陸上自衛隊には91式戦車橋や81式自走架柱橋など橋を架ける装備が沢山ある。今回は「70式自走浮橋」だ。
「浮橋」は「ふきょう」と読む。名称に振られた数字(制式年)にあるとおり、デビューは1970年、なんと50年前だ。70式自走浮橋はすでに退役しているが、どんな装備だったか紹介する。
70年代の最重量装備である74式戦車(当時開発中)をはじめ、陸自の保有する全車両を通過させることを目的として開発・導入された経緯があるから、本車は38トンの車両等を自分の上に通すことができる能力を持っている。しかし時を経て、後継の92式浮橋にバトンを渡した。
70式自走浮橋は水陸両用車がベースになっている。陸上での最高速度は50km/h程度で、水上の移動速度は12km/hほど。この水陸両用車を「橋節車(きょうせつしゃ)」と呼ぶ。そのボディ素材はアルミニウム・マグネシウム・亜鉛の合金製だ。橋節車には導板(橋床)3枚が積まれ、車体上部にはフロート(浮力体)を背負っている。このフロートを左右へ展開して水中へ走り込み、浮くことで橋になるわけだ。
実際の使い方は、70式自走浮橋を複数投入し、車体に備え付けられたクレーンを使って互いの導板を渡し架けて連結し、並列に配置することで浮橋とする仕組みだ。本車は1セット10両で編成され、最長91mの橋を架けることができる。大型渡河装備としてはかなり柔軟な運用ができるそうで、橋節車2~3両を連結した状態で「艀(はしけ)」として使用することも可能だという。
自走できる艀というコンセプトは、連結することで能力が倍加する点が画期的だ。変形・合体することでより強くなるロボットは昭和時代の定番だったが、70式自走浮橋はこれを体現しているメカであり、つくづく、70年代というのは熱い時代だったのだと思う。現在ではこうしたトンがった架橋装備はない。橋がトンがっても仕方がないのだが。