、ユーティリティは現代のクルマとして申し分なく、ラゲッジルームも通常で519L、後席格納時で888Lとワゴンとして十分な容量を備えている。また、ラゲッジルームフロアに格納されているグロサリーバッグ・ホルダーは面白いギミックだ。

モーターパワーによる力強い加速と落ち着きのあるドライブフィール
搭載するパワートレインは2.0L直列4気筒DOHC16バルブインタークーラーターボエンジンに前後2基のモーターを組み合わせるプラグインハイブリッド。エンジンの最高出力は186kW(253ps)、最大トルク350Nm(35.7kgm)と2.0Lターボとしては標準的なレベル。これにフロント52kW、リヤ107kWのモーター出力が加わる。

このモーターパワーのおかげで、2トンを超える(2050kg)車重に対しエンジン出力だけでは少々物足りないが、モーター稼働時の加速力は重量を感じさせないほど鋭い。とはいえ、あくまでプラグインハイブリッドであり、電池容量は18.8kW。常にその恩恵を求め続けるわけにはいかない。

ドライブモードで「ハイブリッド」「Power」「Pure(=EV走行)」「AWD」を選択しつつ、バッテリーの使用設定も「自動」「保留」「充電」を組み合わせて走る必要がある。「AWD」はリヤモーターによる電気式。このAWDが雪道でどれほどの実力を発揮するのかも気になるところだが、残念ながら試せていない。

車重のせいかサスペンションセッティングのせいか、ハンドリングはとても落ちついてる印象。ステアリングギア比がやや”ダル”めなようで、もう少しクイックな方が好みではあった。ステアリングの重さを調整でき、「ソフト」よりも「硬め」の方が個人的には乗りやすかった。
また、ワンペダルドライブも選択できる。ただ、個人的にはワンペダルの減速感は未だに慣れないので、パドルによる回生ブレーキが使えるとさらに乗りやすいのだが……

全体的には素直で乗りやすいのだが、どうしても2トンを超える重量をクルマの動きに感じてしまう。どっしりとして落ちつていいる反面、クルマの制御をスポーティに振ってみても重量という素性は完全には消すことはできなかった。スポーティではなく、あくまでラグジュアリーなワゴンと思った方が良さそうだ。
同クラスのSUV・XC60と比べてみると……
今やSUVが世界的な潮流であり、ボルボでもベストセラーは同クラスのSUVであるXC60である。そこで、試乗車のV60と同じパワートレインを搭載するXC60「ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド」にも乗ってみた。

サイズ的にはV60より70mm短く、65mm幅広いスクエアなディメンジョンで、車高はSUVだけあって230mmも高く、最低地上高も60mm高い。重量に至っては130kgも重くなる。

この差はやはり大きく、加速時の俊敏さはやはり重量の差でV60に軍配が上がる。それはメーカー公表の0-100km/h加速の差(V60=5.4秒/XC60=5.7秒)を実感させる。重量(と空力)は燃費や航続距離にも影響を及ぼしているようで、実燃費は計測できていないが、カタログ値ではV60が15.6km/Lであるのに対し、XC60は14.3km。EV航続距離もV60が91kmであるのに対し、XC60は81kmである。いずれも十分な数字ではあるが、ボディ形状と重量的にV60が有利な点と言える。

また、XC60の車高や地上高による重心の高さはコーナリング時にはV60に対してネガティブな印象だ。これはクルマの素性的には致し方のないところで、逆に視点の高さによる良好な前方視界はSUVであるXC60の方が優れている。

最近のSUVの走りは以前に比べてかなり良くなった。とはいえ、そこは物理法則には逆らえず、どうしても重心の高さに起因するクルマの動きが気になってしまう。そういうものだと納得すればいいのだが、やはりセダンやワゴンといったボディの方がクルマの動きとして好ましい。

しかも、XC60「ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド」は価格が1029万円の大台超え。ちょっとハードルの高い価格だ。ではV60なら同じ「ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド」でも幾らなのだろうか?
900万円オーバーは高いのか?実はこのクラスはV60の独占市場だった?
試乗車であるV60「ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド」の価格は919万円。試乗車はさらにオプションとして「Bowers&Wilkinsハイフィデリティ・オーディオシステム」(39万円)と「ボルボ・ドライブレコーダー・スタンダード」(17万3250円※工賃込み)、キーフォブシェル(2万7280円)が加わり978万530円。今にも大台に届きそうだ。

とはいえ、プレミアムステーションワゴンのクラスで試乗車に近いAWDプラグインハイブリッドモデルとなると、意外にもBMWのM5ツーリング(2073万円)しか選択肢がない。VWパサートのプラグインハイブリッドはFFのみ、メルセデス・ベンツやアウディのプラグインハイブリッドはステーションワゴンが無い。

ジャンル的にSUVにはなるが、トヨタ・クラウンエステートのプラグインハイブリッドモデルが近いところで、価格も810万円と国産ゆえにV60よりは安い。

と、実はAWDプラグインハイブリッドステーションワゴンというジャンルは、ほとんどスーパーカーのBMW M5は別格として、輸入車ではドイツ御三家+VW(他輸入車メーカーは言わずもがな)もラインナップしておらず、V60の独壇場ということになる。

そう考えると、輸入車でAWDプラグインハイブリッドステーションワゴンとしては概ね妥当なセンとも考えられるかもしれない。何せ、このクラスでこのタイプのクルマを買おうと思ったらV60しか無いのだから。

欧州メーカーは電動化に力を入れたためハイブリッドやプラグインハイブリッドでは出遅れた。しかし、ボルボは電動化にいち早く舵を切ったものの、その後の展開は比較的慎重でハイブリッドやプラグインハイブリッドによる漸進的な展開だったことが功を奏したようにも思われる。
| メーカー | ボルボ | |
| 車名 | V60 | XC60 |
| グレード | ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド | ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド |
| 全長 | 4780mm | 4710mm |
| 全幅 | 1850mm | 1915mm |
| 全高 | 1430mm | 1660mm |
| ホイールベース | 2870mm | 2865mm |
| 車重 | 2050kg | 2180kg |
| 最低地上高 | 145mm | 205mm |
| 最小回転半径 | 5.7m | |
| 乗車定員 | 5名 | |
| トランク容量 | 519L〜888L | 468L〜950L |
| エンジン | B420型 水冷直列4気筒DOHCインタークーラーターボ | |
| 排気量 | 1968cc | |
| 最高出力 | 253ps/5500rpm | |
| 最大トルク | 350Nm/2500-5000rpm | |
| 燃料/タンク容量 | ハイオク/60L | ハイオク/71L |
| WLTC燃費 | 15.6km/L | 14.3km/L |
| サスペンション | F:ダブルウィッシュボーン R:マルチリンク | |
| ブレーキ | F・R:ディスク | |
| タイヤサイズ | 235/40R19 | 255/40R21 |
| 駆動方式 | 4WD | |
| トランスミッション | 8速AT | |
| モーター | F:T52 R:TZ220 | |
| 最高出力 | F:52kW R: 107kW | |
| 最大トルク | F:165Nm R:309Nm | |
| 電池容量 | 51Ah/18.8kWh | |
| 価格 | 919万円 | 1029万円 |
フォトギャラリー:
ボルボV60「ウルトラT6 AWDプラグインハイブリッド」
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